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横丁レッドデータブック。首都圏だけでも人生横丁、百軒店、彦左小路、丸三横丁、今川小路、神田小路、四十五番街、五間堀長屋、呑んべ横丁、下北沢駅前食品市場、大井新地、三原橋地下街、さくら新道、リバーサイドおでん屋台街、花月園競輪場・川崎競輪場…知っている横丁、知らなかった横丁、消えたこと知らなかった横丁、著者とカメラマンの肝臓で記録した横丁の墓碑銘です。しかし、そのどれも戦後に生まれたひとときの幻なのかもしれません。最近、強く思うのは日本の社会は戦中派が消えて「戦争を知らない子供たち」だけになった時にきっと大きく変わるんだろうな…ということ。たぶんどんなに幼い時でも戦争を知っている世代が日本の平和を支えてきたのだろうと感じています。たぶん本書に登場するようなお店の女将は、そんな世代なのではないか?「もはや戦後ではない」という経済白書は1956年のもの。しかし、戦後の残滓は戦中派の心の中だけでなく、闇市の派生である横丁飲み屋街に刻み込まれ続けたのだと思います。令和になって昭和がふたつ前の時代になり、戦争を知っている世代がどんどん召され、そして横丁の飲み屋も誰も受け継ぐことがなされずどんどん消えていく。東京が、日本中が焼夷弾を受け焼け野原になった証拠がすっかり消えてしまっている、そんなことはなかったような戦後復興の風化が、もしかしてTOKYO2020なのかも知れない、となんか焦った気持ちになりました。