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紙の本
冷血変態漢のメタモルフォーゼ
2007/01/21 19:42
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:hamushi - この投稿者のレビュー一覧を見る
茶道の家元の跡継ぎ問題に絡んだ愛憎と陰謀の物語ということで、風流を練り込んで悪趣味を極め、下世話と尾籠を踏み固めて高尚なお屋敷の土台にした、というような印象で始まるのですが、読み進めるうちに、主人公たちの純粋な情の動きのほうが印象を増していき、クライマックスにはシンプルに涙を誘われました。
家庭に居場所を見失って家出していた宗家の次男坊の睦月は、あまりにも分かりやすい愛情の飢えを抱えていて、陰謀を胸に秘めて宗家に入り込んでいる秘書、伊藤征親も拍子抜けするほど、あっけなく手玉に取られてしまいます。
そしてまた、手玉に取った征親自身、これまた分かりやすいトラウマに支配されて宗家を恨んでおり、癌で余命いくばくもない現宗匠の後継として睦月を傀儡宗匠に据え、実質的に自分が宗家を乗っ取るという、恐ろしく単純な野望を、百パーセント確実に実現しようとしています。
この、ヒネリの足りない人々の内情が、お話の前半ですっかり説明されてしまうので、かえって「この先どうなるのだろう」と、読んでいて頼りない気分になるのが、面白いというか、奇妙でした。
あっけらかんと手の内を明かされてしまうと、逆に煙に巻かれてしまうというのは、読んでいる側の読解スキルに「事情詮索」「猜疑心」といったものがデフォルトで設定されていて、そういうものをフル稼働させてお話を読むのが当然のようになってしまっているからかもしれません。実際、謎解きが吸引力になっているお話は多いですが、それだけがお話の魅力ではないのだよなあという、考えてみれば当然のことを、改めて思い出させてもらったように思います。
見所はやはり、孤独で冷血な征親の変態--メタモルフォーゼの過程、でしょうか。
最初のころは、どこまでも無情に睦月をあしらうだけでなく、とんでもないところに指を突っ込みながら「利休百首」を詠み上たり、睦月の痴態をいちいち茶道の在りように見立てて皮肉った上、恐喝用のビデオ撮りまでするという最低な悪趣味ぶりで、この四十男だけは人としても茶人としてもどうにもならんと思いましたが、睦月の素直な心情に触れるうちに、次第に本来持っていた真っ当な情が蘇って憎しみがとけていき、やがて激情といっていいレベルの愛着に育っていく様子には、ある種の成長物語を見るかのような好ましさを覚えました。
電子書籍
王道話
2018/06/06 00:18
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投稿者:天 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ありがち話でも やはり
好きな設定です
その先が少し書かれてもよかったかなぁ
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