紙の本
一橋大学生のメンタリティ
2019/10/20 13:37
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投稿者:1ベクトル - この投稿者のレビュー一覧を見る
私が特に印象深く覚えたのが豊島氏の学生時代の話と多摩地区の大学生、具体的には一橋大学生の勉強に向かう姿、そのイメージだった。中央(東大生)とは少し異なった距離感と堅実さ、真面目さ。社会科学に特化した大学のアイデンティティ。読む間、その印象が豊島氏のその後の姿にもずっと二重写しであり続けた。
大学時代(または将来形成的な時間を過ごしている期間)にその人の眼差しの先にあったものは、自分が思っているよりも強く、奥底から深くその人を規定するのかも知れない。
以上、極私的感想です。同時に佐藤優さんの描き、受け止める言語的包容力の大きさを改めて感じました。
紙の本
日本年金機構と共済組合のシステムの相違を感じさせる。
2019/09/30 22:51
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投稿者:まなぽん - この投稿者のレビュー一覧を見る
■230頁から231頁にかけて、豊島君の認識として、ゆうちょ銀行のシステムとあおぞら銀行のシステムの、規模の違いを痛感させられた、との記述があります。■本筋ではない箇所ですが、ここが、一番印象に残っています。■日本年金機構と共済組合の、システムの規模の違いに、相通ずる事柄だ、と感じたからだと思います。■豊島君、お身体大切に。佐藤君、ご活躍よりなによりです。■高校の後輩なので、親近感を持って、読みすすむことができました。■さすがに、私は、浦高受験のために、塾には行きませんでしたが、それでも、それなりに勉強した記憶はあります。中学時代・浦高時代を思い出して、懐かしかったです。
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危機的状況では、人間は楽観論に走る
日本債券信用銀行 日債銀 もともと朝鮮銀行 日本長期信用銀行、日本興業銀行
経済のニュースは市場に与える影響を最小限にするため金曜午後
上場廃止 日債銀株が紙切れとなる
入りに関しては痕跡をつくる出については痕跡をつけない 食事もキャッシュで払う
検察にとって事実と真実は違う
窮地に陥ったら戦線を広げよ 裁判において負けても、社会において負けないようにするにはどうしたらいいかを僕は考えた
被告人は証言することができない被告人には偽証罪のしばりがかからない被告人がいっていることと証人がいってることがぶつかると、被告人のいっていることがすべて却下される
こんなのは上りがすべて地獄になっているすごろくだ
憲法違反か判例違反がある場合にしか最高裁の扉は開かれない
新生銀行の前身は日本長期信用銀行
外務省時代、私は相性の合わない上司とは、接点を極小にした。そうすれば摩擦が少なくなるからだ
僕は人によって接し方の変わる人間を、絶対に信用しないといった
豊島氏より 生きていくうえで特に重要と思うこと
こんなもんだと思うこと
仕事以外に自分の生きる目標を作る。
好きなこと、やりたいことを見つけること。
いい経験をしていると思うこと。
人的ネットワークを作ること。
目標となる人を作ること。
チャレンジ精神をもつこと。
自分の座標軸と見失わないこと。
一喜一憂しないこと
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高学歴の会社員の世界観が興味深い。豊島さんはテストで満点を取ることに必死になっていた延長で、仕事も満点になるように必死にがんばってきたのかな。
でも、仕事は一人では成果は出せないからね。上司や部下や取引先などなど色々絡んだ結果だから、いつもすごい成果をだせるわけではない。むしろ、こんなに努力してるのになんで結果?みたいな理不尽なこともたくさんある。
彼に家族との幸せな時間がもっとあれば、そんな日々ももっと楽しく過ごせたのかもしれない。私たちが学ぶべきところは、そんなところ。
いい人生とは何か、いい仕事とは何か、一言で語れるとかっこいいけれど、一言では語れない人生の複雑さを表現している。
佐藤優がたまに、響く言葉を言う。
P162 生き残る人と生き残れない人を分けるのは、結局のところインテリジェンス能力と歴史観。
豊島さんの残された日々が、穏やかであるよう、祈ります。
