紙の本
こんな記録が必要です。
2018/09/07 18:38
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投稿者:飛行白秋男 - この投稿者のレビュー一覧を見る
戦争は、底辺の兵隊がこんなにも酷い状況だということを、広めねばならない。
ゲームじゃないんだよ。
虫歯・水虫 あまり書かれないけれど、とても大切なことでしたね。
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http://catalog.lib.kagoshima-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BB25125277
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先の大戦では日本人犠牲者は310万で、そのうち、約9割は1944年以降に集中している。吉田さんはこの時期に焦点を当てながら、一人一人の兵士のレベルに立って、かれらの日常、死にざまを活写する。本書で特に印象深かったのは、兵士における虫歯の問題である。今のわたしたちには充分歯を手入れする余裕があるが、それでも歯周病や虫歯に苦しめられる人は多い。ましてや戦場においてをやで、多くの兵士が虫歯に苦しんだが、それに対応できる歯科医師は全く足りなかった。また、戦闘で顎をやられた場合の口腔外科の医師も皆無に近かった。これはつまり、一人一人の兵士の日常に関心を払わない日本軍の体質であった。さらに、ときおり軍を扱ったドラマに出てくるが、精神を病んだものをどうするかも深刻な問題であった。最初のうち、かれらは兵役を猶予されたが、後半になるにつれ、こうした人々も動員され、そしてかれらは適応できず、より病状を悪化させたり自殺するのである。戦争では日露戦争以来、戦闘死より、戦病死の方が意外と多いという結果が出ているが、今度の戦争では、それがより顕著である。病気を煩ったもの、負傷したものが薬物で処理されたり、自決に追い込まれたすることは聞いていたが、、それらも戦死として扱われたことが多かったそうである。内務班における古参兵によるリンチのひどさは有名だが、それによって死においやられたものも、病死として処理されることがあったという。天皇の赤子をなぜかくもむざむざ死に追いやるのか。兵士の士気を高めるためヒロポンを打つということもけっこうあったようだ。このヒロポンはぼくの小さいときもよく耳にした。博ちゃんというともだちがいて、ヒロポン中毒とかいってからかったのを覚えているほどだ。本書の最後は戦後もこの中毒で苦しめられた人たち、なにより南のマラリアに罹患し、何十年も苦しめられた人々の話が出てくる。簡単に戦争だという人たちは、この本を読んで戦争、それに借り出された兵士の悲惨さを知るがよい。
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政治史や外交史ではない、日中戦争~太平洋戦争含めた時代の日本軍兵士に光を当てた作品。
兵士の身体・装備・衛生といった観点から述べている。
当時の日本軍の問題として、①短期決戦思考②作戦至上主義③精神性、の3つが上げられている。特に②の作戦至上主義は、兵站という概念が全くなく、それ故に現地調達になっていた点を浮き彫りにしている。他の著者の本も見てみたいが、現地調達(=略奪行為)がもたらした被害は幾何だっただろうか…
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ここ20年くらい前から日本近代史学界では「兵士の視点・体験」からの戦争史・軍事史研究が盛んだが、本書は1941~45年のアジア・太平洋戦争に焦点を絞った、そうした研究動向の現時点におけるコンパクトなダイジェストといえる。餓死、自殺、他殺、薬物中毒、精神疾患、感染症、私的制裁、略奪、人肉食といった極限状況における日本軍兵士の「死と病理」を生々しい記録・証言によって明らかにしている。単に兵士の悲惨な実情を示すのみならず、その構造的原因を経済・文化的背景を含めて分析することで、立体的な歴史像を構築している。注意するべきは、いわゆる「後知恵」的な批判・裁断は極力行わず、批判するにしても同時代人の軍人・軍関係者の直接の言葉をもって行っていることで、「当時の感覚」としても問題が意識化されていたことがわかるような叙述になっていることであろう。近年の根拠のない「日本軍礼賛」「日本人自画自賛」風潮への批判意識は明瞭だが、そうした先入観なく「事実」をありのままに知らしめるための工夫といえる。
なお個人的には、本書で示される日本軍の構造・特質がどうしても現在の日本企業と重なって仕方なかったことを付言しておく。過労死・過労自殺が恒常化している劣悪な職場環境や、「自己責任」の名の下で次々と弱者に抑圧が移譲される状況、作戦至上主義ならぬ成果至上主義による人間性の荒廃、問題を根本的に改めず精神主義的な対応に終始する国家の対応など、あまりにも相似している。改めて「戦前と戦後の連続性」を深刻に捉える必要を感じた。
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日中戦争・太平洋戦争を通じて、現場に近い日本軍の戦中史。
「戦略レベルの戦史業書」と「戦術・個人レベルの戦場体験記」の隙間を埋める作品。
例えば、戦地で歯医者がいない、覚醒ヒロポンの多用、必要不可欠な装備の劣化、アメリカへの過小評価、軍記・組織の乱れ、陸海軍の不統一 、機械化の遅れ=人力や根性で補う等を例に富み、帰還した現場の管理職達の証言や出版物をまとめている。
個人の戦争体験記を、まとめただけという印象があり、物足りなさを感じる。
しかし、時系列で一定の体系化されており、理解しやすい工夫がされている。
また、敵であり戦勝国のアメリカと異なり、日本側の戦死者の記録が、遺族への気遣いや仲間意識により、後世の研究材料にならない杜撰な統計記録であった事は、初見であり収穫であった。改めて、日本人の弱さを考えさせてくれる。
