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「小さな部屋」や「蛙」を読んで改めて思ったけど正気と狂気の境目を衒いなく描くこができる数少ない作家だと思った。
「小さな部屋」の内に内に篭っていく段階とか人と話すのが面倒くさくなってしまう感覚とかすごく共感できた。
「蛙」はやっぱ「狂人日記」思い出してちょっと泣きそうになった。
色川武大は戦前戦中戦後をものすごく意識して描く人だなと感じました。
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これは・・・ 何というかとても面白かった・・・
もともとは映画になるということで手に取ってみたこの本。色川武大は自分の記録によると昔「狂人日記」を読んでいるがなぜかあまり印象に残っていない。「狂人日記」もまた読んでみたいし、他のものも読んでみたくなった。
「ひとり博打」のように何かに執着する様とその心理状態についての記述がとても興味深いし、共感するところもちらほらあった。映画の原作である「明日泣く」も上手く言えないが男と女のやりとりがとても印象に残るものだ。
全身を投げ出して書いている、という感じがする。でもやぶれかぶれ、というわけでもなくて・・・ 「私小説」という言葉も浮かんだけれど、何かそれも違うような。
何かいろんなものをその眼で見てきた作家だ、という感じがした。生きている時にその眼に入ったものをもう少し探ってみたい。
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「明日泣く」「甘い記憶」が面白かった。
前半はかなり苦戦するが後半は読みやすかった。
他の作品も読んでみたい。
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色川武大の小説に欠かせないエピソードが方々にちりばめられた短編集。まだ小粒で、しっかりとは掴みきれてない感じ、ちょっと控えめに差し出されて「これはどうでしょう?」という感じもある。
部屋に入ってくる生きものに愛着をおぼえ同居する「小さな部屋」、父が家に防空壕を掘った「穴」、クラスの机のうえで自分の両手を力士に見立てて勝負をさせる「ひとり博打」、放浪時代を描いた「泥」、夢幻的世界の「鳥」、精神病となり止まぬ幻聴の「蛙」……等々。
僕はやはり、なにものかになろうと思えどなれず、じくじくとその時を待つように機会を先延ばしにして、そうしていくうちに日常が破裂、今まで先延ばしにしたツケを払わされるっていう、この屈託が描かれている「穴」が好きだ。色川の描く父親の防空壕話はどれもツボだ。穴フェチだ。
「ひとり博打」で描かれるひとり相撲、ひとり野球といったひとり遊びの数々は、いつもいつも圧倒される。本当でもウソでも小説であるかぎりどっちでも構わないはずだが、僕はきっと「本当」として読んでいて……そして僕は喉元から込みあげてくるような「意味がわからない」という言葉に直面する。
「甘い記憶」は、なんだろう。これもよくわからない。わかるようで、やっぱりわからない。めずらしく甘い話のようだけれど、ううーん、やっぱり残酷な話なのか。
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2016.9.10 「小さな部屋」を読む。
「熱中することの不気味さと美しさ」
〜あらすじ〜
鉄格子のついた部屋に越してきた主人公、東郷文七郎。折り目正しい青年であった彼が、その部屋に夜毎訪れる猫と生活を共にし始めることをきっかけに少しずつ人生の歯車を狂わせてゆく。
参加者の読後の感想で主だったものは「気持ちわるい!」という声。猫や鼠、昆虫などで溢れかえる部屋を描写したその生々しさが際立った印象だったようだ。
「部屋」に取り憑かれたように性格を変貌させてゆく主人公の姿を時系列で追うにつれ、果たして憑かれる前後ではどちらが彼の本性であったのか、を議題に会は盛り上がりをみせた。
この変貌は誰にでも起こりうることであったのか、はたまた主人公と部屋との奇跡的な遭遇なくしては発生しない物語だったのか。
会社という現実に不和を感じ、人間の抱える複雑さから自身を脱臼させて逃げ込んだ「部屋」。それはシェルターであったのか、檻であったのか。
そんな議論が進むうちに、本作のテーマは立派に現代社会にも深く通じていることを参加者全員で確認することができた。
読後に決して晴れ晴れとした気分になるわけではないが、それでも生命力を強く感じさせる展開と、ラストシーンの文章の美しさは圧巻である。
参加者の一言
「(大事に)固定してあると信じてるものほど、実は変化していってるんだよね」