投稿元:
レビューを見る
音楽評論家の人が書いた小説なので、マニアックな話でも出てくるのかなと思っていたけど、誰でも読めるし読みやすい作品だった。舞台設定が15年くらい前という”すこし昔”なのも、自分が通ってきた時代(まだ子どもではあったが)だし、読みやすさの一因だったと思う。
タイムスリップという要素が出てくる。特に前半にその要素は多くて、実際あらすじや帯にもその言葉はよく出てくる。でもかといってSFか、というとそこまで堅い感じはしない。
それより描写されているのは、主人公とその彼女、家族、親友などとのやりとり、あとは主人公の思考といったことが多い気がした。彼女とのやりとりや、主人公がもうひとりの主人公と出会って交流するくだりにも、結構、青春ものっぽい印象を覚えた。
普段映画やドラマから小説に入るので、普段と違ってどうも人物やロケーションの具体的なイメージが固まらず、なんとなくふわふわとしたイメージのまま読み進めていた。そのまま終わるのかなと思っていたら終盤の展開。そしてそこまでにちりばめられた線もすべて繋がる。私には十分楽しめる小説だった。
なんとなく優しい雰囲気の作品に感じられたのは、そのふわふわしたイメージもあるけど、表紙のイラストのせいもあるだろう(というか今書きながら思ったが、この小説、悪い人が全然出てこない。悪い人が出てきて悪いことする、みたいなそういう物語でもないけど)。
書店員としては、音楽書のコーナーに置いておくにはもったいないなと思う。音楽評論家が書いた小説、という先入観を持って読むのはもったいない。
(ところで、終盤の展開で、著者が以前書いていた映画評を思い出した。まぁ今改めて読んでみたら、関連性があるのかどうか、繋げてみるべきなのか、よくわかんなくなっちゃったけど)