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著者お得意の専門職が主役のハードボイルドであり、読ませる。長そうだがあっという間に読み終わる。お仕事小説として、胸が熱くなるシーンが2つほどあったが、これがミステリーかというと…? 直感的な評価だけど、このミスよりは直木賞向きという感じ。連載は2004年頃とのことで、東日本大震災が反映されていないなど、やや寝かせすぎでしょうか?
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建築士の青瀬はバブル崩壊後に燻っていたところを、大学同期の岡嶋がやっている小さな建築事務所に拾われ働いている。淡々と仕事をこなしていたが、ある時吉野という一家から、「あなたが住みたいと思う家を建ててほしい」との注文を受け、北からの再考を主とする斬新な家を設計し、住まい200選にも選出された。しかし、どうやら吉野一家は引き渡し後もそこには住んでおらず、元の家からも姿を消している。ノースライトの家の2階、一番見晴らしの良い部屋の窓際に、タウトの椅子を一脚残して…
青瀬は吉野一家失踪の謎を追求していくが、別れた妻子や、岡嶋との人間関係、地元美術館設計のコンペなどが絡み、なかなか読みごたえがあった。
建築や家具の造形など、全くの門外漢であり、初めは取っ付き辛かったが、どんどん引き込まれていった。この著者も色々な引出しを持っているなぁと感心させられた。
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「ノースライト」
横山ミステリー史上、最も美しい謎。
“「64」から六年。平成最後を飾る長編、遂に登場”という触れ込み。往々にして出版社が打つこの手の戦略は頭の片隅に置く程度が良い。が、今回はこの触れ込みは正しい。美しい謎も適切に思える。ミステリーではあるものの、愛する人に遺す想い、父や家族への想い、自らの生き様への想い等、遺す・宿す熱量を感じた。
ミステリーの観点からすれば、何故Y邸から家族は消えたのか?何故タウトの椅子が置かれていたのか?が二大トピックである。この二つの特大な謎は、張られた伏線の回収と共に見事に解決される。また、青瀬が所属する岡嶋設計事務所が取ってきたコンペに絡む謎は、きな臭い雰囲気を出しながらも、青瀬の再生に大きな影響を与える。
とは言え、やはり一番の推しは、前述の熱量だと思う。強い負荷をかけられた主人公の青瀬の葛藤が物語を牽引するが、その青瀬の対父、対岡嶋(社長)、対Y邸、対家族への想いの熱量が、更に物語を加速させている。読んでいて感情移入は必死のキャラクターである。
また、青瀬とは犬猿の面もある岡嶋にも注目だ。コンペに絡む謎は、事務所を巻き込む大騒動になる。そんな中、岡嶋は抱えてきた葛藤にピリオドをつけ、メモワールのデッサンに全てを注ぎ込む。青瀬と並び、重要なキャラクターだ。
溢れるばかりの熱量が湧き出るのは、メモワールのプレコンペに挑むところだろう。遺すだけでなく、想いを紡ぐ意思の下、青瀬を始めとする事務所のメンバーの頑張りには、拍手しかない。
最後にタウトであるが、こんな風に関わってくるとは思ってなかった。めちゃくちゃ重要である。建築とは、ただの住む場所ではなく人生の様々な面を象徴とするものであり、同時にタウトの意思がしっかりと生きている。それが、ミステリーと青瀬達キャラクターに密接に絡んでいる。
個人的には、2019年一番おすすめになると思う。
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連載から10年以上たって単行本化された。きっと職人のようにかなりの改稿や、推敲をへたのだろう。横山秀夫の作品は出たら必ず読んできた。警察小説と違って今回は建築士が主人公。中盤までタウトのうんちくなどで、読み進めるスピードが落ち、何度か本を置こうとした。しかし、中盤以降の物語の展開は、今までのは何だったのだというくらいに勢いづく。ラストは感動だ。64のように推進力をたもった作品ではないが、とても味わいある作品だったと思う。今までの横山作品とは違う芸術性があふれている。後半のメモワールをデザインするシーンは、これでもかというくらいリアリティがあった。あのシーンは適当にお茶をにごしてしまいがちだと思うが、著者はそれではいかんと思ったのだろう。ちなみになぜか、私の脳内で描いた主人公の青瀬のビジュアルは、著者そのものだった。
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青瀬の設計したノースライトの優しい光に包まれたブルーノ・タウトのものらしい椅子から、ブルーノ・タウトの足跡を追い始め、美しさに目を向けていくと同時に青瀬の心の内が静かに語られていく。
時折、鳥の姿や声が登場するが、鳥は、渡り(青瀬の子ども時代)や巣作り(家作り)、子育て(カッコウの托卵、子育ても)を象徴しているだろうか。
ノースライトの家が家族の再生に繋がる予感に最後胸を熱くして読み終えた。
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美しい、、、なるほどでした。
戦中の出来事を絡めた建築にまつわるミステリー。
長編にも関わらず、読み進めるうちに次に次にとはやる気持ちを押さえながらも読むスピードが下がらず、途中、何度も戻っては読み、戻っては読みを繰り返してしまいました。読了するのがいやでした。
久しぶりに感じた読了したあとの惜しさとストーリーへの満足感。
期待を裏切らない安心感がありました。
積読の横山さんの本、早く読まないと。
