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近年何かと話題の400歳のサメを中心に、生物の温度について詳しく述べられています。
知識として得られた情報は大変興味深いものばかりでした。そして、内容は専門的でありながら、素人の私でも十分理解ができるほどわかりやすかったです。
また、この本は研究内容を淡々と記すだけでなく、筆者が研究を行う際に生じたアクシデントや笑い話もたくさん述べられています。
そのため、学術書が苦手な人も気楽に読めるかと思います。
反対に「しっかり生物学を学びたいんだ」という人には合間の笑い話は不要に感じるかと思います。
今まで出会えなかったこの文書構成を私は気に入りました。
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生物学の最新の知見と面白いストーリーがうまく組み合わさって、非常に読みやすい。
もう少しじっくりと熱力学の法則に従った生物の仕組みについて理解を深めるために読み直したい。
とにかく、生物学をやっているにもかかわらず、知らないことが多かった。
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科学的な話をわかりやすく、時折コミカルな話を混ぜて読ませてくれた。
体重、代謝、寿命などを一元化して見通すことができて、少し賢くなった気分。対交流熱交換器。
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生物学はある種の生物の生態を深く研究する方向に行きがち。そんな中で生物全体を統一する法則はないのか?という目線でいろいろな生物を見るのが著者の目線。
1883年、動物の表面積当たりの代謝量は一定、というルプナーの法則が発表された。しかしいろいろな生物の数値をとってみると整合しない。(体重と表面積は3分の2乗の割合で増加するはずだが実際の計測値はそうならない)
1932年、クライバーは各種の動物の体重と代謝量を計算し並べてみると4分の3乗に比例することを発見した。(クライバーの法則)
1997年、ジェームズ・ブラウンは生物の形に着目した。血管の構造はどの生物でもほとんど同じで、大きな動物ほど心臓から出る最初の血管が太いため血管の分岐が多くなるだけである。血管を通る血液の量により代謝が決まってくることから体重と血液の量の関係を計算していくと4分の3乗という値にたどりついた。
次に温度計数という概念がある。温度の上下で代謝量が変わる、というものである。多くの動物が冬に動きが鈍くなり夏に活発に動くことでもわかる。
2001年、ジェームズ・ブラウンは化学の公式であるボルツマン・アレニウス公式を使い、いろいろな生物の体温を補正して計算する道を開いた。20度、という同一の体温で各種の動物を見た場合、「すべての」動物の代謝量は体重に比例することがわかった。
代謝により体温が維持され、体が大きくなることを考えれば、同じ大きさであれば体温の高い方が早く成長し、体温が同じであれば体の小さい方が早く成長する。
本のタイトルにある、北極の海にすむニシオンデンザメの体温は海水温と同じ0度。最終的には5-6メートルまで成長する。大きくて体温が低いことから成長はゆっくりで性的に成熟するまで150年かかる。
これをもとに各種の生物が成熟するまでの時間と代謝量をもとにそれぞれの生物の「時間」を計算することができる。この「世代時間」は体重の4分の1乗に比例する。ニシオンデンザメの時間は人間の47倍ゆっくりと進む。
人間でも子供の頃は時間がゆっくり進むイメージがあるがこれも子供と大人の体の大きさの違いから時間間隔の差がでてくることを導ける。
これらの論点を背景に著者が行うのはいろいろな生物の代謝量を測ることである。それはニシオンデンザメやホオジロザメやペンギンやバイカルアザラシに発信機を取り付けどのような活動を行っているのかを計測すること。
計測器をとりつけ自動切り離しを行い、信号を衛星経由キャッチすることでデータの入った計測器を回収する、という気の遠くなる作業。
それぞれの生物に計測器をつける作業だけでもスリリング。最後のバイカルアザラシの謎、「陸地に上がって眠る習性がないバイカルアザラシはいつどうやって眠っているのか」について、夜、水中で眠っているというをことつきとめる。水中で動きを止め、自然に沈んでいくときに睡眠をとりまた浮上して息継ぎをする、という行動を繰り返すことが判明した。
本書に収められている情報の豊富さ、体験の稀有さ、はすばらしい。
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すごい!恒温動物と変温動物に加えて中温動物のカテゴリーがあるなんて驚いた。ジェームス・ブラウン博士の(体重^3/4)✖️e^(-E/kT)式が説明するという。
バイオロゲイニング、現代のテクノロジーあっての研究方法ですね。著者のときめきが伝わってきます。
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まさに生物学の金字塔を説く、著者の2冊目の一般向け科学読み物にして、完成度の高さは前作を遙かに上回る。第4章の結末にはややずっこけるものの、これを読んで1冊目に戻るとモヤモヤしてしまうほど。そしてすべては1になる(その意味は、読んでからのお楽しみ)。
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筆者の名前に聞き覚えがあると思っていたら、「ペンギンが教えてくれた物理のはなし」の人だった。期待。
ニシオンデンザメは400年生きるとか、バイカルアザラシは沈みながら寝るとか、そういう動物トリビアも興味深いが、本書の本当の面白さは、著者がその解にたどり着くまでの問題意識や、仮説や、実験計画や試行錯誤などの過程にある。つまりはそれが「科学する楽しさ」だ。著者と一緒に生き物の不思議に挑戦するのは楽しい。前作で出てきたバイオロギングも大活躍。鈴木紀之「すごい進化」と同じ種類の面白さだ。
