旧・統一教会問題で
2022/10/15 12:00
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投稿者:名無し - この投稿者のレビュー一覧を見る
昨今の旧・統一教会問題で、公明党がフランスの反セクト法に強硬に反対していることは、意外と知られていないが、支持母体の創価学会がフランスの同法で適用対象となっていて、日本で同様の法律ができることを恐れているからである。自民党も差異はあれと同様の事情なのだろうか。
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自公政権はなぜ安定しているのか、その理由について、データおよび歴史を活用して、丁寧に解説してある。
結局のところ、綿密に練られた政策調整プロセスと選挙協力、そしてお互いの政党の特性を補完し合うことによって、ここまで安定した政権が作られている。(もちろん、選挙協力に関しては、地域の事情もあり、完璧とは言えない部分もある。)
野党はここから学ぶべきであるし、もはや選挙制度を変えないとどうにもならない状況まで追い詰められている。
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本書の著者は『自民党政治の変容』(NHKブックス)や『自民党』(中公新書)で、1970年代以降、幾度も危機がありながらその都度蘇り、大半の期間で政権政党の座を維持している自民党の「強さ」の構造的要因を実証的に明らかにしたが、本書では前著の課題として残されていた「公明党との連立の持続性」の原因を追求している。
明らかになったのは、小選挙区比例代表並立制に適応的な「高度」で相補的な選挙協力と、連立政権の緊密な意思決定システムである。自公政権分析の前提として、過去の連立政権(非自民八派政権、自社さ政権、自自公政権、民国社政権)の意思決定機構の変容を明らかにしているが、1990年代以降の政権がほぼすべて連立政権であったにもかかわらず、これまで十分に分析が行われていなかっただけに、極めて貴重な成果と言える。
なお、現在の野党共闘の成立条件を探る問題意識を前提としているが、現行の選挙制度と旧民主党系の「固定票」の脆弱さ、日本共産党の綱領問題等から極めて悲観的な結論を導いており(選挙制度改革を優先するべきとの視点を提示するが、多数派の与党の同意を得られない以上不可能)、反自公政権サイドに根本的な戦略見直しを迫っていよう。
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主に、平成の政治史を連立というキーワードで分析した書籍だと思った。政治学による分析で客観的に考察し、平成の政治の変遷を経過も踏まえて書かれている。
とても勉強になった。学校の授業で教えてもらったような、歴史の流れや因果を意識していて、何故そういう出来事が起きるのか、とても分かりやすかった。
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著者の非常に丁寧な取材や文献調査などによって、自公両党の議員が、緊密なコミュニケーションをすることで、互いに模索、協力し、今に至る連立政権を構築していることがよく分かりました。また、野党側が同様な体制を構築できるかは、共産党によっているというのが、印象的でした。
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『自公政権とは何か』というタイトルだが、現在の自公政権のみならず過去の連立政権すべてについて非常に丁寧な分析が行われており、「連立政権とは何か」というタイトルの方が中身をよく表しているのではないかと思う。
現代の日本では、1政党が衆参の両院の過半数を握ることは難しく、連立政権の構築とその円滑な運営が極めて重要となる。必然的に似通わない部分をもつ異なる政党が力を合わせるにあたっては、各連立与党・政府が政策立案過程において交渉と妥協を重ねることになる。意見集約のプロセスをどのように形づくれば円滑な政権運営に繋がるのか、歴代の連立政権はそれぞれ様々な試行錯誤を行ってきた。本書はその歴史を詳細に描写する。
そして、その集大成ともいえるような、歴代で最も安定している連立政権が、現在の自公政権である。政策的に一致しない点も多いはずの両党が、なぜこのような安定政権を維持できているのか。その理由は、互いを理解し合った現実的な意思決定に加え、綿密な選挙協力にもある。特に小選挙区制が導入されてからは「対抗馬を立てない」という大きな行動が必要となり、選挙協力がとりわけ重要になった。農村部を中心に幅広い支持を得る自民党と、学会による都市部を中心とした票田を持ち「自民党のブレーキ役」を自称する公明党は、互いの異なる支持層をうまく補完し合い、選挙区での完璧な棲み分けと比例のバーターによる互恵関係を完成させている。(現制度での「大連立」の難しさも小選挙区を理由に説明できる。)
しかし、自公政権の成功の理由はそれだけではない。互いに組織票を漸減させ、絶対得票率も伸ばせていない両党が一強を保っているのは、投票率の減少と、野党が一大勢力を形成できていないことも原因である。筆者はこの点においても強固な連立構想の重要性を説き、民主党政権の失敗の一因は連立合意の不足にあったとする。
