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作家さんが「生きる」ということを描く時、その視点は様々で、金原さんはデビュー当時から「痛み」「性」「刹那的な欲望と関係」に視点を置いて描いてきたように思う。
「マザーズ」で作風に変化が生じたとわたしは思っていて、それでも、その3点はいつも作品の中にちりばめられている。
本作品は、姉妹が交互に主人公になりながら進んでゆく。
感覚で生きる高校生の杏(妹)と、理性で生きる大学生の理有(姉)。
タイトルの「クラウド」というのは本作品においては”自分自身が生きていくために作り上げた記憶”といったところだろうか。
姉妹は、すでに亡くなった母親と、海外に住んでいる父親に対して異なる記憶を持っていて、読者も姉妹の言葉によって父母の姿を形作る。そしてきっとその姿は、姉妹の言葉の何を選択するかによって、読者に全く異なるイメージを作らせる。気がする。
なにか自分の中で処理できない出来事に遭遇して、でも生きていかないといけない日々の中で、人々は上手に、事実をうまいこと改ざんして、それを実際にあった出来事として、つまり記憶として保存する。クラウドに。そしてそれが、その人にとっての事実となる。
例えば、わたしは幼い頃に父との離別があり、ほとんど記憶がないにも関わらず、それはわたしに“父親”というものを美化させた。だから、わたしの記憶の中にある父親はいつだってトトロに出てくるお父さんのように優しいのだ。
一方で、一人になったわたしの母は、「この子がいるから専業主婦にはなれない」と嘆いている母親として、わたしのせいで仕事をしなければならなくなったと内心で思っている母親として記憶される。
いずれも誤った記憶かもしれない。二人は納得して別の人生を歩むことになったのかもしれないし、わたしは全く関係ないのかもしれない。
P162「最近、虐待のニュースを見るたびに思うんです。どうして母はこういう分かりやすいのじゃなかったのかなって。親に殴られた、暴言吐かれた、ネグレクトされた、全部誰がどう見ても可哀想。でも私たちは違う。(中略)殴られたこともなければ暴言を吐かれたこともなかった。(中略)どうして私たちだけこんなに惨めな思いしなきゃいけないんだって、しかもこんな分かりにくい惨めさ。」
作中の姉妹は、亡くなった母のことをクラウドにある記憶で形作るしかなくて、でもわたしの母は生きていて、だからわたしは勇気さえあえればいつだってそのクラウドの更新ができるのに、どうしてそんなに更新が怖いのだろう。一気に容量をオーバーしてしまうような気がするからだろうか。
もしこのまま更新しなかったら、わたしは父の記憶のように、母のことも都合よく塗り替えるのだろうか。それは「こんなに苦しめられた」という負の記憶か、それとも「優しいお母さんだったな」という、今は思ってもみない新しい記憶か。
分かってる。一番は、早いうちにクラウドを更新すべきだってこと。でも一方で願う、あくまでクラウド上の優しい母に、ありのままの自分を認めてもらいたい、とも。
正しいのはクラウドの更新だ。
でも必要なのは、誤ったデータだ。
生きる��て切実。みんな冷静なようでいて、どこかしらちょっと狂ってる。
解説は、以前同時に芥川賞を受賞した綿矢りささん。
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うーん
難しい、もやもやする
結局、最後の姉妹はどうなったのか
広岡は未成年淫行をやり過ごしたのか笑
はっきりさせて欲しかったですね
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金原氏らしい内容でしたね。
突っ込みどころ満載でした。
離婚後、母親が死亡し姉妹二人だけの生活、妹「杏」と姉「理有」
妹は高校も行かず彼氏の家に転がり込みほぼ同棲生活
姉はすべて完璧主義、勉強もできて妹の面倒見がよく家事もする。
妹の彼氏は母親が女優の金持ちボンボン、中身すっからかんで浮気性
だが杏がいないと生きていけないと我がままし放題!!
杏や彼氏は高校生なのにお酒飲んで、クラブで遊ぶ?
まぁよくそんな金あるねぇ~さすが金持ちボンボン
彼氏の自宅で浮気がばれて腹いせに姉の行きつけの美容院の男と
関係を持つ??いわゆる不倫ですねぇ~
いやぁ~金原氏らしいでーす。。
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この人に「切実さ」を書かせたら右に出る者はいないと思う。
理有の静と、杏の動のコントラストでいつまで読んでても飽きないし、謎が解けていくんじゃなくて、だんだん深まる展開も面白かった。
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オチをつけてくれ~~~そして金原さんにしては刺激の少なめな本だったかな真逆の姉妹の話なんだけど母親の死についての真相?見解?が姉妹で違いすぎたときはえっなにこのどんでん返しは、と思ったけど答えがないからモヤモヤ終わった。
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気がかりな、あけすけで憂鬱な文章によって読者を翻弄する金原ひとみの小説が好きだが、本作では中々巧みなどんでん返しが用意されており、小説技巧的にも読者を翻弄してくる。
またそのどんでん返しにより曖昧化された事件の真相を、読者が脳内で紐解こうとするその行為自体が、人の記憶のご都合主義的な性格に気づかされることに繋がっており、なんだかいろいろ巧みな小説である。
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年齢的なギャップのせいなのか、リアリティーのなさなのか全く理解不能のまま読了しました。
高校生の杏が当り前に飲酒、夜遊びを繰り返し、姉を担当する既婚の美容師と関係を持ったり、パニック障害を起こしたりと、なんだかその展開にも付いて行けず最後まで面白さを感じる事が出来ませんでした。
姉である理有の行動もしかり 両方に感情移入する事が出来ず残念。
若い読者さんには受け入れられる作品かも知れませんが、私には全く理解出来ない作品でした。
クラウド=雲と言う事でモヤモヤっとした印象のみが残りました。
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結局、お母さんも、姉妹も、ちょっと病んでるのかしら?お母さんの死因は結局どっちがホント?お父さんとは離婚したから離れたのじゃないのね?死んだのね?
