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殺し屋の話なのにこんなにほんわかすることはあるのでしょうか
殺し屋の心情と妻の扱い方を学びたい方におすすめ
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体調を崩していた。
わたしは何ひとつ変わっていないのに、環境(職場の人間関係)の変化が、じりじりとわたしの身体の内側を蝕んでいたのだ。紛れもなくストレスである。
読書のペースが、グっと落ちた。
この、仕事のストレスによって働けなくなった分の補填を会社がしてくれないだろうか、であるとか、なんであいつのせいでこちらが仕事を休まなければならないほどのダメージを食らっているのだろうか、であるとか、色々なことを考えた。
そんなストレスにさらされながら読む殺し屋シリーズ。このタイミングで読むことが身体に優しかったか否かは謎である。
グラスホッパー、マリアビートルに続く殺し屋シリーズ第3弾。
マリアビートルから数年が経過し、あの東北新幹線での事件は伝説として語り継がれていた。そのマリアビートルで暗躍したスズメバチや、グラスホッパーに登場した槿にも、本作品でまた会うことができる。
解説がすごくマニアックで、往年のファンにはたまらない。
しかし、往年のファンであるこのわたしが!気付かなかったこと!
それは、収録作の頭文字を並べると「ABCEF」となることだ。まじかよ!
ここで抜けている「D」。なんと、「Drive」という幻と化した作品があるというではないか…!伊坂氏が他の長編の執筆後、燃え尽き症候群となって「Drive」を最後まで執筆できなくなってしまったという。
ああ!なんということだ!なんと人間らしい!!エモい!エモすぎる!!
「BEE」の終わり方にもやもやしていたけれど、おそらくはその幻の作品「Drive」に、何かしら繋がっているのでは、と思っている。これは古本屋を渡り歩く価値がある。
そんな素晴らしい解説にも描かれているのだけれど、本作品は前2作のシリーズとは異なり、殺し屋の物騒な仕事の方ではなく、あくまで殺し屋の日常の方に、目を向けられている。
恐妻家の殺し屋、兜(かぶと)。
彼には家族がいた。恐妻と息子の克己。
彼はいつも妻に気を遣って生活している。息子にも呆れられるほどに。
それでも、彼には家族が一番大切な存在で、家族を守るためなら危険も厭わない。彼は強い。だって殺し屋だもの。なんだってかかってこいっての!※ただし妻を除く
作品全体で描きたいのは「家族愛」だ。しかし、伊坂幸太郎は、それを正面から描いたり、前面に出して綺麗ごとを並べ立てたりはしない。
前面に出てくるのはあくまでユーモラスな会話と非現実的な現実。時に暴力と死。勧善懲悪。モブキャラの活躍。伏線の回収。
最後まで読んでいくとすべてが家族愛で繋がっている。ラストに訪れる怒涛の伏線回収と急展開とモブキャラの全容がわかったところで、家族愛が一気にあふれ出してくる。こんな風に家族愛を描ける作家は日本に一人しかいない。
この作品でネックになるのは「フェアかどうか」だ。兜は、「フェアである」ことを最も大切にしている。
最近、わたしの身体を蝕んだ環境の変化によるストレスについて考えてみる。
その元となっている嫌いな人がいるのだが、わたしは彼女に、どうしても普通の態度で接せないのだ。
ネットで調べてみた。
「職場 嫌いな人」
すると、出てくる出てくる。
わたしの場合、それが上司でないだけマシなんだろう。
色々調べてみた結果、結局「仕事のこと以外会話しない」「できる限り距離を置く」ことが最善策らしい。
わたしは基本的に、人が困っていると、見守りつつ声をかける。
でも今、嫌いな人には声をかけていない。
だから、好きな同僚の困りごとには対応するけど、嫌いな彼女の困りごとには対応しない、ということが発生している。
これってものすごく、フェアじゃない。アンフェアだ。
同僚は言う、「それでも、自分をストレスから守るためには必要だよ。なんであの人のためにnaonaonao16gがそんな身体ダメにしてるの?おかしいよ」と。同僚からすれば、今のこの状況こそが、アンフェアなのである。なるほど。
たぶん、自分の中にある理想のフェアと現実のアンフェアが乖離しすぎていて、うまく立ち回れないのである。つまり、不器用なのである。
全人類から好かれたいとか、全人類から嫌われたくないとか、そんなことは思ってない。
だけど問題は、人間関係に敏感な子どもたちが、わたしのその、アンフェアを見ているということだ。それから、自分が自分のアンフェアを許せない、ということだ。さらに付け加えると、そもそも嫌いな人がいる、という自分自身を許せない。しかし最後のは仕方がない。嫌いなものは嫌いだ。
嫌いな人も助けて自己犠牲しながらフェアをとるか、嫌いな人のことは助けずアンフェアな自分を許していくか。きっと後者をとった方が楽になるのだろう。どうなんだ、自分にそれができるのか。自分なりの、いい塩梅のフェアを見つけることができるのか。
これからも戦っていこうと思うのである。
えっと…何の話?
