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古代史は文字資料がないがゆえに邪馬台国は沢山の夢とロマンを生み出している。
近世、江戸時代は文字情報があふれ出す。虚実を取り混ぜた文書類がさまざまな形で残され現代人をたぶらかす。
忠臣蔵を巡る記録から新しい角度で忠臣蔵を見つめ直す。虚実を取り混ぜたような資料を丹念に掘り起こし、そこにフィクションを織り交ぜる。歴史小説にありがちなパターンではあるが、この本は魔性的な怪しげな雰囲気を醸し出す。読み始めると癖になるテイストである。
「チカラ伝説」では大石主税を怪しい美少年に仕立てあげる。「元禄不義士同盟」義士になれなかった赤穂浪士と吉良を討たせてしまった吉良邸の附人たちが不義士同盟どうしで決闘する。中入り「紫の一本異聞」は戸田茂睡の江戸地誌『紫の一本』に題材をとった綺談もの。「算法忠臣蔵」では赤穂の銀札から重商主義の先駆けとしての赤穂を語り、「徂徠豆腐考」赤穂浪士の処遇を具申した荻生徂徠と豆腐屋七兵衛の不思議な交流を描くのである。
著者の博学ぶりと落差のある登場人物の語り口がおもしろい。