投稿元:
レビューを見る
2018年出版。平壌に生まれ、作家をしていたという著者が、かつての自分の北朝鮮での経験などを交えて書いた「小説」。小説とはいえ、金正日や張成沢など実在の人物や、崔竜海がモデルだと思われるチェ・ビョンソという人物が登場するなど、実話を元にした小説であることが示唆されている。
とはいえ、だからこそ、事実なのか創作なのかが曖昧であり、あとがきに書かれているように、著者による「告発」ととらえていいのか、あくまで小説なのかが分からないのが私としてはイマイチであった。
自分の体すら自分のものではなく権力に翻弄される人々の閉塞感、絶望感のようなものは生々しく迫ってくる。女性の人生がモノのように幹部や最高指導者によって弄ばれる部分、最高指導者の命令の前では人の命が極めて軽く粗末に扱われる部分については、ほぼ事実であろうし、脱北者であるからこそ書ける生々しさだという感じを受けた。
ただし、文の運び方に拙い部分が多くみられ、読みづらさを感じるのが残念な部分である。