この作品は、家族愛に溢れた殺し屋のお話です。
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「グラスホッパー」
「マリアビートル」に続くシリーズの三作目
(順に読まなくても良いが、続けて読むとニヤニヤする箇所が多々あります)
トップクラスの実力を持つ殺し屋ながら恐妻家である「兜」が主人公
「AX」「BEE」を読んだ時点で心を掴まれた。と言うより主人公に共感している…
妻を起こさないよう、帰宅後
"最も静かに食べれるモノとして
「魚肉ソーセージ」を選んだ兜
私は…バナナまでは到達してました。
(まだまだ素人でした…)
そして「BEE」こちらは家の外に蜂が巣を作って兜が対処してますが、私の場合は部屋に一匹迷い込んで来て虫嫌いの嫁が大騒ぎ。
(フィクション意外ではじめて「仕留めろ!」って台詞を音声で聞きました。
むしろこっちの方が殺し屋の妻っぽい)
…読んでて「妻」が登場すると
脂汗が出てくる……
殺し屋との対決シーンより緊迫感があった。
主人公の人柄が、殺し屋なのにほんわか
(前作の天道虫のよう)してて、他の本の様な「殺し屋の凌ぎを削る世界」から
乖離してるなぁ…と思いきや淡々と
普通の生活と隣り合わせで
生き抜かねばならない厳しい世界を描く
他の作家には無い伊坂流「殺し屋の世界」は健在
でも兜は、殺し屋なのに、妙な親近感があるのが良い違和感を出してて、各話を連続して読んでいくうちに、とんでもないサイコパスなヤツなのでは?と、少し怖くなってくる。
(感情の欠落や把握しきれない問題を冷静に捉えられるのに、対処しきれなくて苦悩している様に見えた)
伊坂さん自身が子供も生まれてから
感じた家族の要素を「オー!ファーザー」とは別の形で表現しつつ「殺し屋シリーズ」に融合させてるような印象
奇妙だけど暖かい家族の話でもあった。
(解説にも書いてあって納得)
ムック本か何かで
伊坂幸太郎さんの薦めている本の中に
「妻の帝国」と言う本があったが、そちらからのインスパイアもあったのではないか?と読んでもないのに考えてしまう。
そちらも読んでみようか?
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久しぶりの殺し屋シリーズ、面白すぎる。
というか、伊坂幸太郎さんはいつも面白すぎますが。
よく息子が、食レポをする芸能人を見て、嘘っぽいとよくなじっている。自分なら、美味しければ、美味い、しか言葉が出ないはずだ、と言うのだがその通りだと思う。
それと同じで面白いものは面白い、としかまずは言えない。
今回の話は郷愁にも溢れたが、それでも何か明日へ向かいたくなるラストだった。
次は何を読もうかと考える前に、手元にはシーソーモンスターが
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伊坂本で珍しくウルっときてしまった。
殺し屋とその家族の話。
家族を守るために自分の死すら肯定できることに気付いた主人公に凄く共感を覚えた。
家族という当たり前過ぎて忘れがちだけど、自分より大切なものを教えてくれる。
たまに大学生に戻りたいなーとボヤいてしまうときがあるけど、自分より大事なものがある今の方が幸せじゃないか。
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文章を通して悲壮感はないのに、なぜかグッとくる。
この物語に勝利者は居ないが、敗者もまた見当たらない。
伊坂作品は映像化するとだいたい面白くないのだけど、この物語は、いつか映像で観てみたいものだ。
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文庫を買ってから殺し屋シリーズだと知った。グラスホッパー、最高傑作マリアビートルの続編(厳密には違うが)となれば期待は高まる。殺し屋が恐妻家というのは笑えるが、妻に対する対処法が続くくだりはやや冗長に感じた。マリアビートルのように、主人公兜が手際よく敵を片付ける描写には痺れる。中盤で突然の展開に混乱し、終盤のオチには完全に気づいたものの、伏線を回収したりしなかったりでモヤモヤは残る。解説を読んだらそもそもこれは短編集なのだそうだ。道理で少し流れが引っ掛かる感じがした。エピローグはどう解釈したものか。
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ようやくゆったりした気持ちで休日に読書。
伊坂さんの作品久しぶりだったけど、やっぱり好きだな。殺し屋シリーズで恐妻家ってギャップに興味をそそる。
殺し屋なのにまったく恐ろしさを感じない描写が割と好きで、今回も異常に奥さんの顔色を伺って一生懸命な主人公に和みつつ、まさか中盤であんなことになるなんて。。。
やっぱり、泣かされてしまった。
兜は奥さんに出会って、救われた人生だったんだなって。だから家族を守りたかったんだなって。
なんか最後笑顔になれる家族だなって、いつもそんな家族を見せてもらってある意味幸せを感じる。
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先が知りたい!でも、読み終わりたくない!の葛藤と共に読了。
帯の文言にも惹かれて、本棚に寝かす暇もなくあっという間に取り付かれました。伊坂作品の中でも一番好きな殺し屋シリーズ。
人殺しはするのに、奥さんには弱いし、弱いものイジメは嫌いだし親近感と愛しさしか感じない。それがたまに顔を出すストイックを際立たせる。
こんな優しい殺し屋達なら、現実で殺し屋稼業もアリなんじゃないかと思わせるおそろしさ。
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13
大好きな伊坂幸太郎の、大好きな殺し屋シリーズ。
グラスホッパーもマリアビートルも大好きだから
必然的にこの話も大好き。
のらりくらりと人を殺す殺し屋兜が唯一怖いのが妻っていうのがもーーー好き!
