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娯楽としては左綴じの本はあまり読まないので、読み始めたときは少し驚いた。
この手の本は、内容は興味深くても読みにくく、なかなか先に進まないことが多いが、本書はくだけた書き方でかなり読みやすい。と言っても、中身の文章は文語体だし、内容もしっかりしている。
前半部分は行動学的な内容が続き、実践的な内容となっている。設問に対する解説の部分も行動学ならではの実験結果を示されていることでわかりやすく納得できるものになっている。
それとは反対に後半部分(後ろの20問前後か)は哲学、倫理学的な内容で難しく、解説に反論したくなるものもある。
私としては、クローン人間の部分では、「生殖(受精卵)時にクローンとなった双子と、片割れが充分に成長してからクローンとなったクローン人間では、同じ土台で議論してはいけない」という視点が抜けている。クローン人間の場合は明瞭に”親”と”子”が区別できる(双子は区別できない)ことが倫理的に問題であるのに、問題のすり替えに感じる。
また、前半の行動学的な内容の設問のチョイスが男性向けであると感じる。「ああ、男が書いたな」という感じを受ける解説もあり、女性は場合によっては不快な内容もあるかもしれない。
とはいえ、総じて面白く、共感・納得もできる内容であり、「人間が論理(理想)的ではない」ことを示すよいものだった。