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「友情」を考える上でこれ以上の本があるだろうか。高校一年生の一年間を濃密に過ごした著者二人のそれからの人生を顧みて、勿論それぞれの人生があったわけだが、都度都度関わることがなくても、いざという時に一番親身になって精神的なヘルプをしてくれる親友という存在。
自分の身で振り返って、3年前に三途の川が朧気に見えた時期があった際に、やはり親友家族にとても言葉で表せない勇気をもらったことがあり、幸いなことにまだ生かしてもらっているが、その時の記憶を呼び覚ましながら読ませてもらいました。
お互いのことを尊敬し合える友達同士の友情は本当に素晴らしい。最後の伊豆弓ヶ浜への二人旅行の場面は涙無しに読むことができませんでした。
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★4.7(4.33) 2019年4月発行。膵臓癌のステージ4と診断された高校1年時の同級生である豊島昭彦氏の生きた証として、同氏の半生について、手記を交えて執筆。「十五の夏」にも出てきた豊島氏。まさか膵臓癌と診断されてから1年も経たずに亡くなってしまうとは。(6月に亡くなったようですね。)ご冥福をお祈りします。僕にも30代の若さで同じ膵臓癌で亡くなった後輩がいたが、検査で分かってから3ヶ月も経たずに亡くなった。豊島氏の人生を意味あるものにするため、手記の執筆を勧めた佐藤氏の友情には頭が下がりますね。
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冒頭、豊島氏が「自分の人生の本など誰も興味を持たない」と発しそれを佐藤氏が制する場面があったけど、自分も豊島氏と同じ考えで読み物として成立するの?と思ってた。
けど蓋を開けてみるとかなり良質なノンフィクションだった。
佐藤氏の文章の巧みさもあると思うけど豊島氏の生き様も、人生ひとそれぞれなんだなと考えさせられるところがあった。
エリートコースを歩んでも、誰しも順風満帆というわけでは無いんだね。
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佐藤優さんの高校の同級生・豊島君が、すい臓ガンで余命幾ばくもないことがわかった。佐藤優さんはそのことを聞いて豊島君に「2人の自伝を書かないか?」と提案する。
すい臓ガンは怖いガンだ。気がついた時は既に遅く、ある事情で私も他人事ではないと感じている。しかも、この2人とはほとんど同世代ということがわかった。私と違い、優秀な成績で社会に出た後に98年の日債銀経営破綻で人生がガワリと変わった豊島君は、しかし同世代だけに遠い世界ではない。
「それで豊島君は何がしたい」あえてビジネスライクに佐藤優さんが聴くと
「自分がこの世に生きた証を遺したい」
で、2人の自伝を提案すると、豊島君は怯む。佐藤優さんは畳み掛ける。バブルがはじけた時代を語ることは意味があるはずだと。
「でもそれは、あの時代に特有だった特殊な事例であって、今の時代には通用しないのでは」
「そんなことはない。時代は繰り返す」
豊島君の想いは、とてもよく理解できる。佐藤優さんの判断も正確だ。とても理性的だけど、限りなく情に溢れている。これが「友情」というものなのかもしれない。
2人の高校生活を見ると、2人を合わせて1/3にしたようなのが私の大学生活だったと思う。私の3ー4歳先を既に歩いていたのである。なるほど、これが秀才の歩く道なのだ。
90年バブル破綻、97年北海道拓殖銀行破綻、豊島君は、悪循環に落ち入る日債銀の中にいて「一度マスコミに対して弱みを見せるとマスコミは一気呵成に徹底してその弱みを追求してくる」と強く感じた。「結局誰か犠牲を作らないとこの攻撃は終わらないのだ」。この構造は20年経っても1ミリも変わらない。
「外見の強そうな男がメンタルも強いとは限らない。(略)普段は温厚で柔和だが一度決めたことはブレない意志の強さ、そして地頭の良さを兼ね備えた豊島君のような人間こそが、どんな修羅場も毅然と乗り越えられるタイプであることを私は経験的に知っている」(163p)
会社が経営破綻して、外から外国人上司がやってきたときに、いち会社員としてどのように接したかということは書いてあるが、当然だがバブル崩壊そのものの全体像は描かれていない。平成会社員「史」としては興味深かった。上司との付き合い方には普遍性がある。差し障りがあるので詳しい事は書けないが、私は頗る共感した。
