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海鳥を獲りに絶海の孤島に渡ったものの、約束の期日が来ても迎えが来ずに島に取り残された9人の少年たちと大人3人のサバイバルストーリー。極限の状況で生きてゆくために必要なもの、食糧・水、火、雨露をしのぐもの、暖を取るもの、であるということははいうまでもないけれど、人間の精神を健やかに保つためのは物語や想像力がいかに大事かということを改めて実感した(宗教は一歩間違えると危うい方向に行ってしまうことが描かれてる)
それにしても島の人が迎えに来られなかった理由が...悲しい。しかも実話が元らしいし
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少年9人、大人の男3人が、住んでいる島の近く(と言っても泳いで渡れるほど近くはない)の切り立った岩でできている小さな島に降り立つ。夏の間に営巣のために飛んでくる海鳥を獲るために。肉は乾燥させて干し肉に、羽は布団や冬の衣服の詰め物に、胃に溜まった油は薬や燃料になる。全く資源のない島では、確実に稼げる唯一の仕事である。船で送られ、3週間もすれば迎えが来るはずだった。
ところが、いつまで経っても船が来ない。焦り、不安、恐怖が押し寄せ、普段の生活では隠れていた11人の本性が顕になっていく。
こういう展開だと『蝿の王』を真っ先に思い浮かべるが、マコックランは人間の獣性を描くのを目的とはしない。(閉鎖的空間でのドロドロの人間関係を読みたい人には物足りないか?)児童文学の作家としての矜恃を感じさせる。とはいえ、かなりダークな部分も容赦なく描いていて、展開に目が離せない。
島の寺男が、他の大人が精神的肉体的に力を失った途端、自ら「牧師」を名乗り、少年たちを支配しようとするところは、(しかしこの男は文盲で、聖書を読んだこともない。知的に劣っていることは年長の少年たちには見透かされている。)すさまじく面白い。住んでいた島では牧師にこき使われ、島民から軽んじられていても受け入れていたように見えていた男の野望が、どのような結末を辿るのかという部分は、物語の読みどころである。
しかし、そこだけに注力せず、登場人物、とりわけ少年たち一人一人の性格をきちんと書き分け、岩だらけで鳥しかいない島でのサバイバルを描ききっている。
極限状態において物語が果たす役割についても雄弁に語り、作家の思いが伝わってくる。
2度目のカーネギー賞受賞作だが、前回の『不思議を売る男』より、ずっと作家としての力を感じた。読み出したら止められず、読み終わっても深い余韻を残す名作。
東京創元社は児童文学というより、海外文学として売りたい感じだが、それも納得、児童文学と言われなければ気づかないくらい、大人の鑑賞にも堪える物語である。
『嘘の木』に続き、いい作品を世に出したなと思う。
なぜ迎えの船が来なかったのか、という読者としては一番の気がかりも、知って、あぁ‥‥となる。
凄まじい数の海鳥の羽ばたきと鳴き声が今も聞こえるようだ。
本当に読書の愉しみを味わうことができた。
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無人島に置き去りにされた少年の物語。
少年の頃読んだ十五少年漂流記を思い出しながら読んだ。
印象に残った文章
⒈ 生きる目的は、神のことを考えるのみ
⒉ クイリアムはカラムを「音楽の番人」に任命した。
⒊ 世界が終わっても、音楽と愛だけは生き残る
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フィクションとファンタジー的な世界観を
兼ね備えた過酷だが、子供達の無垢な魂と
世界の果てでの岩山での過酷なサバイバル。
冷たい青い海と海鳥達が飛び交う冷たい空気感が
こちらにまで伝わってくる。
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孤島に取り残された9人の少年と3人の大人.迎えの来ない9ヶ月を乗り切って帰った時に待っていた悲劇.閉ざされた世界の中で起きるさまざまな困難を乗り越えるのに物語る力の偉大さを見る.彼らが生きていたのは奇跡のようだ.