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自分の担当教官が書いた本。読まねば読まねばと思いながらずっと読めてなかったけど、この度の先生の最終講義前には、と思いこのタイミングで読了。
内容は「戦場のリアル」をソースを明確にしながら書き出したもので、これが先生の真髄なのだろう。飢餓や精神病にとどまらず、虫歯や水虫にまで徹底的に言及されており、凄惨の一言に尽きる。戦争の話になるとどうしても当時の政治家やエリートの話に焦点が当てられがちだけど、これが大半の国民にとってのリアルであったはず。国力のない国が戦争をするというのは、こういうことなのだというのがよくわかる。
戦争のことを学ぶ際には、必ず勧めたい本。新書大賞に選ばれるのも納得。後書きにもあったように、当時の日本に対する過度な礼賛は慎まねばならないと強く思いました。
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戦後生まれの著者が戦史をテーマにし、資料や証言をもとに丹念に日本軍の実態を読者に提示する。平易な文章で、データをふんだんに提示しながら戦地の様子を浮かび上がらせる。そして、これまで読んだ「失敗の本質―日本軍の組織論的研究 (中公文庫)」による大局的な戦略分析本と小松真一の「 虜人日記 (ちくま学芸文庫) 」や山本七平の「下級将校の見た帝国陸軍 (文春文庫)」という戦地の生々しい体験談本とあわさって、日本帝国軍とはどういったものだったのか、あの戦争はどういうものだったか、私の脳にはっきりと、強く、深く、刻まれた。
山本の「日本はなぜ敗れるのか―敗因21ヵ条」で取り上げている項目とも重なることも多いが、本書では、これまで読んだ本では見えなかった「虫歯治療」「背嚢」「軍靴」「飯盒」といった軍務を継続する上での対応の杜撰さも浮き彫りにされており、軍隊の実態はが如何に悲惨なものであったかががわかる。「死ぬことこそが栄誉である」という精神論を振りかざし、兵隊を死地に追い込むやり方で戦争を戦おうとしたやり方は塁塁とした屍の山を築くだけだったことがわかる。
日本人として、読むべき一冊だ。
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悲惨な話が多くて重たい。読むのに時間がかかってしまった。
ロジスティックを全く考えないで進んだ悲惨な状況を早い段階で止めることができない空気感は辛い。
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日中戦争・太平洋戦争という近代総力戦において、過剰な精神主義、補給・平坦の不備、無謀な作戦、工業力の不足、機械化の遅れなどを原因として、日本軍は負けるべくして負、その中で膨大な戦死者、戦病死者、海没者、軍属・民間人の死者を出した。その中には、撤退時に収容できなかった負傷者への自決の強要や殺害といった理不尽な死も多く含まれている。こうしてみると、戦前の日本軍兵士は、いかに悲惨な境遇にあったかが見えてくる。本書は、兵士の置かれた環境・境遇といった観点から、近代戦遂行能力が決定的に不足していた旧軍の状況をあぶりだす。装備や補給の不足といった事実はこれまでも耳にしてきたが、例えば、歯科医の不足、戦争神経症への不対処、覚醒剤の使用といった兵士のケアへの軍部の不感症といった近代戦遂行能力の欠如がよく分かった。
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兵士の個人レベルの死を、史料に即して分析し、淡々と連ねることから浮かび上がる、日本の壷毒社会の構造的な欠陥。好戦・反戦ではなく「なぜ多くの日本人が、日本人が運営する軍隊を毛嫌いするのか、日本人が運営する軍隊の再来をいやがるのか」の理由に迫っているのではないかと思われる。好著。
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日本軍がどのように戦ったのかを資料を交え、数値で解説。そこに浮かぶものは効果の薄い、兵站の弱い、負けるべくして負けた、日本軍の姿です。
日本軍、とひとくくりにしてしまうと見えてきませんが、この本のタイトルのとおり、一人一人の兵士がどのような戦いを強いられたか、その姿を浮き彫りにします。
たら、れば、は禁物ですが、冷静に数字を追い、分析すれば戦況の逆転は難しかったはず。
戦死者が終戦直前に集中していること、いわゆる戦死ではなく、移動途中の海上死や病死が多いことからもそれがわかる。
膨大な資料を読み解き、再構成した労作。
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日本軍の実態を戦略的・戦術的ではなくあくまで兵士という人間的観点で分析した本。とは言っても、結局は名著「失敗の本質」で取り上げられた日本軍の敗因の焼き直しを兵士の側面から描いたというもの。まあ、日本軍の本質的な敗因は人間という限りありそして最も大事なリソースを最も低く見ていたということに尽きるので、戦略的・戦術的に見ても兵士側から見ても同じことが言えるのだろう。日本人の体型は変わってきているので、第二次大戦時とは肉体的に違うようだが、精神的には今も何も変わっていないようで、空恐ろしくなる。
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失敗の本質のような細かい戦術分析はないけれど、戦局ごとの戦艦保有数や死者数など、わかりやすかった。すごいぞニッポン言う前に、1944年以降の犠牲者が90%以上を占めたこの狂った日本の過去を知るべき!!
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高率の餓死、戦場での自殺・「処分」、劣悪化する補充兵…。勇猛と語られる日本兵が、体験せざるをえなかった凄惨な戦争の実態とは