筆者はあとがきにて、2017年の希望の党騒動が執筆の動機となったと述べている。本書の執筆後、旧・立憲民主党は旧・国民民主党と合併して立憲民主党という民主党以来の一大勢力を構築したものの、2021年の衆院選では十分に票を伸ばすことができなかった。その理由を説明するにあたって筆者の主張は未だ有力であり、自公の絶対得票率が依然50%を切っていながらも国政の勢力図が変わらない現状を打破するには、筆者の提言が未だ大いに重要性をもつだろう。非自公勢力の幅広く分散した支持を結集する強固な連立構想なしには、現在の選挙制度が変わりでもしない限り、非自公安定政権は非現実的である (という私の主張を中北先生がこのようにしっかりと形にしてくださりとても嬉しかった)。
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1993年の東京佐川急便事件などを背景に、自民党一強の政治に対する懸念が高まり、政治改革がなされることになった。それは二大政党制を作り出すことを目的としたものだった。筆者の理解によれば、改革によってもたらされたのは二大政党制ではなく、自民とその他大勢という2ブロック型の多党制だという。
自公の連携は、自社さ政権崩壊後から始まる。目指すものの違いによる限界から崩壊した自社さ政権に変わり、連携を組める相手として浮上したのが公明党である。議席数がちょうど良く、党内の結束も強い公明党なら、ということである。両党の目指すところは似ているどころか、かなり距離が大きい。国防や憲法においてそれは顕著であるが、そのことがかえって自民党にブレーキをかけている。両党の連携がうまくいっている鍵として、緊密な選挙協力がある。民社の連立政権が失敗したのとは大きく違っている。
メディアでは野党共闘がさかんに報道されていたが、自公がそうしたことを当たり前に行っていたというのは知らなかった。政権交代が難しい原因として、筆者は共産党の存在を挙げる。だが、非自民・非共産のかたまりを作る動きは迷走が続いている。
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「政策からみれば、公明党は民主党と近い。だけれども、体質は自民党と近い。政治は理屈じゃなくて、情だからね。自民党は本当に懐が深いよ。」公明党の漆原元国対委員長の言葉だが、案外これが本書の真意を端的に伝えているのではないか。急いで付け加えるが、ここに旧態然たる談合体質と政策不在の野合だけを読み取るのは早計だ。政治とは日々の妥協であり、合意形成のプロセスである。55年体制と呼ばれた自民党の一党支配がかくも長く続いたのは、この妥協を重ねながら丁寧に合意形成していく柔軟性があったからだ。対する民主党はあくまで政策理念に拘り合意形成プロセスを軽視した。ここに失敗の最大の原因がある。
自民党は通念に反して、大企業や農家だけでなく時代のニーズを敏感に感じ取り、都市住民や貧困層にも政策ウィングを広げ、実に広範な階層の利害に応えてきた。包括政党と呼ばれた所以である。党内野党としての派閥の存在がそれを促した面もある。こう考えると政策では距離が大きいかに見える公明党との連立は、実は自民党にとってデメリットよりメリットの方が大きい。極端な右寄り政策にはブレーキがかかり、社会的弱者への目配せも怠らない。かつての党内野党としての派閥が果たした役割を公明党が担ったとも言えるわけだ。与党多数派の自民党は少数派公明党を最大限の譲歩と信頼関係で包摂している。これが自公政権の強みであり安定の秘訣である。
小沢一郎が主導した政治改革は基本的には二大政党制を前提に政権選択を志向するものだった。だが小沢を含め日本のマニフェスト選挙信奉者には、英国の二大政党制に対する大きな誤解があるのではないか。あまりに対決イメージで捉え過ぎているのだ。英国の保守党にせよ労働党にせよ、実は政策は大きく違わない。政権を担うために必要となる多数派を形成するプロセスの中で、譲歩と妥協を積み重ね、粘り強く合意形成していくが、その結果、政策は自ずと中道寄りに収斂する。理念先行で「風」頼みの民主党にはこのプロセスがない。このプロセスこそ実は英国型民主主義の肝なのだ。有権者がマニフェストを選ぶというのは、あくまでその表層に過ぎない。
自公連立は小選挙区比例代表並立制に実にうまく適合したフォーメーションである。地方における自民党、都市部における公明党の固定票が強力な補完関係を作ってもいる。そう簡単にこの提携関係は揺らがない。となると野党勢力が有力な対抗軸を作れるかだが、当面望み薄だ。唯一あり得るとすれば、共産党が安全保障政策を見直し、政権政党として野党連合に合流することだろう。その上で政党間の地道で泥臭い合意形成が不可欠だ。険しい道のりであることは間違いない。本書は野党各党に対し、政党政治の根本に立ち返った戦略の見直しを迫るものだが、ある意味では強力なエールでもある。本当に政権を狙うつもりなら、安易なポピュリズムとは決別し、本書のメッセージを真摯に受け止めるべきだろう。