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海鳥を捕獲するために少年たちは無人島へ向かった。ところが約束の日を過ぎても迎えはやってこない。彼らは過酷な環境の中で必死に生き残ろうとする。友情が育みながらも、危うい信仰が生まれ、不和を呼ぶ軋轢、絶望の色が強くなりつつも、明日を生き残るために今日を必死に生き残る――
孤島でのサバイバルが描かれた少年たちの冒険譚として正統派な作りで、少年たちの個性も豊かに、生々しく描かれています。世界は終わったのだと思いながらも、迎えを待ちつづけ、親しい人に思いを馳せる。現実が厳しいからこそ、目の前にないいとしい人や過去の物語が暖かくてたまらず、すがらずにいられない。一つ一つの細やかなエピソードが積もるたびに、真摯な少年たちの思いが切々と伝わってきました。
その上、ラストにひとつ大きな「真実」が描かれて、くるりと世界が明らかになる意外性を持たせ、物語として綺麗に収束していて巧いなと感じました。
驚いたのが実在の事件をもとにしたフィクションだということ。ただ事件の仔細は分からないので、描かれていることはほぼほぼ創造だといいます。ただもしかしたら、彼らが取り残されている間に感じた祈りや遠くの人への想いは、それほど遠くないのではないかと思ったりしました。それくらい、真に迫ったものを感じたのでした。
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スコットランドのヒルタ島から岩でできた無人島に向かった9人の少年と3人の大人。海鳥猟のため3週間留まるのだ。しかし期日が来ても迎えがこない。この岩の孤島に取り残された少年たちと生き延びるため、年長の少年クイリアムは物語を語り、役目を与え、仕事を続けた。しかし、大人の一人寺男のケインが自分は牧師だと言って少年たちを支配し始めると、みんなの関係性が崩れだし‥。
実話を元にしながら、生き生きとした人物描写でぐいぐい引き込まれる物語。極限状態のサバイバル生活の一方で、「何故迎えの船が来ないのか」という謎が彼らに重くのしかかる。衝撃の結末ながら、希望を描くラストはさすがマコックラン。2度目のカーネギー賞受賞作。
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スコットランドの北にあるセント・ギルダ諸島。厳しい自然の中で暮らすヒルタ島の人たちには、年に一度少年たちが海鳥の島・戦士の岩へ渡り、3週間越冬のために必要な海鳥を捕まえる通過儀礼がある。クイリアムは、その年8人の少年たちと、3人の大人と共に戦士の岩へ渡った。初日、カツオドリのリーダーを捕獲し、その年の戦士の岩でのリーダー・カツオドリの王になった。捕獲は順調にみえたが、3週間を過ぎても迎えの船がやってこない。ヒルタ島で、何が起きたのか。このまま、この島で冬を迎えるのか。年長のクイリアムは、仲間たちを励まし生き延びようとするが…。
頼りにならない大人たち。厳しい冬に向かって起きる亀裂。危機的な状況を乗り越え、救いの船がやってくる。
身勝手な大人がいたり、実は女の子だった仲間がいたり、何度も襲ってくる困難。帰還したシヒルタ島では、天然痘がはやり、島民のほとんどが亡くなっていたのだ。
史実に基づくフィックションだという。単なる冒険物語、サバイバルものとは少し違う、人間の本性を見せつけられるような話だった。
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極限状態に追いつめられたときの人間のこわさやあさましさって、今、直接ではないにせよメディアを通じて毎日突きつけられているので、そっち方面へどんどん突っこんでいったら読み切れるかなという不安があったけれど、どこか、踏みとどまる力のようなものがあって、ぐいぐい引きつけられた。物語の力や想像力は、何もなくても人間の糧になるかもしれないし、同時に思いもよらぬ形で心にダメージを与えることもある。その両方がきちんと描かれている。
『蠅の王』は、ずーっと積ん読していて、苦手なのがわかっているから読めない(笑)。なので、思い出していたのは『青いイルカの島』。あちらは完全にひとりになってしまうから、ある意味さらに過酷なところもあるけど、人間同士のわずらわしさはない(ひきこもり系?)。そして、どちらもが実話に基づいているというところが驚き。人間ってすごい。(でも自分だったら真っ先に死にそう(笑))
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毎夏恒例の鳥猟のため、1~3週間の予定で、「戦士の岩」と呼ばれる孤島に3人の大人と9人の少年たちが上陸した。猟のはじめにカツオドリの見張りの鳥を捕まえて「カツオドリの王」の称号を手に入れたクイリアムは、本土からヒルタ島を訪れている3歳年上の女性マーディナに恋していたが、彼がヒルタに戻る頃には、彼女はそこを去っているはずで、二度と会えないだろうことを憂い、想像の中で彼女と会話していた。