数年前に豊島君は両親と死別した。似たような経験を私もしている。また、最後の人生8訓も、私は頗る共感する。やはり、同世代なのだ。
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毎日小学生新聞の連載で
佐藤優がこの「豊島君」について語っていて
読みたいなあとずっと思っていた本。
①カイロス(timing)ある出来事が起きる前と後では、事柄の質が変わるような時間。
ex:記念日
神学を勉強して有益だったのは、カイロスに敏感になったことだ。(p42)
「今、豊島君は何をしているのだろうか」このような感情は相互的なので、豊島君も私について考えたことがあると思う。
夢に出てくるとかありますが、それはそうなのかなあ。
②佐藤優の父の教え
大学教育は受けろ、適正があれば大学院まで進め、高等教育を受けると、国家が国民に嘘をついているときも、それを見抜くことができる。口に出すことができなくても、戦争に負けるということが分かっているといざというときに判断を間違えない。
佐藤優の父もまた、すごい方だったのだろう。
こういう、本質を伝えられる親になりたい。
母もまた、沖縄の防空壕で手投げ弾のピンを抜こうとして、となりにいた兵士から
「国際法で女性と子どもは守られる」
「死ぬのは捕虜になってからでもできる」
と耳打ちされ、命を取り留めた経験を持つ人だった。
③植民地経営→地政学が重要。
日本は島国→ネットワーク重視の海洋国家
半島国家→地政学的に半分海洋国家、半分は大陸国家のハイブリッド
大陸国家の基本戦略は自国の領地を増やして効率的に統治すること→マネジメント能力
人々をまとめていくにはやはりノウハウが必要なのだ。
まだまだ学ぶことは多い。
雑多になっている。
経験だけでものをいうのではなく、論理も同時に構築したい。
④逮捕されてからは、日記と手帳がとても重要になる。特捜は手帳に書いていることを物証にするので、それで実際と違う話を作られてしまう危険性がある(p151)
どこも面白いが、ここの話もかなり興味深かった。要するに、もう違う話ができないくらい細かくログをとっているのだ。佐藤優のノート、日経Womenかなにかで見たことあるが、時間と何をしたのか細かく書かれていた。
さらに唸ったのは、ATMで入金は絶対にしないという話。引き出しておいて、多かったからといってあとで入金すると、これが記録になる。どこに送金したんだ、と。そこから勝手に話がつくられていく。
結局、payだってポイントだってTカードだって同じなんだよね。管理したいという国家の戦略なのでは、と浅はかな私は思ってしまう。
⑤生きていく上で特に重要と思う事柄(8項目)
1 こんなもんだと思うこと。
仕事が厳しいのは当たり前。
2 仕事以外に自分の生きる目標を作る。
好きなこと、やりたいことを見つける。
自分だったらなんだろう。
家族、書道、お花・・お茶も興味あるなあ。
3 いい経験をしている、と思うこと。
置かれた環境を楽しむくらいの余裕。
4 人的ネットワークを作ること。
苦手分野だ、たぶん。
当面は、会ったときに笑顔で話す。
はがきを書く、を続けていこう。
5 目標となる人を作ること。
自分もそういう人になれるよう努力する。
今まで、人には恵まれてきたと思う。
特に大学、仕事を始めてから。
どんな人と一緒にいるか、の影響は極めて大きい。
学ぼう。
6 チャレンジ精神をもつこと。
できるかどうかわからないことをやってみる。
あー、これできてるかな。
毎日がどちらかというとできるかどうかわからないことばっかりなんだけどなあ。
7 自分の座標軸を見失わないこと。
これだけは譲れないもの。
その軸から今の自分が外れていないか常に意識しておく。
ここから逸脱すると、きっと精神がおかしくなるんだろう。
8 一喜一憂しないこと。
小さなことで一喜一憂しない。
人生には波がある。
うまくいく日もあればうまくいかない日も。
うまくいかない時期もある。
長いスパンでみる。
人生は短い。
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本書は「青春」という誰しもが体験する人生の一時期も濃密に描いている。著者とその友人の青春時代を読む事で、小生もまた若かった恥多き日々を思い出してしまった。
ノスタルジーの日々は限りなく甘くそして苦い。「15の夏」も面白かったが本書はさらに興味深い。
本書には「感動」がある。リアルの力なのか、著者の作家としての力量なのか、おそらく双方相まってのものなのだろう。友人への暖かい心と、作家としての力量もうかがえる作品である。
