紙の本
美しすぎるのも考えものだ
2011/05/30 13:10
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:koo± - この投稿者のレビュー一覧を見る
最近お気に入りの今邑さん。無駄のないスピーディーな文体と巧みなストーリーテリングで長・短問わず良質な作品を提供してくれる。本来、相反するはずのホラーとミステリの要素が程よくブレンドされ、そこにピリリとしたサスペンスのスパイスが。そして女流作家特有のきめ細やかなのどごしと舌触りも食欲をそそる・・・って何の話だ!? 残念ながら最近は筆を絶っているみたいだが、是非とも復活してほしいと切に願う。
中でも本格色の強い本作。所謂「館もの」。このテのは往々にしてアクが強くて当たり外れが激しいのだが・・・いやはや、これほど完成度の高い館って珍しいんじゃないかな? あらゆる面で読み応え抜群。特に見立ての意味に感服。登場人物が多く、相関関係キチンと把握できるかなあ・・・と杞憂したが、物覚えの悪い僕の頭に無理なく入ってこれたのは、彼女の筆力のなせる業だろう。
しいて難癖つければ、あまりにも綺麗に纏まり過ぎて、館もの特有の破天荒さに欠けるところが難。美しすぎるのも考えものだ・・・と言ってしまえば贅沢な悩みか。あと冒頭の「序章という名の終章」。ネットでは評判よいが、個人的には蛇足に感じる。
ともあれ低い知名度に圧倒的なクオリティ。まさに隠れた名作。
紙の本
15ページで終わる300ページの本
2001/02/21 19:25
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投稿者:竹井庭水 - この投稿者のレビュー一覧を見る
過去に6人の男女が“七匹の子ヤギ”に見立てられ殺された舘「金雀枝荘」。事件当時窓は釘打ちされ、屋敷そのものが完全な密室状態。全員が殺し合ったという真相に納得がいかない関係者が一同に会したが、そこでまた惨劇が…というのが主な筋。一見、普通のお屋敷もののフーダニットだけども驚きのメインはそこにおかれてないんです。
中盤で密室の謎があっさり解決しちゃうんです。ありゃ?と思いつつそこから惨劇のサスペンスが盛り上がってきてそこから一気にラストまで。驚きどころはここ。動機とその裏に流れる犯人側の悲劇が秀逸。動機もさることながら、殺人に至るまでに生じた誤解の多さ。材料はあちこち散りばめられてるんで、よーく読んどかないといけないところ。
これだけのお話し、書く人が書けば超大作になりそうだけど、文庫で300ページそこそこの厚さ。無駄に長い作品になってしまうよりも、コンパクトにまとまってて良いと思います。冒頭の“序章という名の終章”の役目もよし。これぞ正統派本格推理。
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読みやすいし面白い。一年前の謎の大量殺人事件に加えて現在のサスペンスフルな展開。どんでん返しも決まってるし犯人も意外といえば意外。「七人の小山羊」の見立ては魅力的だけどそこまでする必要はあったのかな?まあ理由は分からんでもないけど。
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(2008-07)
初めて読んだ今邑彩作品。
とても読みやすかった。2時間ほどで読了。
『序章が物語のはじめであると同時に終わりでもあるというネバーエンディングストーリー』
はて?っと思い読み始め、読了後に序章を読み返して、納得。
時間のかかる本の合間にもってこいって感じ。おもしろかったです。
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封印された洋館で起こった6人の死。すごーーーーく面白かった。もう読み終えないでは、眠れない! で、寝不足です(笑) 人はいっぱい死ぬのは嫌いなんだけど、これはあまり無理を感じなかった。トリックも違和感なかった。今邑彩は、雰囲気とかが好きで読んでたのだけど、今回はいわゆる「本格派」でした。…霊感を持つ女性の存在は、どうしても必要だったのか、ちょっと疑問が残る。
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今邑彩氏の(作品で読んだ)中では一番好きな作品(だった)。
読後感がよいというのと、今邑氏がよく使うオカルト部分がわりとスムーズにつながっている(とってつけてない)ような気がしたため(※初読当時)。(でも、オカルトについてはもっと上手くいっている作品があった気がするが)
今回再読して、ちょっと最後の種明かしあたりでの、中里の「エリザベートの云々」はちょっととってつけた風だなあと思い返したりして。初めて読んだ時はそうは思わなかったんだよ!
