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十字軍物語 第一巻
2021/09/08 10:45
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投稿者:渡り鳥 - この投稿者のレビュー一覧を見る
世の中にありそうでなさそうな十字軍の本だったので塩野七生著のこの本を読んだ。まずは、第一巻を読んだ感想。面白い。カノッサの屈辱の話を始め中世の歴史の名シーンが続々と。皇帝がローマ法王に破門を解くために大雪の日に土下座して許しを乞うシーンが目に焼きつていたカノッサの屈辱だが、後日談として、皇帝の大逆襲が。皇帝が法王を虐め、結局、十字軍の遠因の一つになっており興味深い。反目し合ったキリスト教社会が小異をすて、キリスト世界に浸食の激しいイスラム世界を駆逐して聖地エルサレムを奪回しようとの大きな宗教的運動。
世界史で著名な有名人からこの物語で初めて知る人物が星の数の如くいて、結構、複雑に絡みあって、大変面白い。第一巻は、十字軍結成にいたる歴史的な背景から、十字軍の派遣、第一次十字軍の成功まで。余程の歴史好きでも恐らく8割以上は初めて聞く人物の多数が登場。名前も似たり寄ったりで、先を進むうちに『こいつは誰や』との事で数ページ前に戻る。登場人物が頭の中で整理できるまでは、読み続けるのが結構、シンドイ!
ただ、多数いる英雄やショーモナイ輩が織りなす物語が結構、面白い。例えば、ここに出てくるビザンツ帝国のオレクシオス皇帝。オレクシオス皇帝がイスラムの脅威に耐えきれなく、キリスト勢にHelpをして十字軍が始まるが、このオレクシオス皇帝がショーモナイ!こんな奴が現代にいれば、間違いなく友達になりたくたい。凄いヤツとショーモナイ奴が入り乱れての戦乱記。
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キリスト教の西欧が、イスラムの地になっている聖地イェルサレムを奪還する第一回十字軍の過程が書かれています。これから始まる十字軍の物語の第一回。そのヨーロッパ側の主要人物を中心に物語は書かれています。戦争の連続の中で、それぞれの思惑を、魅力的な人物像と相待って、非常に面白く読ませていただきました。
宗教を掲げてはいるものの、欲や名誉といった一筋縄ではいかない人間の性があるも、共通の目的の元、着実にイェルサレムを目指し、最後にはたどり着く。そしてそのあとどうなったのか。どうなっていくのか。これからの物語が楽しみです。
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第一次十字軍の制覇行。無謀な宗教戦争なようにみえるが、迎え撃つ側の問題で成功してしまう。聖地がいかに一神教には大事なのか、多神教側からは実感しにくいものである。
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歴史の教科書ではちゃちゃっと終わる十字軍にこんな背景やこんな戦いがあったなんて!
戦争は権力争いやら領土争いやらなにやらで起こるのが常。
宗教はなんだか利用されて気の毒。
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名前は知ってるがこれまでほとんど内容を知らなかった十字軍。自分の中でまた新たな知識が追加される喜びを感じる。第一巻は最初の十字軍について。ボエモンドやタンクレディが魅力的!しかし宗教が第一義になると逆に寛容でなくなり、実利的な人間ほど結果的に寛容な対処を行なっている事が多いのが興味深い…
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十字軍がどのようにして成りどのようにイェルサレムを奪還していくかの物語を塩野七生氏の人物を中心にして紡ぐスタンスで描かれる。
この書は十字軍がエルサレムを奪還し、十字軍国家を形成するまでが描かれる。
書くというよりは描かれるというような感覚になるのは塩野七生氏の人物を中心にして感性から入って理屈に繋げていくスタンスならではなのだろう。
事実の列挙とは正反対に位置する氏の描く歴史物語は、フィクションを読んでいるような心地で歴史を読むことができる非常に稀有な本だ。
物語の当時、
ローマ皇帝と法王の対立は「カノッサの屈辱」という事件をきっかけに、決裂は決定的となる。
そこで法王はローマ皇帝に対抗する策として、ローマ皇帝には持ちたくても持てないもの、「神」を持ち出したのだ。
法王という権威を決定的なものにする為に、「神がそれを望んでおられる」という神の指令をイェルサレム奪還という形にして呼びかけるのだ。
個性豊かな諸侯たちが、イスラム教徒からのイェルサレム奪還を目指して、「巡礼」という名目で、足を引っ張り合いながらも必要な時には団結し奪還し、十字軍国家を形成する。
こうして、
各々の行動を現代に生きる者の目から見てみると、いかに愚行であるか、またいかに聡明であるかがよく見て取れるのだが、その最中にいる人にすれば当事者であるが故に、その行動の良し悪しの判断というのは非常に難しいものがあるだあろう。
判断は歴史がしてくれるという言葉の真意は、
歴史を読んでいることでさらに腑に落ちてくる。
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十字軍とは何だったのか?
