紙の本
進化する身体
2002/07/13 16:14
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:あさの - この投稿者のレビュー一覧を見る
進化して男から女になった女たちは、独特の清涼感につつまれている。
男の女、両方の性を経験した結果、『元』男たちは、女の身体がジオラマだと感じる。世話をしてやらなければ誰の目にも止まらず、なんの評価もされない物体だと。
そこには女の身体が持つ、もともとの泥臭さも、原始的な穢れもない。
美しさだけを取り込み『男』は『女』に進化する。
鈍感であることは悪だといわんばかりの、主人公の存在感はある意味残酷ですらある。
彼はじぶんのものと決めた桜の木の上で、初めて亘を見、多分最初から彼を恋する。そして彼の身体は進化し始めるのだ。亘を受け入れることができる、『女』へと。──と、考えるのは僣越すぎるだろうか。
とはいえ。
もともとはあるべきものが外部にある性特有の恐怖、『とれちゃう』というのは興味深い。それは、『とれちゃった』あとの、清潔感と美しさが、この世の物を超えた存在になっているせいだ。まさにジオラマ──のように。
その身体を再び地につなぎ止めるのは、『彼』が恋した『彼』の身体。
かちり、かちりと音をたてて、意識は繋がり続ける。
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かつて「ぼく」を刺したあの少年が、時を経て、綺麗な女性になって目の前に現れた……。「両性具有」をモチーフにした、不思議で切ない小説。
作中にある「電波の届かなくなったヘリコプターの話」が大好き。
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空想医学小説かと思えば、神話のようでもあり、ちょっぴりいびつで優しい男同士の友情の物語かと思えば、不器用でピュアな恋に落ちる男と女の愛情の物語でもあります。読んでいると、場面ごとの映像が鮮明に浮かび、クロスバ交換機のカチ・カチという快い音が頭の中にくっきりと響きます。
なぜ、男と女、ふたつの性があるのか。どうして人は恋に落ちるのか。ふたつの性を併せ持つ人は、男なのか、女なのか、どちらでもないのか。ソモ・ソモ男女の性差をどこに見出したらよいのか。透明な科学の目と、繊細な文学の目の、両方の視点から深く性の謎に踏み込んだ興味深い作品です。吉川英治文学新人賞受賞作。
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喪失と再生の物語。ともすれば荒唐無稽な設定を、うまく物語の主題の中に落としこめている。村上春樹を彷彿させる、おだやかな語りが心地いい。
いつ、「ヒロシ」の望みが成就されるのだろうと、ドキドキしながら読んだ。亘はとてもいい漢だ・・!ちょっとファンタジーな設定にはびっくりしたけど、そんなに突飛な設定でもない。「11人いる!」のフロルみたいなもんですね。
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帯には「ペニスのことなんて、誰に相談したらいいんだ」と、過激な文章が。でも、中身は柔らかくて不思議なありえないけれどありえそうな、物語。まあ、中身はペニスのお話といえばお話なんだけど、別にエロい要素はないので、高校生ぐらいからオススメ。喪失・再生。
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性転換手術、などとはちがうけれど、
奇想天外な方法で性別を超えていくお話。。
それを受けいるのにどれだけかかったか・・・というヘヴィな部分をおいといて
ジオラマ作りに熱中する彼。その完成度。協力者。
このプロットに脱帽。
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大人のファンタジーでよかった。相変わらず現実の中にファンタジーを入れるのがうまい。ただラストで子供が出てくるのはちょっといただけないなあ…。