投稿元:
レビューを見る
ある朝血まみれの状態で目覚め、さらに母親の死体を発見したユジン。しかし彼には前夜の記憶がなく、とりあえず事態を隠蔽し何が起こったのかを思い起こすことにする。読むほどに不安感が募っていくサイコサスペンス。
状況から考えるとユジンの犯行であるということは間違いがないのだけれど。しかしなぜそんなことになってしまったのか。病を抱え服薬治療を受け、母親には束縛され、そのせいで自分の好きな道に進めなかったユジンの抑圧された感情。過去に起こったとある事件。最初はユジンの境遇が気の毒と思えていたのだけれど、読み進むごとにユジンに対する共感が薄れていきます。というより、彼に共感してしまうのが怖くなりました。
しかし思えば、ユジンが気の毒だというのは間違いがないです。彼の意志にそぐわなかったとはいえ、彼を愛し守ろうとした人たちが確かにいたのに、それに気づかず応えられもしなかったということが悲劇的。そしてそのことは、きっと彼には理解できないのだろうということも。