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待ちに待った「64」以来の横山先生の小説。今までとは少し違った系統かなと感じましたが、警察物ではなく横山先生の新たな世界を感じられた気がします。
内容としては、建築関係の話が主であり今まで、そういった知識がなかったので新鮮に感じました。タウト作の作品をネットで調べながら読み進めていく事をお勧めします。
「自分が住みたい家を建てて下さい」この言葉の意味、自身の生い立ち、家庭問題、建築士としての仕事、全てが絡み合って素晴らしいストーリーになっています。後半になるにつれて真相に迫っていく感じ、主人公の仕事への熱量は今までの作品と同じく一旦読み出すと止まらなくなってしまう怒涛の展開は秀逸です。
また、「ノースライト」という題名がとても綺麗で好きになりました。
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横山さんの作品はほとんど読んでますが、やっぱり面白い。
謎が謎すぎて始めは?な感じでしたけど、途中からグイグイ引き込まれて一気に読みました。建築や芸術の知識もセンスも皆無だけど、頭の中で映像が広がる。映像化してほしい。
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いや、もう面白いの面白くないのってめちゃくちゃ面白いですよ、さすがとしか言いようのない。
完全なる正三角形(完全じゃない正三角形があるのかどうか知らないけど)のミステリ。
謎解きも面白さも、ストーリーも、そして美しさも兼ね備えた最高の一冊。そう、美しいんだよね、美しいミステリ。
そして建築に関して詳しくなっちゃうおまけつき。
これはもう売れる気しかしない。
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前作『64』も約7年ぶりの新作長編だった。今回は約6年ぶり。初出時期は2004年~2006年となっている。全面改稿の上、刊行に至ったが、どういう経緯があったのか。
警察小説を中心に執筆してきた横山さんだが、本作はかなり毛色が異なると言える。主人公の青瀬の職業は、一級建築士。かつてはバブルを謳歌したが、現在は小規模な設計事務所に籍を置いている。そんな青瀬が久々に情熱を注いで完成させた、Y邸。
ところが、そのY邸に、依頼人一家が住んでいないらしいと知った。代金は支払い済で、実害はないが、割り切れない青瀬。現地を訪ねると、確かに住んでおらず、1つの椅子があるだけ。依頼人一家はどこに消えたのか? それが本作のメインの謎である。
もちろん青瀬には本来の業務もあり、謎だけ追っているわけにはいかない。建築士としての日常を描きつつ、彼の生い立ちや、バブル期から現在に至る人間関係、別れた家族との関係などが、徐々に明らかになっていく。家庭人としては挫折した青瀬。だからこそ、Y邸に情熱を注いだのか。家への家族への渇望を駆り立てられたのか。
謎に迫る鍵となるのが、Y邸に残された椅子。作中に出てきたブルーノ・タウトという建築家は、実在の人物である。本来の目的を隠し、タウトを取材する記者に同行する青瀬だったが、タウトが残した仕事に感銘を受け、圧倒される様子が伝わってくる。ナチス体制下のドイツから日本に来たというタウト。そんな時代でなければよかったのに。
一方、青瀬の事務所は大きなコンペに向けて動いていたが、問題が発生する。公共施設だけに、色々な勢力が蠢く。雇用主に対して複雑な感情を抱いていた青瀬だったが、建築士として後世に残る仕事をしたい気持ちはわかる。タウトに触れてきただけに。彼の行動を、笑う人間は笑うだろう。実際、読者の僕は苦笑した。しかし、その姿は眩しくもあった。
終盤に至り、いよいよ謎が明かされると、そんなところが伏線になっていたのかと驚かされる。再起の物語であり、家族の物語であり、様々な読み方ができるが、根底にはミステリーの精神が貫かれていた。過去に発表した数々の警察小説と同じく。
もしかして筆を折ったのかと思っていたので、こうして手に取れたことを嬉しく思う。待つのは慣れている。ご自身のペースで、納得できる作品を書いてほしい。青瀬のように。
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最後に希望を持って読み終えることができるミステリー。淡々とした主人公が最後に情熱的になる姿はグッとくるものがあった。
ドキドキして読み進めるのが苦しかった64に比べると静かに読み終えた。
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現在、設計に携わる多くの人が、建築家という肩書に憧れ、夢を持って社会に旅立ち、気がついたら食べていくためにと、生業にしてしまっている方々が何人いるのだろうか?
