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投稿者:エムチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
週刊少年マガジンの読者対象にしてはシブイ分野だなあというのが最初の感想でした。それに、水墨画ってこんなに短期でうまくなって才能発揮できるものなのかなぁー。なんか、上手く行き過ぎ感はありますけど
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筆や墨に憧れるものの、どうも苦手にしている。それでも書についてはたまに作品展などに出かけることもあるし、NHKなどで講座なので技法や精神などを見聞きすることはある。翻って水墨画。寺院や博物館で古典的な軸や襖絵を見ることはあるし、水墨画で描かれた年賀状を目にすることはあるのだが、現在活きている作品として水墨画を意識することはなかった。
自分の心のなかのガラスの部屋から抜け出すことが出来ずにいる青山霜介。アルバイト先の展覧会場で水墨画の巨匠・篠田湖山と出会い、なぜか湖山に気に入られ、その場で内弟子にされてしまう。とんでもなく非現実的な話の展開に戸惑うが、謎は徐々に明かされていく。
湖山の孫娘、篠田千瑛、兄弟子となる西濱湖峰・斉藤湖栖、大学の友人古前・川岸、湖山の盟友藤堂翠山やその孫の茜。そうした人々と触れ合いながら霜介は水墨画に惹かれていく。その過程で読者も何故水墨画?という疑問が解消できていく。
やがて、湖山の描く姿のなかで霜介は自身のガラスの部屋で湖山が描いていることに気づく。命とは変化し続けるこの瞬間のこと。命のあるがままの美しさを見ることが美の祖型を見ることであり、水墨とはこの瞬間のための叡智であり、技法なのだ。自らの命や森羅万象の命そのものに触れようとする想いが絵に換わったもの。それが水墨画だ。
水墨の線が命を、自分の周りの人々をつなぎ、自分自身を描く。そして「誰かの幸福や思いが、窓から差し込む光のように僕の心の中に映り込んでいるからこそ、僕は幸福なのだ」と気づく。読者も物語を読み進める中で自分の幸福を気づくと思う。
作者は、水墨画家とのことだが、小説でも次作も期待したい。
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かつて、野沢尚の『龍時』シリーズを読んだとき、
「文章でこんなにサッカーを、視覚的に表現できるのか」と驚いた。
恩田陸の『蜜蜂と遠雷』を読んだとき、
ピアノ演奏シーンを、ここまで多彩に、豊かに書き綴れるのか、と感動した。
宮下奈都の『羊と鋼の森』や小川洋子の『博士を愛した数式』を読んだときには、
この人の描く美しい日本語をいつまでも読んでいたい、と感じた。
これらの作品と同種の感動を、この作品からも与えてもらった。
墨を摺り、筆をとり、画仙紙に描くという動作と、心の動き。
言葉にできなさそうなことを、ここまで流麗に、言葉で表現できる。
言葉ってすごい。この作者の言葉はすごい。
これまで漫然と眺めるだけだった水墨画を、今すぐ観に行きたくなった。
今年の忘れられない一冊になることは確定。
すぐに映画化されそうな予感。
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「蜜蜂と遠雷」を読んだ時、音楽が聞こえた気がした。同じように絵が見えたような気もしたし、本当の水墨画がとてもみたいと思った。
確実に今までの私の知らなかった世界を見せてくれた。まったく知らなかった水墨画をこんなに魅力的に描き、文章も専門的な事を書きながらも面白かった。
デビュー作が一番その作者の全世界を描いているとしたら、全てを出しきっているのかもしれない。でも、そうでないとしたら、
もっと多くの作品を読んで見たい。
今後が楽しみな作家さんです。
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ラストの菊の描写では、青山くんと一緒に、まるで自分の心と向き合っていくかのような感覚に陥った。
満たされていると感じる時は、自分が幸せだからじゃない、自分の心の窓に周りの人の幸せや笑顔が差し込んでくる時だという表現にはっとした。
私も同じだなぁと。
今の自分を作ってきてくれた全ての人や出来事に自然と感謝の気持ちが湧く。
今生きていようとなかろうと。
確かに繋がりを感じる。
独りではない。
そして今私の周りにあるものたちを、瞬間を、大切にしたいと思った。
二度とは帰ってこない。子どもたちのこの瞬間の笑顔は。
久しぶりの主人公とリンクする没入読書体験でした。これだから読書って素晴らしい。
この没入感をドラマでどこまで表現できるか楽しみ。
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水墨画を題材にした小説。
そもそも水墨画自体をあまり
よくわからないまま読み始めたんですが、
読み進めるにしたがって物語に必要な
水墨画の世界ってのも徐々にわかってくるし
その水墨画を主人公の霜介になぜ湖山先生が
内弟子にしてまでそれを教えたかったのか
次第にわかってくるのですが、それがまたいい。
湖山先生の言う「できることが目的じゃないよ。
やってみることが目的なんだ。」って言葉や
「・・・成功を目指しながら、数々の失敗を
大胆に繰り返すこと。そして学ぶこと。
学ぶことを楽しむこと。
失敗からしか学べないからね。」などなど。
もちろん霜介に言ってる言葉なんですが、
これって仕事や人生等いろんなことに
あてはまるなぁ~なんて思いました。
水墨画なんかまったく知らなかったのに
読んだ後は少し水墨画を見たくなるような
そんなすてきな小説でした。
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「蜜蜂と遠雷」や「羊と鋼の森」では、読んでいて音楽が聴こえた。
この「線は、僕を描く」は、水墨画が見えた。
