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図書館でこの本のタイトルを見て、「え、ボブ・ディランのノーベル賞のスピーチって、1冊の本になるくらい素晴らしいものだったの!?」と驚いて、思わず借りてきた。
式典には欠席し、スピーチの代わりにメッセージが読まれたことは知っていたが、そんなにすごい内容だったとは誰からも聞いたことなったから。
そして、読む前に、まずは当日のメッセージが代読される場面をYouTubeで見た。
しかし、スピーチの内容自体はきわめて平凡で、おそらく私がボブ・ディランから代筆を頼まれてもおおむねこんな内容になるんじゃないかという、ごく普通のものだったので、そのあと読もうとしているこの本に対してちょっと嫌な予感がした。
予感は当たった。
めちゃくちゃ薄味のツッコミどころ満載の本だった。
おそらく、普段、英文など読まない人が、そこらへんを歩いているアメリカ人をつかまえて適当に質問して教えてもらったことと、インターネッツで調べたことと、辞書で見つけたことを適当に組み合わせて書いたのだろう、と思われる内容だった。
しかし、読み終わった後、著者の経歴を見て、驚愕した。
大学教授!? 元NHK英語教育番組講師!?
じゃあ、普段から英文は読んでいるだろうに・・・。なんなんだ、このしょーもない解説は・・・と謎が深まった。
「for にはいろんな意味がある。forの意味をざっくりと把握しておくだけで、スピーディに、そして正確に英文を読めるようになる」
いやいやいや、forを把握するだけじゃそれは無理であろう・・・・
「such as 以下は、どんなに長くなろうとも、具体例をすべて列挙しないといけないのである」
いやいやいや・・・・んなわけなかろう・・・
そんなこと言われたら、もう気軽に such as 使えないじゃん。
「文頭のWellは、ディランは俺様テイストを薄めるために入れている」
いやいやいや・・・・げほっ(意表をついた解説に、思わずむせる・・・)
「ノーベル賞の受賞スピーチで、なぜこれほどまでにディランはシェイクスピアを自分とパラレルに論じているのだろうか。おそらく、アンチディラン(つまりディランがノーベル賞をもらうことを快く思っていない人たち)の声を封じ込めるためであろう」
いやいやいや・・・まあ、そう思うのは勝手だが・・・
普通に考えて、そんな理由だとしたら、シェイクスピアとパラレルに論じる時点で地球が燃え上がるくらい更なる反感を買うことになると思うんだけどな・・・
彼がシェイクスピアを持ち出したのは、自分と同じく、文学作品として優れているか、などということは、作品を生み出す時にはこれっぽっちも彼の頭になかった、シェイクスピアの作品が演じることを前提とされていたように、僕の作品は歌われることが前提だしね、ということを言いたかったのだと思うのですけどね。
まあ、おもしろトンデモ本として読むのはアリだと思います!
ボブ・ディランのメッセージの中で、今では文学の金字塔となっているシェイクスピア作品だが、書いた本人は文学から程遠いことに頭を悩ませていたであろう、ということについて述べているあたりで、「たとえば役者を誰にしよう、とか、ハムレットはほんとにデンマークが舞台でいいのか?とかね」というあたりを代読の方が読み上げたとき、この、「デンマークが舞台でいいのか?」のところで会場からかなり笑いが起きていたのが、私には意味不明だった。
もちろんハムレットはデンマークの史実をヒントにした話だからだけど、それだけでそんなに笑えるかな? この部分。
何か私の知らない裏知識があるのでは?とこの本にその解説を期待したが、もちろんそんなことは一切書かれていなかった。(この本の著者に期待する方が間違っていると思うが)
もし分かる方がいらっしゃったら教えてください・・・・それとも、言っていることがそのまんまで単純におもしろかったのかしら・・・