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紙の本
死が身近だから生が輝く
2008/05/27 11:47
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ナンダ - この投稿者のレビュー一覧を見る
ついさっきまで戦争ごっこをしていた少年が、本物の弾で殺される。兵士が行軍するわきの川で子どもたちが遊び、農婦がただずむ。戦争と日常が隣りあわせであり、民衆の痛みが目の前に見える戦争だったのだ。
戦場をもとめて前線を歩き、すぐ隣の兵士の頭が吹き飛ばされる。足がすくみながら、それでも戦場を歩きつづけ、「アンコールを見られたら死んでもいい」と言い残してカンボジアの前線にむかって連絡を断った。
カンボジア人やベトナム人の友人と交流し、戦場に住む人々の夢や希望を聞く。とりわけ、教師をしているカンボジアの友が結婚し、「夢」を語る場面は痛々しい。彼らの幸せな結婚式からわずか数年後、教師や医師といったインテリは皆殺しにされることを、読者である私たちは知っているからだ。
恋をして、女を買い、「ベトナムは美人が多くて仏教徒でも性は自由です」と言って、カンボジアからベトナムにでてきて……。生と性と死が濃密に交わる日々をすごす姿がまざまざとうかびあがる。倫理とか道徳とかを超越した「生」がある。
紙の本
夢破れ命散る、夢諦めて命残る。
2003/11/27 21:46
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:川内イオ - この投稿者のレビュー一覧を見る
2年前、夢を追って街を離れた私の友人が、最近、夢破れて地元に帰ってきた。
私は、かける言葉がなかった。
簡単に夢を諦めるな、と言いたい自分と、何の結果も見ないうちに諦めるぐらい
だから、はじめからその程度の気持ちだったんだろう、と呆れる自分がいた。
『地雷を踏んだらサヨウナラ』は、フリーの報道写真家、一之瀬泰造が家族や友人知人に宛てた手紙を編纂した、写真・書簡集である。
彼は、1972年、24歳のときバングラディッシュに入りフリーの戦場カメラマンとして活動を開始、その後ベトナムを経て、1973年、当時戦禍の真っ只中にあり、一般人は足を踏み入れるどころか近づくことすらできなかったカンボジアのアンコールワットに単身乗り込み、若干26歳にして命を落とす。
彼は、病に冒され、撃たれ、ときにカメラに命を救われながら前線に漂う死の匂いを嗅ぐ。しかし、戦場にありながら、彼の書いた手紙からは「戦争」という言葉のイメージにありがちな悲壮感、恐怖感、非現実感よりも、女性に惹かれ、友と酒を酌み交わし、夢を追う、まさに青春を過ごす若者の姿が見える。
そして彼は、同じように若者特有の無邪気さで、「写真が撮れたら死んでもいい」というほど魅せられたアンコールワットに独り前進してゆく……。
私は、一之瀬泰造を哀れだと思わない。この話を悲劇だと思わない。
恐くなかったはずはない。
もし彼が「やっぱりやめた」と言っても、誰も笑わなかったはずだ。
しかし彼は、自分の夢を追い、夢に散った。それは、彼が自分で選んだ道なのだ。
夢は追い続けるのも、諦めるのも恐い。
私の友人は、勇気があるし、腰抜けでもある。それは、私も同じだ。
それでは、夢を叶えることなく死んでしまった泰造は夢に酔った愚か者だろうか。
私にはわからない。
ただ、私もどうせ死ぬなら夢に酔ったまま死にたい、そう思った。
千鳥足で気持ち良く前に進んで「地雷を踏んだらサヨウナラ」、
私も人生これでいこう。