両親を交通事故で失い、自分の心にひきこもっている霜介を救い出しのは、水墨画と師匠湖山先生。水墨画に魅せられ、命を水墨画で表現していく。
水墨画なんて、今まで意識したことないし、よくわかっていなかったが、主人公の霜介とともに水墨画について知り、面白い世界だなと思った。
たんたんと話は進むようで、心に熱いものを感じる本だった。
追記
作者・砥上裕將さんが現役の水墨画家だと知った。だからあんなに水墨画が見えるような本ができるのか、と思った。
またYouTubeに砥上裕將さんが春蘭と菊を書く動画があった。想像を超えて美しかった。
https://www.youtube.com/watch?v=ZckNTyRH-Fg
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僕は線を描く、そして僕の描いた線が僕を形作る。
何もないところに描かれる一本の線は、僕でありそして僕の世界そのものである。
墨と紙で完成する、白と黒の世界。水墨画というあまりなじみのない世界が、こんなにも豊かで色鮮やかで躍動的であったなんて。
『羊と鋼の森』や『蜜蜂と遠雷』を読んだとき、文字が、言葉が、音を奏でているのを感じたけれど、今回私は、この小説を読みながら、紙の手触り、墨をする音、筆の重さ、解き放たれるにおい、そしてそこにある色、の全てを感じた。
絶望と孤独、17歳が経験するにはあまりにもおおきな悲しみ。生きていることを感じられない青山くんの再生の物語は、私に多くのことを教えてくれた。
一枚の白い紙に描かれる一本の線。そこに映される自分の命。
あぁなんて豊かな世界なんだ。白と黒が無限大の世界を見せてくれる。
読み終わった後、いまここにいる自分の命を感じた。
生きたい。強くそう思った。
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週刊マガジンで漫画が連載されており、小説版も気になり読んでみた。水墨画という黒と白で表現するともすれば単純に思える世界に、登場人物の心を映し出す世界があったことが驚きだ。マンガの方も引き続き読んでいきたい。
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一人の青年が、偶然の出会いをキッカケに生きる意味を見つけ出すまでが静かに、美しく描き出されている。
馴染みの薄い水墨画というテーマだが、その表現は目の前にまるで水墨画の世界が見えるように丁寧に綴られ、引き込まれていく、青春の、ほんの短い期間を描いた素晴らしい作品。
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マガジンの連載がなかなか面白かったところに、原作があるとのことで早速買って読んでみた。主人公が水墨画や周りの人を通して、自分を取り戻していくというのでしょうか、爽やかな読了感も含めてそこそこ一気読みしてしまいました。
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なんて言うか、読んでいる最中から「この本に出会えて良かったなあ」としみじみと感じ入ってしまった。
自分がこの小説を読んでいる間中、ずっとよく分からない感情が心を支配していた。嬉しさや楽しさに似たもので、一番的を射ているのは「感激」だろう。はじめて主人公が水墨画に触れた時の楽しさ、満足のいく絵が描けた時の喜び、師に認めてもらえた時の嬉しさ、そしてクライマックスでの出来事。
大学生である主人公は二年前に両親を事故で亡くし、それ以来、生きる活力を失っていた。そんな時、偶々参加した展覧会の設営アルバイトにて、水墨画の巨匠である篠田湖山に見初められ、半ば強引に内弟子とされる。素人だった主人公が、技法を教わり、水墨画の世界に浸る中で、過去の出来事とも少しずつ向き合っていく。
まずはなんといっても、絵そのものや、絵が描かれる過程を瑞々しく表現する文章力が本当に素晴らしい。
しかしそれだけでなく、ちょっとした人物の感情や、表情の変化を表す言葉遣いや、主人公の内面を描く文章もとても美しい。
そしてストーリーも、「初心者が絵画の大御所にイキナリ認められてその世界に入ってしまう」なんて、ともすればチープなもので終わってしまいそうなのに、全くそんなことはない。本当に面白かった。
ぜひご一読下さい。
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気持ちのいい青春小説だ。友情も恋も、老いも若きも、努力も挫折も、美も醜も、もーてんこもり。にもかかわらず、きちんと整理された繊細な物語になっていて、筆者の構図作りの巧みさを感じる。さすが、芸術家といったところか。
読む人を選ばず、多くの人が楽しめる作品。水墨画、やってみたくなります。
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両親が事故死した大学生の主人公である青山が、バイトで手伝った水墨画の展覧会で才能を見いだされて成長する話。
水墨画に関する表現は作者が水墨画家ということもあり頭に浮かんでくるような素晴らしいものがある。絵画版の「蜜蜂と遠雷」のような感じ。
ただ、青山が四君子の話を水墨画の勉強会で千瑛から説明を受けたのに、植物園でイケメン講師から再度話があったときに知らなかったり、千瑛が美女だったり美少女だったりと粗が見られるところが残念。また、短期間で水墨画の最高賞を獲れるまで成長するとかまあ無茶苦茶。なろう系チート主人公かな?
姉弟子という単語に反応した諸兄らは墨汁を呑むがよい。
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両親を亡くし生きる意欲を失った主人公が、水墨画と出会うことで世界が動いていくという青春小説。
水墨画に関する場面はおもしろく読みましたが、それ以外の部分は主人公にとって都合が良すぎる展開な気がします。順調に進む中スランプに陥いりますが、それも簡単に克服してしまった印象で、後半は少々物足りなく感じました。