二人が生きてきた時代は小生も通り過ぎてきている。闘病の生き様も我が事のように心を揺るがした。やはり著者の本は優れていると評価したい。
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銀行勤めの方の人生が面白く読めたのは、読みながら頭の片隅で自分はこのときどうだったろう、とさまざまな像が浮かんだからかもしれない。考えちゃうよね。そうさせるのが筆力か。
ほとんどが豊島氏という佐藤氏の友人の半生についてのエピソードだった。国策捜査でつかまった佐藤氏とちがい、銀行勤めの会社員であり、特段ドラマチックというものでもないはずだけど、妙にひきこまれた。普通の人生もまた、ドラマチックということか。どんな人でもアップダウンあり、良いときもあれば、つらいときもあるということかもしれない。気がついたとき、末期のがんだったというのも、案外めずらしい話ではないのかもしれない。今ある日常が、それほどに大切なものだということを教えてくれたということかな。
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知らない中年男性の人生語りが胸を打つというのはこの歳になったからでしょうか。いや、誰も物語を持っていて、語るべき場所さえあれば皆人生の主人公なんだと思います。それが無ければ小説も存在しませんしね。
佐藤優さんといえばギョロ目の達磨のような強面の風貌でおなじみですが、僕は全然興味が無かったので一冊も著書を読んでいません。
しかし何故かこの本には惹かれてしまいました。数十年ぶりに有ったかけがえのない親友。彼がすい臓がんで1年足らずの余命と診断され、彼と共にその足跡を一冊の本に纏めようと考えた。この時点でジンとしてしまいますが、よく考えたらこの友人の豊島さんは有名人でもなんでもない人です。かなりの秀才だった為経歴は物凄いですがなんだかんだ普通の人の範疇にいる人です。
佐藤君、豊島君が44年前に育んだ友情と、疎遠になった後のお互いの人生を照らし合わせて、戦後高度経済成長からバブル経済の終焉、長期に渡る不況と金融機関の統廃合に伴う大量のリストラ。
当時子どもだった僕にはとんとわからない話でしたが、実際にその渦中にいた人の経験談はとても興味深いです。ニュースや解説だけでは分からない事が沢山ありました。
誰もが皆、産まれて死んでいく事に意味なんてないけれど、一つ一つ意味と名前を付けていく作業こそが人生なのかなと読んでいて思いました。
何十年経っても、会っていなくても大事な友達っていますよね。友達が少ない僕にもいます。向うはどう思っているかは分からないですけどね。
彼らのように時間を一瞬で埋めてまた何かを始める事が出来るって、とってもとっても素晴らしい事。これこそが産まれてきた意味の一つだと思います。
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佐藤優による友情の物語。同志社大学神学部で描かれた大学生時代の物語を更に前後に広げた時間軸での物語。1975年4月から浦和高校1年9組で1年間隣り合った豊島昭彦君の視点(人生)も絡み、改めて知る、1960年前後に生まれた、彼ら二人のクロニクル(リアル年代記)でもあります。時代の流れの中で外資に翻弄される日債銀、そして民営化されても意識は官営(お役所感覚)という`ゆうちょ銀行`等の悩ましい実情も垣間見えます。オススメです。★四つであります。
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高校時代の同級生 豊島さんの半生が書かれた手記。
余命幾ばくもない豊島さんの為に著者が何かできないかと考えた結果がこの本なのかなと思った。
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十五の夏、先生と私に続いて読んだ。十五の夏にも登場する高校時代の親友 豊島さんは本当に人格的に素晴らしい人だということがわかる。がんに罹患し余命宣告を受けた豊島さんの生きた証を残すために作成された作品。豊島さんの人生を、佐藤優の人生とも重ねながら、生誕から幼少・学生・社会人としての時代を家族、会社の同僚・上司などとの関係などをこと細かく描かれている。激動の日本を生き抜いた同年代の人なら共感を持つ内容ばかりだ。自分の身に置き換えながら感情移入しながら読み進めた。いろいろと考えさせられる素晴らしい作品だった。