毎日朝から晩まで働いて3週間が経ったものの迎えの船は来ない。少年たちは今までと同様に漁を続けて迎えを待ったが、ある日信心深い少年ユアンが天井に頭をぶつけた際に、みんなは天国の審判を受けに上がっていったから来られない、僕らだけ取り残されたと言い出し、パニックになる。クイリアムはとっさに、そのうち天使たちが迎えに来るから、それまで無事にいないといけないと皆をなだめる。
1727年に実際にこの地で起きた史実を基に書かれた、孤島に取り残された12人のサバイバル物語。
*******お詫びm(_ _)m*******
先に登録したレビューが、うっかりKindle版だったため、恐縮ながら同じものをここに投稿することをお許しください。
*******ここからはネタバレ*******
息の詰まるような閉塞感と過酷な状況で、読み進むのが困難でした。
彼らが普段生活するヒルタ島には木がなく、教会が強い力を持っていることから舞台となっているのはなかり前の時代ではないかと推察していましたが、後半になってやっと「1728年」という年代が出てきましたね。江戸時代です。
この時代のスコットランドの西の果ての島の生活を想像するのは容易ではないでしょう。
加えて、物語の中に救いが少ない。大抵は困難の後に一時の安らぎが入るのもなのに、この物語ではそれがほとんどなく、どんどん追い詰められていきます。
迎えが遅れるとわかった時点から、獲れる鳥は減り、気候はどんどん厳しくなり、働き手の体は怪我や病気に、精神は閉塞感と絶望感に蝕まれていく……。
おまけにすべてが明らかになるのは9ヶ月後に予期せぬ迎えが来てからで、しかも、待っているはずの家族は、本当にもう天国に上がっていたという事実。
主人公のクイリアムこそは、想い人が生きていて結ばれたから良かったのかも知れませんが、物語全体としては、児童書にしては酷ではありませんか?
サバイバーたちは、経験から何を得たのでしょう?フィクションだからこそ、ここのあたりにもう少し明るくなれる要素が欲しかった。
史実を基にしたから仕方ないかも知れませんが、私には、これは大人向けの読み物のような気がするのです。
しかし、カーネギー賞を得たこの作品が、伝染病を機とした悲劇を描いたものだったとは。
少し収まってきたとはいえ、コロナ禍の下で読むと、大変さがより強く伝わってくるように思います。
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無人島モノなのかもしれませんが事実とあとがきで知り驚きました。事実は小説よりも、、作者の創造が多分に入っているのでしょうが当時の島に住む人々の考え方がこうであったのだろうなぁと、感じさせられる内容でとても面白かった。
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カーネギー賞受賞作。
スコットランドの沖合に浮かぶセント・ギルダ諸島でおきた実話をもとに書かれた物語。
夏の間に、岩場でできた離れ小島に海鳥を撮りに来た9人の少年と3人の大人。冬のためのたくわえをあつめたものの、迎えの船が来ず、9か月をその岩の上で過ごすことになります。
極限状態の中でのサバイバルと、そこでの彼らの心理描写は圧巻です。
ただ、全体を通して天候・登場人物の心理描写共に「暗い」作品でしたし、1727年という時代背景や、キリスト教的な死生観と相まって、「読みづらい」と感じる部分があったようにも感じます。
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大昔のお話なのに
生きるって・・・ねえ
一つまみの事を
これだけ広げられるって凄い
面白かった!!
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訳が硬いのかな、読みにくかった。
確かに史実をもとに仕上げたフィクションだそうだから、そう思って読むとおもしろい。
時代とか場所の背景を考えるとこういう事になるのかと。
もう少し読みやすいとよかった。
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スコットランドの西側のセント・キルダ諸島。現在では無人島になっているが、その中のヒルタ島に暮らす少年9人と大人の男3人が、夏に船で離れ岩まで渡り、生計を立てるための海鳥を捕獲するのだ。この作品はフィクションだが、1727年に実際に起きた史実をもとにしているということにとても驚いた。しかし当時の記録はほとんど残っていないということで、作者であるジェラルディン・マコックランの想像力で事実を包み込み、全く素晴らしいリアリティを感じさせる作品になっている。
過酷な岩場での、9か月間の彼らの生活を、ゆっくりと読み進めていった。とても苦しいものであったが、それ故に大切に味わいたいと思ったのだ。生きていくにはクイリアムのように想像力を使い、夢を見ることが重要なのかもしれない。