つか、最後犯人が死ぬところがちょっと盛り上がりに欠けるよねえ…あと、理由。エリザベートのせいにしてるけど…中里にいわれてもなあと思ってしまう。類が言った方がまだわかるなあ。
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金雀枝の花が満開に咲くころ、1年に1度、かれらがこの館を訪れる。また、あの季節が廻って来た…。完璧に封印された館で発見された、不条理キワマル6人の死。過去にも多くの命を奪った「呪われた館」で繰り広げられる新たな惨劇、そして戦慄の真相とは。(紹介文参照)
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古本屋で購入した1冊。装丁から古めかしくて、本格的な匂いが漂っている作品だなぁと思う。
初め、登場人物が多そうで覚えられるか不安だったが、過去の記述と現在と未来で分けられているので、すんなりと頭に入ってきた。そこが本当にすごいと思う。
今回は全然犯人が分からず(というかどういうストーリー展開になるかも分からず/苦笑)流れに任せるまま読んだが、そこは今邑さん、きちんと2転3転してくれて満足だった!
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おもしろかった!
いわゆる断絶された別荘もの。
使い古されたネタだけど、その扱い方があっさりしていながらおもしろい。
こねくりまわしすぎて、わけわからん状態になっている本も多いだけに、わかりやすさが気持ちいいです。
いかにもな、本格風の登場人物とか、序章という名の終章とか、いい感じですねー。
今邑彩のイメージが変わりました。
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うーむ、これぞ本格!って感じですな。
犯人はかなり早い段階から分かってしまったが、そのバックボーンまでは読めなかった!なんか、金田一少年にありがちな話だが、面白かった。
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館もののミステリーはお腹いっぱいの気があったが、これはかなりの良作だった!かなり奇怪な事件なうえ事件は数度起こり、しかも登場人物が三代にわたる家系からなるという多さだったが、トリックといい話の展開といい、理解し易く読み応えも抜群。エンディングでのエリザベートの霊云々の話は少し安易な気がしたが、冒頭の「序章という名の終章」を読み返すと気持ちよく落ち着く。
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登場人物の数が多い点を除くと、
館もののミステリーとしてはすっきりした印象の作品。
物足りなさのようなものと裏表ではあると思うけど
複雑なトリックや館の込み入った構造で勝負というより
館の雰囲気を楽しみながらスラスラと読める軽さが魅力。
序章が終章になっている作りはすごく綺麗にハマっていて
それがなんだか強く印象に残った。
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普通に面白い。
ただ、本格ミステリーのトリックとしては若干の物足りなさを感じざるを得ない。また、犯人は予想は出来るかもしれないが、論理的に断定することは難しい。別に、そのことが問題になるわけではないが、フーダニットではないことを意味している。いや、ま、それが駄目とかそんな話じゃないんだけど。
現在では出尽くしている感のある孤島密室物として、バランスが取れていて面白いことは間違いない。文章も軟らかで読みやすく、最後まで一気に読ませられる。
ただ、既にパターン化されている安定感からは抜け出せておらず、良くも悪くも上手すぎる作品になっている。
(ミステリ好きで)読んで損した。と思う人はほとんどいないと思うが、刺激を求めている人にとっては若干の物足りなさを感じるのでは。などと余計なことを考えた。
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いわゆる「館モノ」。館の名前の読み方のむつかしさは,全「館モノ」の中でもトップクラスだろう。「えにしだ」と読む。
完璧に封印された館で,グリム童話の「狼と七匹の子やぎ」に見立て,6人を殺害するという事件が起こる。金雀枝荘では,70年近い前に使用人の無理心中事件も起こっており,完璧に封印された館での殺害は,その呪いのようにも思われた。
金雀枝荘は,実業家の「田宮弥三郎」が建てた館である。ドイツからエリザベートという娘を妻に迎えたが,わずか二年しか一緒には住まなかった。
大量殺人事件が起こってから1年後のクリスマスに,生き残った田宮乙彦,松田杏那,松田類,鈴木冬摩の四人の田宮弥三郎のひ孫と,冬摩が連れてきた笠原美江という「霊が見える」という女性,そして謎の男「中里辰夫」の5人が事件に巻き込まれる。
真相は,中里と乙彦は知り合いで,中里は乙彦から呼ばれて金雀枝荘にやってきた,乙彦の兄だった。乙彦と中里は,金雀枝荘で管理人をし,心中をした瀬川直吉という使用人の孫であった。弥三郎は,エリザベートが不倫をし,子どもを産んだので,乙彦以外の孫は自分の血を引いていないと思っていた。弥三郎は,自分の子どもを瀬川直吉に託したという過去があり,瀬川の子孫こそ自分の血を引くものと考え,瀬川子孫である瀬川栄吉の子を養子として引き取った。それが乙彦だった。弥三郎は,乙彦に全ての財産を引き継がせたいと考え,乙彦にほかのひ孫の皆殺しを託す。そして,乙彦が実行犯として殺人を実行した…というストーリー。
人 物描写がやや薄っぺらく,ドラマ性はあまりない。凝ったプロットのミステリで,「新本格」としてひとくくりにされそうな話。及第点ではあるが,傑作というほどではない。エリザベートという霊的な存在を絡めているので,綾辻幸人の人形館の殺人に近い肌触りである。★3かな。