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学者が書いたにしてはとても文章がうまくて読みやすい。
そして、書かれている内容も一般的知識としても興味深いし、次また北極にチャレンジするにあたっての作戦を考える上でもとっても興味深いものだった。
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本の雑誌今年のベスト10の中から。新書が入っているのが意外、っていうのもあって早速入手。同時に読んだミジンコ本とも共通する部分が多く、同じく生物学だから当たり前なのかもしれないけど、でもそのあたりは興味深かった。体の大きさと体温から、それぞれの種における生物時間が推測できる、ってのは大いに納得。内容はもう忘れたけど、おそらく”ゾウの時間~”にも同様のことが書かれていたのでせう。ただ難点は、件のミジンコ本もそうだったけど、本作にしてもやはり、ピークは読み始め、ってこと。最初のニシオンデンザメの章が一番面白く、以降は繰り返しが目立ってくることもあり、どうしてもトーンダウンしてしまう。そこでふと思ったんだけど、新書って、はじめにとおわりにに加え、最初の章を読めば、たいていは事足りるんじゃないか?これ、意外に重要な発見かも。
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学術的な話を、素人向けにわかりやすく解説したお話。
生物学的方面に興味がない人には、全く面白くないと思われ。
私もそんなに興味がないが、勧められて読んだ。
興味がないので、当然真剣に読む気がせず
途中でやめようと思ったが、
フィールドワーク調査の失敗談や、
アクシデントの話が面白く、結局最後まで読んだ。
確実に読む人を選ぶ本。
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2016年、北極の深海に生息する謎の巨大ザメ、ニシオンデンザメが400年も生きることがわかり、科学者たちの度肝を抜いた。このサメはなぜ、水温ゼロ度という過酷な環境で生き延びてこられたのか?そして地球上の生物はなぜこんなにも多様に進化したのか?気鋭の生物学者が世界各地でのフィールドワークを通じて、「体温」を手がかりに、生物の壮大なメカニズムに迫る!(裏袖)
凄い本。
専門の学者にとっては常識的なことかもしれないが、生物間の統一された指標(体温や代謝)や「時間の差異」など、驚くべき内容がてんこ盛り。
また、著者が実際に現地に赴いた際の話も大変魅力的で、『本の雑誌』で紹介されていた「高野秀行的」なる言葉も納得できた。
専門的かつ具体的な数字や公式は結構な割合で読み飛ばしてしまったけれど、補って余りある面白い本だ。
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「本書の目的をひとことで言うならば、体温という物理量がどのように生物の姿かたちや生き方を規定しているのか、昆虫にも哺乳類にも当てはまる大スケールの統一理論を構築することである。」
体温と代謝が生物の時間までも規定する、という壮大な話で、実際の観測やデータ採取の部分は「事実は小説より奇なり」で面白く、理論の部分もわかりやすかった。
結論としてうまくできすぎてるようにも思えて引っかかるけど、あくまでモデル構築なので、こんなものなのかな……。
マグロは止まると死ぬ、という言説を解説すると「マグロは泳ぎ続けることによって体温を高く保」っているうえ、「浮き袋が縮小または消失しており、体の密度が海水よりも大きいので、泳ぎ続けなければ沈んでしまう」とか、体積が大きいほど表面積が相対的に小さくなり、熱の慣性が大きくなるので、体の大きな動物は体温がそもそも変動しにくく、恒温動物として生きたほうがエネルギー効率的に有利、というお話とか、目から落とすための鱗の生産が追いつかない。
めちゃ面白かった!
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生物学者ジェームズ・ブラウンによって提唱された生物の法則「生物の代謝量は体重と体温の二つの要素によって決定される」の検証ともいうべき著者の4種の動物「ニシオンデンサメ」「ホホジロサメ」「アデリーペンギン」「バイカルアザラシ」の調査にまつわる専門的内容とエピソードをちりばめた必読のエッセイ風著作。
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野生動物に小型の記録計をつけて
そこから動物の生態を探る研究をしてる
フィールドワーク大好きな博士が
これまでの研究成果をふまえて
「体温」が重要な意味をもつことを
教えてくれる一冊です。
正直、むずかしいことは
半分も理解できたかどうか怪しいけど
動物は環境にあわせて生きるため
体温すらも調整して進化してきたんだね。
熱量を生むには
めっちゃ食べるかめっちゃ動き回るかなんや…。
そして生めないタイプの生物は
超スローライフをおくるという。
あと著者の研究生活レポートが
学術部分にも増しておもしろい!
機械を取りつけるため船酔いしつつ
何日も船上で生活したり
極寒の地で置いてきぼりになったり。
ワイルドだなぁ〜!
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新書にラノベみたいなタイトルつけるの流行ってるよねー。構えなくていいよ、気楽に読んでね、という意思表示ととって読み始めると、これが本当に読みやすい!
かと言って内容が薄い訳でなく、文章も構成もとても上手くて、わかりやすい。
一生懸命さもカッコよくてウラヤマシイ!
単に嫉妬してしまった。