投稿元:
レビューを見る
初山下。芥川受賞作。主人公の名前からして一種の"私小説"だと思い、読んでいた。鬼気迫る感情の描写を期待したが、常に曖昧な感じを受けとても残念だ。私とは相容れない作家のようだ。
投稿元:
レビューを見る
まるで、別の世界の迷宮に迷い込んだかのようであった。作者は、倉本聰の主催する富良野塾の二期生なので、この谷という場所はそこで先生は倉本さんなのだろうが、そこはテレビもない、冬は雪に閉ざされた場所で奴隷のような意味があるのかわからない労働をしいられ、勉強し、周囲の変化に無意識に翻弄され、まぁ、青春小説なのだが、前半、句読点をあるべき場所に打たない長文のリズム感の悪さにイライラさせられ、どこか見知らぬ場所に監禁されたような気分になったかと思うと、言い切り、断定的な表現を多用し読者を煙に巻く。不思議な小説だった
投稿元:
レビューを見る
なんだろう、よく分からない。
感情が、「スン」とも動かない。
主人公スミトの無気力で無関心なキャラクターにも、周りの塾生たちの浮き立たせられない個性にも、「シャバ」でスミトを想い、最後には別の男と結婚した天の思わせぶりで妙にサバサバしたところにも、何ら共感できずに。
まぁ内容に共感できないのは私の経験不足・想像力不足が影響しているとして、語感や語尾にも心に響くところがなく。
これは、この世界は、何だったんだろう、という感じ。
しんせかい。
投稿元:
レビューを見る
当時を思い出している人の体内に入って
思い出を断片的にスライドショーで見るような本。
説明してあるところ以外は真っ白で
奥行きがない。
これが記憶です、と言われたらその通りですね!と答えざるを得ない...
しんせかいの後に書いてある
「率直に言って覚えていないのだ、あの晩、実際に自殺をしたのかどうか」も必ず読んでほしいです。
ごはん7割(しんせかい)山椒漬け3割(率直に言って〜)みたいなかんじでふわっとしたしんせかいに味付けしてくれてる。でも時間軸は逆行しててすごくおもしろい。
投稿元:
レビューを見る
昔のインターネットにこういう人いたなと思った。解説にあったけど、確かに夢を思い出しながら書いている感じだった。
投稿元:
レビューを見る
最近、年のせいか、薄い本ばかり読んでいる。
「百年泥」「ルビンの壺が割れた」そして、この「しんせかい」。
今は大人の事情で終わってしまったが、深夜の「ゴロウデラックス」に山下澄人が出ていて、名前だけは知っていた。
その時、「百年泥」も「おらおらでひとりいくだ」の作者も出ていた。
予告ではないが「おらおらでひとりいくだ」は近く読むつもり。
朝吹真理子の解説と併録されている「率直に言って覚えていないのだ、あの晩、実際に自殺をしたのかどうか」を読んで、なんとなく「しんせかい」が分かった。
もちろん何度も推敲しているだろうが、記憶のむき出し感が、もろに出ている。
時に記憶は、小説の中では、カオスの入り口として、用いられることがあるが、この作品では記憶の断片性が、不揃いでそれが同列に配置されているように思う。
読みながら、倉本聡や富良野塾を具体的に当てはめても、あまり意味がない。
曖昧な記憶が、補足無しに綴られていく。
読み終わってから、あれはどうなった、これはどうだったと問い返したくなる作品である。
どうしても、読者は作者にそれを求めるが、今回は僕らは自分勝手にそれらに解釈と結論を想定してしてしまおう。
併録された「率直に言って〜」は、一見「しんせかい」の前日譚である。
首都圏に住む僕には、新宿や新橋は行ったことのない富良野よりは、馴染み深い。
タイトル通り、実際に自殺がどうなったのかは、記述されていないが、浮浪者に会った後、歌舞伎町を徘徊しているのだから、自殺はしなかったのだろう。
アライグマを持ち主に返したところで、自殺は、無くなったのだろう。
作家の文体に魅かれることも多いが、この作品の場合、文体というよりももっとゴロッとしたもの、文塊(そんな言葉は無い)が、所々に置かれているという感じがした。
著者名は山下澄人なのだが、何故か矢川澄人だとずっと思っていたら、矢川澄子という作家がいたのだった。
勘違いである。
投稿元:
レビューを見る
読書開始日:2021年7月31日
読書終了日:2021年8月7日
所感
これまた時間のかかる作品だった。
今まで読んだ中で1番わけがわからなかったかも。ただどんなに仲が良い友達でも、どんなに好きな恋人でも、その人の顔や話してた内容を意識して思い出そうとすると、もやがかかる感じはわかる。
恐らく収録2作品どちらも作者自身を書いてると思われるが、かなりの集中力散漫、執着がなさが伺える。この特徴が強ければ強いほど記憶のもやが濃くなるのか。
浮遊感がえげつない。
読みながら一回も安定できなかった。
人が話している時に注目するのは語尾
青の上は黒だとわかるほどの青さ
ものごとは便利になり余裕が生まれるほど切羽詰まれなくなり堕落する
投稿元:
レビューを見る
主人公の記憶力があやふや過ぎて、話の繋がりが分かりづらく読みにくい文章だが、徐々に慣れてきて一気に読んでしまった。特に盛り上がりがあるわけではないが「どういう意味だろう?」と先が気になって読むうちに加速して、気づけばラスト。
読後すぐは意味の分からなさに混乱したが、しばらく考えているうちに、これは著者自身のことを思い出すままに書いたような小説なのかなという結論になった。思考が入り込む前の、本能的な人間の動きがそのまま書き出されたような素直さ。かと思えば流暢な関西弁で軽口を叩いたりもするから分からない。その違和感が引っ掛かりとして残る。
進藤さんが電話をしている場面は、本来見えてないはずのものが天の目で何もかも見えてしまっていて気持ち悪さがあった。脚本家としての目線なんだろうか……それと金縛りと幽体離脱のような不思議体験は何だったんだろう。まるで死んだ人の霊が死んだと知らず浮遊して夢でも見ているようである。あれもこれも謎が残る。