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江戸末期から明治にかけての短編歴史小説集。
「春雪の門」 愛した人と刃を交えることになった姉妹のお話。
「玉かんざし」 不世出の剣士、島田虎之助の最期。
「夜叉と名君」 薩摩の名君、島津斉彬の夜叉の顔とは。
「冬の花」 長府藩に殺害された中山忠光と下関の豪商・白石正一郎との縁とは。
「青梅」 高杉晋作をとりまく正妻・雅子、おうの、望東尼について。
「春雨の笛」 福岡脱藩、平野国臣と白石正一郎について。
「歳月の鏡」 明治末年まで店を構えていた京屋と幕末の剣客・野々村勘九郎のつながりとは?
この中の「夜叉と名君」は薩摩のお話。古川さんの薩摩モノは初めて読みましたのでちょっと驚きました。
薩摩藩の財政改革をやりとげた調所広郷の腹心であった海老原雍斎が、明治になって島津斉彬とお由羅騒動について語るといった内容。
「だれしも二つの顔を持つもの、見る位置によって、菩薩にも夜叉にもなる」
というセリフがでてきますが、歴史についてもそのままがいえると思いました。
四方から客観的に歴史をみようとする著者の姿勢の表れのような言葉でした。
「冬の花」は『暗殺の森』と対を成す作品。そういえば忠光卿は白石邸にも滞在していたのでした。