なぜ始まったのか?
とても面白かったです。
作者がキリスト教徒では無いので、
中立性があったかと思います。
日本人だからかヨーロッパ寄りでしたが。
それでも、物語としてとても面白い物になってます。
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キリスト教 対 イスラム教の残虐な闘争である十字軍を語ってくれる。
資料が少ないのか、著者の怠慢のか、代表作の「ローマ人の物語」で味わった登場人物に感情移入する感覚は味わえないぐらいあっさりしている。
しかしながら、サラディン、リチャード1世、フリードリヒ2世など高校教科書では試験にでる単語であるが、ピンと来ない英雄達のイメージ作りになる。テンプル騎士団と聖ヨハネ騎士団との違いも。
そして、現代においてもイェルサレムという聖地が、いつでも中東問題の火種となる事をこの物語を通じて理解させてくれる。
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突出した主人公が描かれるのではなく、多くのキャラクターが多彩に生き生き描かれている。その中でもやはり、イェルサレムの初代王になったボードワンの懐の大きさと、若き英雄タンクレディの活躍が目を引く。塩野さんに「チンピラ」「十字軍のチンピラ」と何度も書かれているが、チンピラも成長する、すごい。塩野さんの筆には、ボードワンとタンクレディへの愛があふれている。
殺戮と破壊の嵐ではある。戦争なのだから当たり前なのかもしれないが勝った方のやることが苛烈。
まえがきで著者が投げかけているテーマが気になる。今後読み進めると明らかになっていくのか、ぜひ続きを読む予定。
1.200年続いた十字軍時代で勝ったのはイスラム側であり敗れたのはキリスト教側なのに、なぜその後からは両者の立場は逆転したのか。なぜ最終的な勝者はキリスト教側になったのか。
2.十三世紀当時にはイスラムとキリスト教の間で解決できたいわゆる「パレスティーナ問題」が、なぜ七百年が過ぎた現代のイスラムとユダヤの間では解決できないのか。
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戦争を書くのを避けていては、歴史はかけません。歴史とは、良くも悪くも戦争の歴史なのですから。しかも、西洋史上での十字軍は、これがあったからこそ古い時代が終わり、新しい時代が始まることになるほどに、重要な歴史上の事件なのです。と前書きにあるように、第1巻は第一十字軍の発足までと、イェルサレム解放までの出来事。
最初の十字軍は教皇の呼びかけに応えた7人の諸侯だけで行われたと言うのに、まずは驚いた。また、イスラーム側との認識の相違、つまり、宗教戦争と領土戦争、がかなりあったことも面白かった。
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明日、新しい時代である「令和」を迎えるにあたり、部屋の片隅に読みかけとして置かれていた本を一斉に整理することにしました。恐らく読み終えたら、面白いポイントが多く見つかると思いますが、現在読んでいる本も多くある中で、このような決断を致しました。
星一つとしているのは、私が読了できなかったという目印であり、内容とは関係ないことをお断りしておきます。令和のどこかで再会できることを祈念しつつ、この本を登録させていただきます。
平成31年4月30日(平成大晦日)作成
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・塩谷七生「十字軍物語」(新潮文庫)の巻1、巻2読了、結構時間がかかつた。歴史書ではなく物語、とはいふものの、世界史上の重大な出来事である十字軍をまともに採り上げてゐるのだから歴史書風にならざるをえない。いや、もしかしたらこれは年代記であるのかもしれない。中世頃によくあつた年代記風に十字軍をまとめたものであるのかもしれないと思ふ。考へてみれば私は塩谷七生を読んだことがない。この方、ずいぶん昔からいろいろなものを書いてきた。昔のヨーロッパの歴史と言へば良いのであらうか。そんなものばかりであらう。そこでどんな書き方をしてきたのか知らない。あるいはこの十字軍風であつたのかもしれない。いづれにせよ、これは読み易い書である。巻1が十字軍国家の成立までを、巻2がサラディン登場、再びイスラエルがイスラムの手に落ちるまでを描く。先はまだ長い。巻4まである。十字軍を細かく描いていけばかうなる。見事なものである。
