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日本企業の企業システムとしての原理。従業員主権、分散シェアリング、組織的市場。3
時代のおおきな転換点での「やむを得ず動く」という企業行動は「つまみ食い」と「および腰」という2つの危険行動を生みやすい(29
成功の本質を抽出するのは難しく、人は身振り手振りのマネになりやすい。だから成功は失敗の母になりやすい。(35
制度=原理×環境
企業理解の3つの切り口 1.企業の概念(企業は誰のものか?)2.シェアリングの概念(誰が何を分担しどんな分配を受けるか)3.市場の概念(企業同士はどうつながり合うか?)44
典型的な資本主義では、情報、付加価値(金)、意思決定の3つは基本的にすべて単一パターンで経営トップに。アメリカ企業など。ところが日本企業ではこの3つのシェアリングは単一ではなく分散している。意思決定は現場だけど金は年配の人が持つみたいな。(55)
分散シェアリングとは3つの変数(情報、付加価値、意思決定)のシェリングのパターンを変え、それぞれに花を持たせる(非相似形)ことであり、一つの変数のシェアリングがどこかに集中している度合いが少ない(非集中)という2つの点で「分散」シェアリング。55
企業とは物的な変換活動の集合体としてあり、次に情報処理と学習の活動の集合体としてあり、3つめに企業メンバの心理的反応の集合体として見る事ができる(60
資本主義企業では、3つの企業観の間に階層性を持たせてあり、一番底に物質観。人はモノとしてとらえられている。
人本主義企業システムでは、3つの企業観が等しい。
モノをどれだけつくったか、といった評価ばかりではなく、どれだけ学習したか?情報を伝えたか?どのくらい企業へのコミットメントがあるか?やる気はあるか?周囲との心理的調和は?なども評価される(69
利害の一致が生まれることが組織的市場のメリットの第一 108
痛みのシェアリング。人本主義の本質が主権者のシェアリングであったとすると、構造変化から生まれる痛みも分散シェアリングするのが人本主義的な企業であろう(173
人が育つプロセスは、結局その人が日頃からどれくらいでかいことを考えているか?できまる。小さい事ばかり考えている人は大きな問題がでてきても癖として大きさが測れなくなる。人本主義の下では人をまとまりよくこぢんまりしていく傾向があるので、ことさら大きく考える事を強調する経営が必要になる(206)
経営のスタンスとして矛盾や調和と意図的に創りださなければいけない(212)
経営という営みの本質は、一見あいいれないような二つのものの共存をどうはかっていくか?にある。
中高年対策をもっとも効果的に解決できるのは若手の抜擢をする会社である(214)
こっけいなほど楽天的(坂の上の雲)
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残念ながらもはや日本企業の経営が海外から注目を浴びる時代ではないが、この本では環境変化に振り回されて日本企業が短絡的な選択をすることに警鐘をならすべく、あえて戦後の日本企業の経営原理について明らかにしている。人本主義の良い点と課題が概念的にうまく整理されている点は評価に値するものの、読後感としてはいまいちすっきりしない。
欧米の資本主義に対し、戦後の日本企業の「人本主義」には大きく3つの点において異なる。第一に企業の概念(企業は誰のものか)について、資本主義はカネの提供者である株主に主権があるのに対し人本主義はヒトという資源の提供者である従業員に主権がある。
第二にシェアリング(誰が何を分担し、どんな分配をうけるか)について、資本主義は一元的であるのに対し、人本主義は分散的である。付加価値(金)、意思決定、情報(技術)という3つの変数のシェアリングのパターンが資本主義では類似しており、かつ少数の人に集中する。(大きな給料格差、トップダウン・中央集権の経営、現場管理者と労働者間の格差等)一方で人本主義は3つのパターンが微妙に異なり、意思決定権がある人が高給であるとは限らなかったり、現場での情報共有が労働者にも平等になされていたり、等、平等に行われている。
第三に市場(企業通しのつながり)が資本主義では自由市場であるのに対し、人本主義では組織的市場である。つまり前者では取引ごとに多数の業者間に競争させ、「カネの切れ目が縁の切れ目」であるのに対し、後者はある程度固定的な業者との間で、より長期的な関係を構築し「共同利益の最大化」を目指す。
人本主義の良さは、より大きなリスクを持つ従業員が主権を持っているために、長期的な視野のもとに意思決定ができること、能力蓄積ができること、そのような情報を日常を通して従業員が共有できるために、情報効率が高いことなどである。市場競争や株主はあくまでその仕組みに対する牽制としての意味を持つ。
その一方で産業構造等変化、イノベーションの実現という点で人本主義には課題があり、工夫が必要である。産業構造変化に対しては資本主義のように人員整理をする代わりに中間労働市場を活用して雇用を保証しながら人を動かすなどの工夫が必要である。
人本主義は閉鎖的になりがちであり、考えが小さくなりがちである。大きく考えるには、人本主義の原理を徹底するための施策(分社経営、海外子会社、新規事業)などが必要。また市場原理を組織内に取り込み社内ベンチャー等をすることも意義がある。
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社会主義との比較で、資本主義は成功したといえるが、原理的に、収束点をもてないこの主義は、当然オーバーシュートを起こし、その結果としてリーマンショックなどの経済的破綻を定期的に引き起こしてきた。その対立軸として、著者が提唱するのが「人本主義」。 このネーミングから、ひ弱なヒューマニズムを連想させるが、実際にはそうではない。会社の主権者を従業員とすることで、長期的経済的成功の説明を試みる。その目指すところ、平成の松下幸之助といえる志の高さで、なかなか骨太の提言ではあるが、果たしで誰が実践できるのだろうか(孫さんならできるかも?)。
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カネの論理とヒトの論理。
どちらも企業運営には欠かせないものであるが、アメリカの企業はカネの論理を優先させ、日本の企業はヒトの論理を優先させた。
バブルの前くらいは、日本企業のパフォーマンスがアメリカ企業のそれを圧倒していたが、バブル崩壊以降は、全く逆の状態となってしまっている。
日本企業も、カネの論理を優先させるアメリカ型の経営に近づけていくべきではないか、というのが、最近の風潮のような気がする。
本書は随分以前に書かれたものなのではあるが、伊丹先生は、それでも、というか、今でも、ヒトの論理の良さを活かす人本主義経営を活用すべきと仰るのではないかと思う。