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「タイくん、だめだよ、だめ。死んだらだめだから。生きて、ふつうにごはんを食べて、友だちとあそんで、そんなくらしをしようよ。そうだ、妖界に行けば、またカザンに会えるよ。カザンも待ってる! おねがいだよ、おねがい……死なないで」
タイはそれには答えませんでした。
ただひとこと。さいごにこういいました。
「それでも、沙李のことはにくめない。なさけないよ。……悠久の玉は、ぼくが死んだら、自然に見つかるよ。どうせもう、ぼくは関係ないんだから、おまえにやるよ。そのかわり、ルナ、悪いが……ぼくが死んだら、カザンをたのむ。あいつは……じつは、顔に似合わず、気のやさしいやつだから……。こんど、生まれてくるときは……もっとカザンとあそび……たい……」
さいごのほうのことばは、きこえませんでした。
しかし、ただ一度、目をあけて、しっかりと見たのです。ルナを。タイの瞳のなかには、たしかにルナが映っていました。