投稿元:
レビューを見る
戦後期を育った主人公忠市の一生をつづったお話。
物語初めはありふれた商家の長男だけど、後半の荒み具合がすごい。
冒頭で書かれる現在の忠市がゴミ屋敷の主なんだから生活が荒れるのは予想できるけど、それでもある時点からの展開・忠市の変わりようが急だったと感じる。
読み終わってもしこりが残る作品だった。話は納得できないけど、当時の生活はさすが緻密に描写されていた。
投稿元:
レビューを見る
一人の男性の人生を通して、時代とは、家族とは、発展とは何かを問うた作品。正直「こんな締めなの?」と思いました。でも、そういうものかも知れません。人生って。
投稿元:
レビューを見る
ゴミ屋敷を軸に高度成長の波が色々な視点で描かれる。
----P192----
その時代、「未来」というものは、やって来る前に思うものではなく、やって来られて初めて理解されるものだった。
--------
投稿元:
レビューを見る
これ、すごい。
明治生まれ、昭和戦前生まれ、高度成長期生まれの、男と女、無骨な人、器用な人、商売人、主婦、子ども、いろいろな人間の描写がすごい。
もし映画にするなら、6時間ぐらいの映画になる(はず)。
橋本治さんの初めて読んだが、ところどころの身体感覚に直接訴えるような描写が重い。読後の余韻の大半が登場人物たちの身体感覚。
投稿元:
レビューを見る
人は、何かを得るために生きるのか。何かを護るために生きるのか。何かを失うために生きるのか。
ひと時、盛んに話題になった「ゴミ屋敷」。その住人はほぼみんな口を揃えて「これはゴミじゃない」という。明らかにゴミとしか言いようのないものでさえ捨てられない、その理由は…
主人公忠市の人生を解くことで、その理由のひとつが見つかる。
彼がゴミを溜めることで護ろうとしたのは、その必要はなくなった、と認められない思いだったのかもしれない。
ラストは悲しいけれど、魂は救われた、とも思う。
投稿元:
レビューを見る
頭に思い浮かんだストーリーを完璧にほんとに完璧に文字に起こしたような小説。
驚いた。まるっきりそこにいるような。
しかし知ってること思ってることをきちんと書くというあくまで"技術"の話。
最初はその綿密さに驚いたけど、終始それ。
小説として、誰が読んでもそれ以上でも以下でもないって感想を持つんじゃないかな。
まぁそういう力欲しいけど。
投稿元:
レビューを見る
分かり合えない存在は確かにいる。それなのに、ぼくは知らないうちに分かり合える大変狭い世界で生きている。まるで分かり合えないものなど存在し得ないというように。
投稿元:
レビューを見る
ゴミ屋敷の住人忠市。戦後の好景気を迎える日本で、まっとうに生きてきたはずなのに、何故ゴミにすがる晩年に落ちぶれたのか。
人間の生き方の難しさを知る。完璧な人生などない。有り得ない。いつ災いが降りかかるか解らない。マニュアルなどない。
最後の眠りに就くとき、自らの魂が安寧の地に向かうことができるのか?少し不安に感じた。
投稿元:
レビューを見る
ゴミ屋敷に暮らす心理に興味を持ち読んだ。
生真面目に生きてきたのに歯車が狂ってゴミ屋敷が出来上がる心理。
男自体は主体的にしたいことがなく、流されて生きた人生で、無意識のうちにSOSを出していたのだと感じた。最後の急展開はハッピーエンドだったのではないかと思う。
芥川龍之介の六の宮の姫君の話が読後に浮かんだ。
投稿元:
レビューを見る
「昔はあんな人じゃなかったよ」
ゴミ屋敷に住む老人の一生。
ゴミ集めが「無意味」な事は判っている。が、その無意味を指摘されたくなかった。
自分が巡るあてもない場所を巡り歩いていた事。 会いたい人に会いたい。 そう思いながらの生涯はとても判る気がする。
投稿元:
レビューを見る
すごく良かった。
人間は物語(意味)の中で初めて生きることができる。
兄と弟が再会するシーン。「兄ちゃん!」。忠市の世界を理解し、共有している者による呼びかけによって、忠市が再びこの世に生きる者となっていく展開には感動で震えた。
締めくくりでの忠市の死。死も生の延長なんやな。
生きるってこういうことなんやろな。その過程を見事に描ききったのではないか。
投稿元:
レビューを見る
戦後の雰囲気で、語られなかったことが実はたくさんある。「3丁目の夕日」のようにいいところばかり語られているが、そうじゃないこともありる。3.11のことも片付いていないまま走っている今を見ているのかもしれない。
自分のしていることが無意味であるかもしれないということをどこかで理解している。しかしそれを認めてしまったら一切が瓦解してしまう。それが抑圧された絶望。
投稿元:
レビューを見る
ハードブック 2009年8月25日発行 \1400円を、読んだ。
初めて読む橋本治氏の本。
どうして、真面目な男が、自宅をゴミ屋敷にしたのか?
戦時 少年時代を過ごし、一家の長男として、荒物屋を継ぐ為に、努力を重ね、結婚もしたのに、幼い子供を死なせてしまい、妻とも、姑問題もあり、離婚してしまって、人生の歯車が、狂ってしまう。
今の時代、若い人たちは、断捨離と言って、不要な物を、家に置かない。
人との、付き合いも、淡白になってしまっている。
昔の人は、家になければ、自分で作ったり、修理したりしていた。
購入する事、自体、物が手に入らなかったのであろう。
「もったいない」と言う精神が、身体の一部にしみこんでいるのである。
そう言いつつも、私も、母親のまねをして、包装紙、紙袋、ビニール袋を、保存していて、先日、整理したばかりである。
昔の本、毎日読む新聞、DM、チラシに、手紙等、ちょっと、置いておくと、紙袋に一杯になってしまう。
まして、この本の主人公の忠市は、ゴミを拾って来る。
溜まる一方。
ゴミ屋敷になるには、心がどうしようもなく折れ曲がる程も、屈折したおもいが、込められている。
何もしたくない気持ちが、片付けると言う作業をやめさせる。
足の踏み場が無くなっても、自分の居場所が、小さくなっても片付けられない。
弟の修次が、ゴミ屋敷の報道で、兄の忠市のところへ駆けつけ、掃除に繰り出す。
片付けたあとは、お遍路さんへ向かうのだが、、、、
兄の死には、少し、哀しすぎるし、もう少し、弟と、過ごす事をさせてやりたかったようにおもう。
でも、もし、長生き出来ても、上手く、この世を過ごせるかどうかも、疑問であるから、作者の終わらせ方が、正しいのかもしれないと、思いながら、本を閉じた。
生きることは、難しい。
長寿大国、日本であるが、自分がどのように、人生を歩めるか?と、思ってしまった。
投稿元:
レビューを見る
最初はゴミ屋敷の主人と近所の住民とのトラブルの話かと思ったら、ゴミ屋敷の一家の歴史が描かれていく。どんな人間にもそれまでに至る当然の過程があるのだが、普段見えない部分を掘り下げて、読者もそのストーリーに引きずり込まれていく。読み終わった後で読む前とは違う自分に気づかされる。
投稿元:
レビューを見る
ゴミ屋敷の設定とタイトルとのバランスに惹かれ思わず手にとった。ボタンのかけ違えの妙。血の繋がりの強さを感じた。そして、衝撃のラスト。生きることは難しい。ドラマになったら、話題になりそうな一冊。