・十字軍といふと私はヴァルター・フォン・デア・フォーゲルヴァイデを思ひ出す。この人はドイツ中世の吟遊詩人、ミンネゼンガーである。晩年は第5次十字軍のレオポルト6世の宮廷に移り、第6次十字軍にも従軍してエルサレムにまで行つたらしい。その時の感動が有名な「パレスチナの歌」になつたといふ。いろいろな演奏があるが、その旋律は一つ、私はこの旋律を忘れられない。今も聴きながら書いてゐる。やはり優れた歌であると思ふ。実際にパレスチナに行つたか どうかは関係ない。これは第5次から第6次にかけての十字軍のこと、第1次はこんなことは言つてはをれなかつた。さすがに苦労したのである。巻1の副題にもなつてゐる「神がそれを望んでおられる」からと聖地イスラエルを目指す。道は長い。現在のフランスやドイツあたりから陸路で行くのである。これだけで時間がかかる。人びとはそれを承知で出かけた。そんな気にさせたのは誰か。「それにしても法王ウルバン二世は、アジテーターとしてもなかなかの巧者だった が、オーガナイザーとしても一級の才能を示すことになる。」(46頁)といふウルバン二世であつた。この法王が1095年、クレルモンの公会議で演説したのである、「東方に住み、絶えずお前たちの助けを求めている『兄弟』の許にかけつけて、この信仰上の同胞に助けの手をさしのべる」(37頁)べきだと。そして、この十字軍に参加する者には完全免罪が与へられる等の決定(46~48頁)もなされた。完全免罪とは、簡単に言ふと、「参加さえすれば天国行きは確 実だ」(46頁)といふことである。これほどありがたいことはない。東方の同胞を助けるべく人びとは十字軍に参加したのである。上は大貴族から、下は貧民十字軍と言はれた人びとまで、実に多くの人びとがゐた。本書でまづおもしろかつたのはフランク人といふ言ひ方であつた。フランス人もドイツ人も、もちろん 西欧の国々の人びとはイスラム教徒からかう呼ばれたといふ。その一方で「ビザンチン帝国の領民であるギリシア人に対しては、『ローマ人』と呼んでいた」 (111頁)といふ。ビザンチン帝国が公式にはローマ帝国を名乗つてゐたからであるらしい。当時は現在で言ふ国はなかつた。もちろんヨーロッパもなかつ た。貴族は政略結婚である。どこの国人と決めやうがない。だから、イスラムの見方は正しい、といふよりさう呼ぶしかなかつたのである。本書には年代記風に 十字軍の歴史が書かれてゐる。それでも必要に応じてこのやうなことが出てくる。十字軍の歴史もおもしろいが、そんなのもおもしろい。そんなわけで、本書は時間はかかつたけれどおもしろい物語、読み物であつた。
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十字軍の始まり
そして第一回十字軍
イスラムと欧米との争いの始まりである
十字軍
世界史では習ったけど
十字軍の遠征は失敗の歴史だとばかり
思ってました
しかし血なまぐさいですな
最初は中々進まなかったけど
中盤から面白く止まらなくなった
さすが、塩野先生❤️
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人間は戦争せざるを得ない生き物みたいなことを誰かが言っていたけど、まさしく人類の歴史から戦争を省くことはできないなと、、
結局、どんな正義や意義を振りかざしても略奪行為や紛れもない犯罪はあったわけで、十字軍といえどもただの人間同士の戦争だったのだなと思った。
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だいぶ前に、先に『絵で見る十字軍物語』を読んでいたが、改めて『十字軍物語』の方も読んでみた。
十字軍とビザンティンとイスラムの三つ巴の闘いが、人間味の溢れる塩野七生の描写で生々しく目に浮かんでくる。