妻に対しての対処法が笑った。それに気付いていない妻。
お友達がいなくなっちゃう話も、お友達に最期を見届けられるのも切ない。
最初読んだときめっちゃコメディだなて思ったけど、
さすが伊坂幸太郎それだけじゃ終わらない。
一番怖いのは母さんだから
この言葉で号泣。
そして最後の出会いの、チラシが大切にしまってあるのも泣いてしまった。
優しさに触れてこなかったからこそ、一度手にしたぬくもりは絶対に失いたくないし色あせさせない。
あまりにも好きすぎて終わって欲しくなくて、
3日間かけて読んだ。
最高の読書体験。
伊坂幸太郎、長生きしてね。
2020.02.27
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伊坂幸太郎さんの本の中でも最も読みやすいと言っても過言ではないほど読みやすかった。とはいえ、まだ2冊くらいしか伊坂幸太郎さんの本は読んだことはないということはご勘弁願おう。とにかくこの本は読んでいて楽しかったそう思えた本でした。
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恐妻家の殺し屋「兜」と、その家族をテーマにした話。
殺し屋という仕事への葛藤、足を洗いたいがそれを許さない「医師」。親子愛、夫婦愛について考えさせられ、切ない気持ちになりました。何か書くとすぐネタバレになりそう。。
この結末をなんと例えればいいか分からないのでとりあえず読んで欲しい。
再読したいんだけど、したくないような、不思議な感情をもちました。
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「グラスホッパー」、「マリアビートル」に続く殺し屋シリーズです。
前二作はいずれも長編で、個性的な殺し屋が多数登場したことで、群像劇的「殺し屋列伝」のような趣でした。
今回は連作短編形式で、前二作同様に、何人かの殺し屋は登場するものの、基本的には一人の殺し屋に焦点を当てて、ストーリーは進行します。
そして、その殺し屋「兜」は妻子がいる家庭持ちというのが、これまでの殺し屋たちとは全く異なり、凄惨な雰囲気の中に(シニカルではない)笑いと涙を添えるのに成功していると思います。
それでですね、いや殺し屋なんやから、表向きどんな風貌や物腰であっても、友達にはなりたくないと思うところなんですが、結構言動に共感したりうなずけるところが多くて、ものすごい親近感が湧くんですよ。
冒頭、寝静まった我が家に帰ってきて、玄関ドアに鍵を差して回すとき、それからドアを開けるとき、極力音を立てないように気を遣うところ。
(決して僕は恐妻家ではありませんww)
夕飯の献立に悩んでいたら、パパっと手軽にできるものや店屋物をサジェストするところ。
(もちろん僕が恐妻家なわけではないですよww)
ちょっとハードルが高いことでもYouTube見て自分でやってみてしまうところ。
(これは絶対に恐妻家ではないですよねww)
などなどなど。
あと、一人息子の克巳とのやり取りもええなぁ。
殺し屋であることを、ついつい忘れてしまい、ずずずずいーっと感情移入してしまって、特に最後の二篇では涙が溢れました。
読み終わったら、家族の寝顔をしげしげと見つめたくなるような、そんないとしい物語でした。
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本屋で全面に押し出されていてずっと気になっていて、ついに手に取った初めての伊坂さん作品。
まず主人公が殺し屋、だけど物語の主軸は日常というギャップに驚きました。
「えっ?!殺し屋が普通に家庭を築いてて、しかも肝心の殺し屋業があまりにもあっさり描写されすぎてる!!」と衝撃を受けつつも、テンポ感のある物語でするすると読める。
そして色々なことがあまりにもあっさり書かれすぎていて、衝撃が止まらない…
殺し屋にも家族がいたり大事な人がいたり、人間らしい面もあるんだろう、と途中から主人公が愛おしくなっていきました。伊坂さんマジック。
そして途中途中に挟まるハンコの印が可愛い!これは伊坂さんの作品全てに言えることですが、遊び心があって素敵です。
殺し屋シリーズは他にもあるようなので、そちらも楽しみに読みたいと思います。
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泣ける殺し屋の話。
感想を書いてしまうとネタバレになってしまいそうで迂闊に書けない。
でも何回読んでもいい。人に薦められる話。