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いいずな書店の『総合英語be』という、桐原のフォレスト的な高校性向け英文法参考書の著者が書いた、高校英文法の「新常識」。
「学校で教えてくれない!」とあったので、おれは学校でこれを教えたのかどうかを確認しながら読む。たぶん、結構教えていると思う。というのも英文法を色々勉強している人にとっては割と普通の内容なので、これを読んで、あんまり「へ~」っていう英語教師がいたら勉強不足だと思う(この本で勉強すればそれでいいんだけど)。確かに通り一辺倒の勉強しかしなかった人にとっては「新常識」かもしれない。例えば最近教えたのだと「仮定法のif節でshouldを使うと、『~するようなことになれば』という、そうなる可能性がある仮定を表す」(p.145)とか、わりと普通だと思う。さらに、その後命令文が続くことが多い、ということをこの本では「説明書や案内書の中でていねいな表現として使われることもあります。『~するようなことがあれば』というニュアンスにすることで、押しつけがましさをなくす効果があるからです」(同)と書いてあって、そういう捉え方をおれはしていなかったというのはあるけど。(ちなみにおれはこれを、授業しながら突然思いついて、「ワンチャンのshould」とネーミングした。わりと今の生徒には分かりやすいネーミングだと思うんだけど)
と言いながら、わりと上ではエラそうなことを言ってしまったけど、ここからはおれの勉強不足だったところのメモ。まずby footという表現がある、ということ。もっと言えば「by foot以外にもby walkやby walkingという言い方もあります。」(p.54)ということで、これでもう「歩いて」( ) footで正解はon、みたいな問題は出せないということが分かった。そもそもwalkでいいという話なんだけど。あと教えてないこと、と言えば"Do you want me to..."とか"Would you like me to..."というShall Iに代わる表現(p.115)。shallはあんまり使わないね、という話で終わってしまっていた気がする。この表現の練習までさせるべきだった。あと二倍ならtwice as tall asは教えたが、two times taller thanは教えていなかった。というかおれがそういう表現を知らなかった。でもtwice taller thanが「3倍」になる、というのは本当なんだろうか(p.140)。ちょっと人に聞いてみたい気がする。最近may wellとmight wellの講義をしたが、「実際にはmightとmayの違いはあまり意識されずに使われています」(p.203)ということで、おれはmightとmayの違いを説明してしまった気がする。mightは仮定法だから大げさなこと、とか言った気がするが、アップデートしたほうがよいのだろうか。ちなみに「His story could well be true.(彼の話はおそらく本当だろう)」(同)という、could wellは知らなかった。
あと説明が雑というか分かりにくくなってしまっているところがある。「これからすることには不定詞を使う」(p.17)と言っておきながら、p.113では「『不定詞がこれからすることを表す』というのは正確ではありません。」と言って、Nice to meet you.みたいな例を挙げているが、なんか不親切。判断の根拠を表す不定詞と、動詞の目的語になる不定詞のときの話が違うんですよ、とか、不定詞→これからすること、は成り立ってもその逆は成り立たないとか(?)、注意喚起というかもうちょっと丁寧に言って欲しい。(確か何かの本に「不定詞は→」で説明されることがあるが、判断の根拠なんかはむしろ「←」なんじゃないか、と書いてある本があった。どうせならその辺を説明して欲しいと思う)それから冠詞の説明。プロの場合はpianoにtheが付かない、とか『謎解き英文法』であった気がするが、その理由は「ピアノがその人の活動を支えるものとして認識されているためです。go to school(学校に行く)と言うときのschoolは無冠詞ですが、これは「学校」を建物としてあなく、学習をする場として認識しているからです。play pianoと言う時のpianoと同じ感覚なのです」(p.214)という説明は、どれくらいの生徒を納得させることができる説明なんだろうか。もうちょっと他の例くらい欲しい。Someone is playing a piano.の説明は「ピアノの音色を聞いたことに、弾いている人よりも『ピアノ』の存在自体を意識したため、aを付けることでピアノという形がイメージされる」(同)という説明も同じで、分かると言えば分かるけど、かろうじてこの状況についての説明(なんかの本で書いてあった「アド・ホックな説明」)として分かるかどうかというギリギリのところで、あんまり汎用性がない気もする。だから英文法の「説明」は、専門家相手でもない限り踏み込んではいけない項目があると思うし、言葉なんだから説明できない適当なところやそのうち変わってしまうことなんかいくらでもあるでしょう、という寛容さをどこで入れるのか、というのが「教育英文法」の課題かもしれない。
最後にIt was stupid of you to believe him.がforでもOKというのは、おれは気づいていなかった。どっかで意味上の主語の話が出てきたところでやろうか。
確かに主だったところがこの新書1冊でサラッと学べるという点では良い本だと思う。(19/07/27)
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今や鎌倉幕府成立は1192年ではないらしい。
過ぎ去った時間についてのことさえ、ン十年すると、こんな風に教え方は変わってしまう。
ましてや、イキモノたる言語なら、なおのことであろう。
日本語だって、親の世代では形容詞に「です」をつけるのはご法度だった。
しかし、今や「おいしいです」「わからないです」はすっかり定着した。
英語だって、かつて教科書に載っていた言い回しが、ネイティヴからすれば、「う~ん、それ、間違いじゃないけど、おばあちゃんくらいなら使うかなあ」なんて思われるものに変わったかもしれない。
というわけで、現在の高校生が学ぶ参考書の著者が、大人の英語の学びなおしを助けるのが、本書。
ただ―「ほら、昔はこう習ったんでしょ?」と提示した部分が、必ずしも自分に残っているわけでない。
そんなすべて覚えちゃいない、という意味でもあるし、忘れてしまってNHKの英会話番組で学びなおしてきたから、知っていたりすることもある。
とはいえ、トピックごとにまとめてあるので、知っていることであっても確認するのに役に立つ本だと思う。
自分にとっては、比較級のところがためになった。
twice as tall as = two times taller than
これをtwice taller than にすると、2倍分高い、つまり、高さとして3倍となってしまう。
~times は~を掛けた数という意味になるのに対し、twiceにはそのような意味がないからだという。
half as tall asはOkだが、比較級では使わない。
one and a half times taller than = half again taller than(1.5倍高い)というのも、覚えておきたい。
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どんな言葉でも生物と同じように時間と共に絶えず変化している。日本語においても規範文法からは逸脱しているけれども多くの人が使うようになりそれが標準として認められようになっていく言葉遣いもある。またその変化にはそれなりの理由があるのだろう。
ましてや教科書や参考書で学んだ言葉ではその変化に気がつかないことが多い。もちろん参考書等が間違っていたり、自分の勘違いということも多々あるのでさらに誤解は大きくなる。
現在使われている高校の英語表現の教科書には言葉が絶えず変化し、その研究も進んでいるにもかかわらず半世紀前のものと同じような説明や問題が出されていると感じている。
とても分かり易く書かれているので本書で述べられている知見をぜひ教科書にも反映させていただきたいと思う。