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代表作である『森田さんは無口』のように、普通の人間の普通の日常を描くのが巧い佐野先生にしては、ちょっと風変わり、非日常な要素を含んだ作品
そんなイメージがあった分、面白さは強まった気がする
だが、あくまで、私の中の感覚に過ぎないが、普通じゃないのは幽霊であって、同性愛は至って普通だ。友達としての「好き」を装い続ける事が辛くなって、しろのから距離を置いたアイの苦しさに共感できた読み手は多かったんじゃないだろうか。生霊になってまで戻ってきてしまった点も同じだろう
義妹であるアイに本気の求婚をしてしまうほど、愛の形が拗れている怜に許されざる恋心を抱き、やはり、それを隠していた、病的な潔癖家である戸越さんの個性にも、佐野先生らしさが宿っていた
けど、やっぱり、この『うしろの彼女』で凄まじい存在感を放っているのは、萬さんだろう。彼女の底知れなさは本編だけでなく、カバー下を読むと判る
世の中には、歯止めをかけた方がいい「好き」と、自制心を振り切った方が却って良い「好き」があるってコトだな
いきなり、友達から恋人になる事は、男と女でも難しいんだ。同性じゃ、もっと困惑するだろうけど、頭ごなしに拒まず、じっくりと考えてあげて欲しい。嫌悪感が全く湧かないのであれば、もしかすると、あなたの中にも、友達への「好き」じゃないモノがあるかも知れないのだから
この台詞を引用に選んだのは、私にも経験があるから、この自己嫌悪に。でも、苦手な物を前にして怖がる好きな相手が近くにいたら、ちょっとだけ心が弾んじゃうし、頼ってくれるかも、と期待しちゃうのも恋心ゆえだ