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ナチの迫害を避けて来日、日本の美を「再発見」し、その後、トルコへ渡る--政治に翻弄されつつも常に前進する「色彩の建築家」の初の本格的評伝。著者自身が建築家で「現存するほぼすべての作品を訪れた」というから、作品と人物を丁寧に繋ぎ、描いている。
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・タウトが出版した「都市の解体」は、日本では建築の芸術性を求めた分離派に好まれた。
・ユダヤ人は流浪の民だったため、財産を残すことより子弟を教育することに力を注いだ。
そのためドイツの大学へのユダヤ系ドイツ人の進学率は圧倒的に高かった。
・太平洋戦争に突入した日本にとって、天皇家の文化、伊勢神宮、神道を讃えるタウトは好都合だった。
・アタチュルク大統領の下、近代化に努めていたトルコでは建築教育にもドイツのモダニズムを取り入れようとしていた。
・来日には愛人のエリカを伴ってきたが、タウトの死亡広告は正妻のヘドヴィッグによって出された。エリカの娘も寛容な正妻のおかげでタウト姓を名乗ることができた。
・タウトとヘドヴィッグの孫娘は緑の党を立ち上げた人の妻になったことがが、後に離婚。
その緑の党のポスターを描いていたのがミヒャエル・ゾーヴァ。
タウトの人生や時代背景、タウトにまつわる人々について知ることができてよかった。
正妻と愛人、二人の伴侶がいたこと、正妻の寛大さに驚いた。
エリカがタウトのデスマスクなどの貴重な品を日本に届けたこと、速記が得意だったことなどを知り、エリカはただの愛人ではなく、タウトの仕事において欠かせない人物だったのだな、と。
タウトとは直接関係がないけれど、
最後の章で紹介されていた、アウシュビッツの監獄などのナチス時代のことを現在のドイツ政府が包み隠さず公開している点がとても印象的だった。
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◆桂離宮や伊勢神宮を高く評価したブルーノ・タウトの足跡をたどる一冊。なぜ鮮やかな色彩をつかった建築を残したタウトが、日本の質素な建築物を高く評価したのか? それを考えるためには、タウトの生きた社会、政治、思想、いろいろなことを見なければならない。本書は、そうした視点を踏まえて、タウトの足跡を追っているといえると思う。
* 感想 *
◆ドイツをたびたび訪れて地理を把握し、タウトを知り尽くした人が書いたんだろうなと感じた。タウトという人を初めて知ろうとしたぼくのような人には、難しいと思う。池袋や自由が丘感覚でオンケルトムズヒュッテなどが頻出するので、頭がうにゃうにゃ。でも当然、そこでのタウトの仕事はばっちり書いてある。駅にあらゆる機能を集めた「森の団地」、なんとも素晴らしい。
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本書の最大の魅力は、日本文化の顕彰者としてあまりに有名なタウトの意外なエピソードに触れることができる点。特に、彼の余りに奇矯な結婚観を紹介する際に、桂離宮と日光東照宮に対する彼の評価のギャップに触れる下りには思わず吹き出してしまった。また、タウトのゆかりの者を尋ね歩き、彼らの墓所までも突き止めてしまう著者の思い入れにも脱帽。
終章で筆者が表明する懸念にはやや唐突感はあるが、タウトの平和主義を別にしても、彼が高揚と不遇を経験した戦前の日本の状況と現在のそれを引き比べれば何ら怪しむ所はないようにも思える。当時、日本文化を称揚したのはタウトのような外国人であり、それ自体は純粋な評論であったはずだが、本書にあるように結局は当時の政体によって国威発揚に利用されたのだった。
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先日、桂離宮が見直された理由は...という文章を何かで読んで、もう少し知りたいなと思って手に取った本。