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「あなたが住みたいと思う家を建ててください」
前半ははっきりしない主人公の言動に
イライラさせられたが
張り巡らされていた伏線、
後半にかけては畳みかけるような疾走感を感じた。
形に残るものを生業とする芸術家は
自分以外の誰かの承認によって成り立つ。
自らの足元を強固なものにするために
日常を犠牲にすることも
検討する必要があるのだろう。
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最近遠ざかっていたミステリーも横山作品となれば、読まないと。
消息を絶った一家を探し、一つの椅子から建築家の孤独な捜査が始まる。
絡み合う人間模様、交錯する思い、重層的に人物たちを描くひっちはやはりすごい。
差し込むノースライトは、事件の行く先と、その後の人物たちの道行きを静かに照らすようだ。
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夢破れた建築家の明と暗。
夫婦の意見の食い違いから終の棲家を立てられず、離婚した建築家の青瀬は、クライアントの吉野陶太から、「あなた自身が住みたい家を建ててください」と言われ、信濃追分にY邸を建てた。
そのY邸は、平成たてもの二○○選にも選ばれ、青瀬の代表建築に。
しかしY邸に吉野の姿はなく、吉野を探し始める青瀬。
誰も住んでいないY邸には、ブルーノ・タウト作であろう椅子が残されており、タウトを頼りに吉野を追う。
追跡した先に、タウトと青瀬の父の死と関係する吉野の償いの結末が。
建築描写と吉野と青瀬の苦悩が丁寧に描かれている。
地味だが、奥深い味わいの読後感。
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序盤は最後まで読めるか不安だったが、終盤は読む手が止まらないほど一気に読めた。
専門的な内容が多い、人物像が頭に描きにくい、と言う点で私がついていけない時があった。
裏切られた結末でもなければ、伏線回収もキーパーソンってほどでもなかった。
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想像してたミステリーとは全く違った極上のミステリー。謎だけじゃなく、家族の物語だったり、歴史だったりと、とにかく最高!すごい好きだわ。
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久々の横山先生降臨で発売日当日に即買いしました。小説ではそんなことしたのグインサーガ以来数十年ぶりでした。大体本が分厚いとぐったりしますが、持った重さすら愛おしい。ほっぺすりすりするくらいテンションマックスになりました。
全く予備知識無しで読んだので途中から刑事とか出てくるんではないかと思っていましたが、今回は伝統の刑事物から離れて、設計士業界を舞台に色々な人間関係が入り乱れておりますが、そこはさすが御大。軽薄になる事無く人間ドラマを積み重ねでいます。致し方無い事なのですが、重厚さと引き換えにリーダビリティーが落ちる事がありますが、昔から横山作品は重厚な上に手が止まらず読み続けられるのが不思議。本作もまた重厚さと読みやすさが共存しています。
えー、苦言というほどではないのですが、前作64でも感じておりましたが、横山作品は下調べ、取材を相当して隙がないのですが、その取材を生かした部分が少々冗長に感じる部分がありました。結局人間を書くのが異常に上手い人なので、感情のまま書いても名作を書けるはずなので、出来ればもう少し早めの次回作を期待したいです。
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今回のお話は刑事ものではない。一つの謎がゆるゆると物語の歯車を回していく。しかし、とても濃厚で胸を熱くさせる作品だった。
私の中で、横山先生と言えば「64」が印象深い=濃厚な刑事ものなのですが、今回は建築士さんが主人公です。物語自体にあまり大きな起伏はないものの、登場人物に巻き起こる出来事の濃さが半端ありません。じわじわとツラさが染み込んでくきます。しかし、そんな中から人々の手助けもあり、立ち上がってくる姿は読みごたえがありました(^-^)
人の想いを汲み取り建物を作る。想いは受け継がれ、きっと先へも繋がっていくのでしょう。
結末がまた、タイトル通り。優しい北の光に包まれるような温かい気持ちになりました。ぜひこの読後感を味わって欲しいです(*´ェ`*)
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美しいミステリーとあった気がするけど、私には少し難しい男のロマンだった。
主人公の父親が命を落とした時から全てが繋がっていたとはなぁ。
「タウト」のうんちく話が長く、建築に疎い私には少し退屈な描写が続いた。
きっとその手の職業の人には面白い内容なんだろうなぁ。
事務所の所長でありライバルでもあった人が、あんな展開になるとは…。
後半から一気に加速して全部読み終えた。
家主がいなくなった自身最高傑作の家は主人公が買い取ることになり、これから我が家の再建を目指すようなラストだったけど、うまくいくといいなぁ。
建築関係の才能があったら世の中の建物の見方が変わったりして、面白そう。
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横山秀夫さんの最新作ということで大きな期待を持って読み始めたのだけれど、ずっとつかみどころのない話が続くことと、主人公の青瀬稔が好きになれなかったことから、少し期待外れな感じがしてしまった。でも最後、それまでのモヤモヤが晴れるような展開は流石だなと思った。