夢を諦めず今でもギリギリのとこで足掻いている自称建築家の心の葛藤が浮彫になってます。
業界の人必読です。
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ラストまで全く飽きさせない展開。
本当に面白かった。
映像化はぜひNHKかWOWOWでお願いしたい。
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今年のベスト1は、もうこれで決まりかな、と思われるほどの手ごたえのある力作である。
『陰の季節』で松本清張賞を獲得しデビューした横山秀夫は、その後も手堅く印象深い短編小説を連ねてミステリ界を賑わせる。短編であれ、長編であれ、映像化される作品も多く、確実に彼の一時代を築け上げた感がある。単発短編から連作短編へ。さらに多作ではないにせよ印象的な長編作家への緩やかな脱皮をも遂げてきたがその後静かなブレイクを経て6年前に『64』ではダガー賞候補にまで名を連ねる快挙を遂げる。まさに国産ミステリ界の至宝と言っていい。
そして忘れた頃になってこの新作。そしてまたも快挙の予感。歳を重ねるにつれ円熟味を増す文体、素材、深み、そして、美しさ。読み始めは、エンターテインメントというより何か懐かしい素敵な純文学を読んでいるかのようなノスタルジーが心に蘇る。一行一行の、否、一語一語の言葉の扱いの丁寧さ、行間への気配り。それ以前に積み重ねられてゆく言葉と世界への静謐なる導入部。これは横山長編の個性としか言いようがない何かであると思わせる期待。
主人公は一級建築士。バブル後の離婚、孤独、失われた職への誇り。渡りの過去。ダム工事現場の職人であった父に従って全国を落ち着くことなく渡り歩き山間の飯場暮らしの中で育てられた過去。古い記憶。
提示される謎は、消えた一家。
発注者の望み通り全力を傾倒し仕上げ、しかも『平成すまい200選』に選ばれ世間にも高く評価された建築物である信濃追分の家には、誰も済まず、一脚の木の椅子だけが置かれていた。椅子からはドイツ亡命者であるブルーノ・タウトという建築士の姿が浮かび上がる。巻末資料として列挙されている関連書籍の量からして、著者の心が相当にタウトに集中したのは作中でも重心となって見られるほどである。日本の軍国化が進む頃、日本古来の文化の消滅に危機を唱え、少なからず救いの手を差し伸べようと指導を試みたこの異国人の姿は、本作の建築士の物語に、相当な厚みを加えているように思われる。
さて様々な謎が深まる中、主人公の所属する建築事務所では、ある美術館のコンペティションという現在が熾火の如く発熱してゆく。パリで亡くなった地元女性美術家の記念館を市の予算で建立する企画に、競合各社、市議会内での争い、マスコミの取材合戦が絡んで炎は膨れ上がる。メインストーリーの静かな謎の上に、現在と過去とが重なり、多くの社会的・家族的・親子的・恋愛的葛藤がさらに積み上げられてゆく。重層構造。
スタートとなった謎そのものは、本質に近づいたり遠のいたり。個性豊かな登場人物たちとの距離感も、時に熱く、時に素っ気なく、危うく、儚く、移ろいやすく。そうしたデリカシーと重厚さのすべてを捉えるべく、著者のペンの力は全巻を通して、凄まじく圧倒的、かつ美しい。
良い小説とは起承転結が明確だ、と改めて思う。振り返ってみれば、書かれたものに無駄は一つもなかった。すべてがすべてに関連付けられるものであった。まいった。謎解きにではなく、人間たちの綾なす偶然。偶然が産み出す、罪と、贖いに。そして何よりも愛に。父���妻、子、そして友への。
心を揺すられるミステリ。数年に一度の傑作である。
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性格描写、セリフ、著者の作品中最高の出来で間違いなく、重厚な語り口に本物を感じた。
が、プロットの中心というか、何故建築家自身が住みたくなるような住処の建築を依頼したか、が非常に弱い感じがして移入できなかった。その点だけが非常に残念。
文章は秀逸で教科書に載せたいぐらいの出来。
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今回はめずらしく警察モノではないです。とある建築士が主人公です。
その建築士が思わぬ依頼を受け、建てた家の物語です。
横山秀夫さんというとどうしても警察モノが頭をよぎりますが、なかなかどうして今回の作品も感動を与えてくれます。
もう読むのが止められないくらいにおもしろくて気付いたら7時間!ぶっ続けで読んで読破していました。
おすすめの一冊です。
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前作「64」から6年。
待ちに待った長編新作。
でも新作と言いながら、初出は2004年なので、時代背景は少し古く、ちょっと違和感が否めない。
ただ社会派で知られる作家が、今作は建築を巡る話で、日本の建築や工芸に大きな影響を与えたと言われるブルーノ・タウトの話を軸に、バブル期に美味しい思いをした建築士たちの物語。
バブルが弾けて、行き場のなくした主人公・青瀬たちが奇妙な依頼で手掛けた「Y邸」を中心に、大切な何かを見つけていく物語。バリバリの社会派のイメージが強いので、これまでの作品からすると、少し色合いが違うが、多くの困難を乗り越えて、自分たちの最高傑作を仲間の為に作ろうとしていく岡嶋設計事務所の様子は心を打つ。
物語の中盤は、後ろ向きな内容や悲しい事柄が続くが、読み終えた時には、はっきり光の道筋が見えるような作品だった。
唯一、希望を言えば、純粋に新作が読みたい…
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2019年25冊目。著者久しぶりの新作。今までの作品に比べると、謎や全体のスケールは小さめ。身近な謎だからこそ、些細なことでも気になってしまう。その理由付けがしっかりなされているから、主人公の熱意に心が動かされる。小さな組織だからこその葛藤があり、一つにまとまったときの一体感は凄まじい。ラストシーンのその後に訪れるであろう光景の眩しさに目が眩む。
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本屋大賞にノミネートされていたので、どんな話か下知識なく読んだら建築好きにはたまらない内容だった。設計に懸ける思いの描写を、同じ気持ちになれるよう共感・想像しながら丁寧に読んだ。さらに家族の話や顧客の謎や家具やタウトの話が幾重にも重なっていく。近年読んだ中で一番響いた本かも。
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建築のことなど専門的なことは分からないが、それがミステリーになるなんて意外だけどすごいなぁ。
それと同時に仕事に打ち込む男たちの物語としても感動した。
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一級建築士の青瀬が設計した、信濃追分のY邸。
訳あってY邸を再び訪れますが、無人で、引っ越した様子もありません。
無人の家には何もありませんでしたが、ただ一つ、古ぼけたタウトの椅子が、浅間山を望むように置かれていました。
Y邸でいったい何が起きたのか、謎は深まります。
一見関係なさそうなストーリーが伏線となっており、最後の最後に伏線が見事につながります。
親子や夫婦の関係、仕事、コンペ、バブルなど、さまざまな要素がつながった時、大きな謎が解けていきます。
一気読みしました。
さすがです。