↑こんな感じが、普通の感想なんかも。
でも私は、こういうちょっと病んでる話、好きだなぁ。
杏の生き方憧れるわぁ
自由なようで病んでる。
理有も真面目に生きてるようで病んでる。
みんな誰かに必要とされたくて
誰かを必要としてるんだよな…
姉妹は共依存なんかな?
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記憶の中にしかいない人との思い出って、妙に美化されていたり、逆に思い出すのもしんどいくらいの嫌悪感しかなかったりするよね。
見る人によって、ひとつの事実やひとりの人間の印象って変わってしまう。理有が見てる現実と杏が見てる現実は全然違うけれど、どちらも間違ってないんだと思う。
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どれだけお互いのことを大切に思い合って、思い出や体験を共有しても完全に理解し合うことはできないものだ。
自分自身のことさえ理解しきれないのに。
同じ物事を体験していたって、その時々の受け取り側の個人の状態や性質、与えられる影響や印象は違う。
相手のことがわらなくなって、恐怖を覚えることがあったとしても、丁寧に読み解いていけば、案外芯に残る部分は大抵普通の人間なんだ。怖がる必要はない。
必要以上に怖がって大切な存在を手放してしまうのは勿体無い。
綿矢りさの解説はなんだか的を射ていないような気がしてしまったのはわたしだけだろうか。
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この小説にはギミックがしっかりとあって、そこは充分に楽しめるものの、個人的には暴走気味に思えるくらいの金原ひとみの方が好きだ。
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自分の感情の赴くまま、自己中心的に生きる高校生の杏と、自分の欠落した部分に気づき、理性的に内面の再構築を試みている大学生の理有。この二人の姉妹が、交互に各々の章にて一人称で語っていくかたちの小説です。
仲が良く、内面的な結びつきの強い姉妹です。両親は離婚しており、小説家の母親と暮らしていたのですが、その母親はある日亡くなってしまう。それから姉妹は短い間、祖父母に引き取られますが、ほどなくして、新たな場所で姉妹だけで暮らしていく。それらは小説内で次第にわかってくる事情で、物語自体は妹の杏が彼氏の晴臣をボコボコに殴り散らすシーンから始まります。
洗練された文章だと思いました。序盤1/3くらいまでの間、文章の緩急や構成など、書く人にとっては教科書になるような、パキッとできあがっている美術品のように感じられもしました。そして中盤から終盤へと、深い気づきを得られる箇所がいくつも出てきます。
強迫神経症で鬱でアル中の小説家である母といっしょにいると、「時空が歪む」という理有のセリフ。あれ、こうじゃなかったっけ、何でだっけ、とか思うことが多くて、と(p160あたり)。これよくわかるんですよ。そういうタイプの人っています。たとえばうちの父と暮らしているとそうなので。これってけっこう世の中では特殊な例だと思いますが、それを著者は知っていて、なおかつここまでうまく言い表すのですから、すごいぞ、と思いました。たとえば強迫神経症(強迫症)は、一昔前には、その患者の家族がQOLを著しく下げることになる五大疾病のひとつとして、WHOで数えられていたそうです。度合いにもよるでしょうけど、この病気に持たれているイメージよりも実際はずっと大変なんですよね。本作の主人公である姉妹は、こういった影響下で育ちました。二人の抱える内的な問題の源流にあるのはおそらくこのような過去の影響です。でもですね、まだ姉妹で良かったんですよ。子どもを二人つくっただけでも親としてはフェアなことをやったほうだと思う。これがひとりっ子だとフェアにはいきませんから。
そんな理有と杏、正反対の個性ともいえる二人であっても、共通している価値観があったりします。
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人の裏にあるものを覗き見ようとしない人、人の隠したいものを暴き立てようとしない人、そういう人なら、結婚していようが、歳の差があろうが、いいような気がした。(p121・杏視点の章)
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光也にはデリカシーがある。彼は人の踏み込まれたくないところには踏み込まない。人が常に逡巡や躊躇いの中で生きていることを、よく理解している。(p169・理有視点の章)
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ここで言われている性質って、僕自身も他者とコミュニケーションするときに見ておきたいところですし、自分も他者に向けてそういうことの無いように気を付けたいところでもあります。
本作が金原ひとみさんの作品に触れたはじめての機会でした。人を描くのはもちろん、関係性の描き方に作者のそうとうな力量を感じました。関係を通して関係性をよく見ていて、そこからクリアかつ慎重に分析出来ていて、その知見が創造に使えるくらい消化されて血肉になっているような気がします。
さて、金原さんは文學界新人賞の審査員をつとめていらっしゃいます。WEBでは応募を募るためのコメントが掲載されていますが、「何でもいいよ! 小説書けたら送ってみて!」と、とても気さくで軽いのです。新潮新人賞でも審査員をつとめていらっしゃいますが、同じように、「本当に何でもいいよ! 小説書けたら送ってみて!」とある。出合いがしらでは、「ネタなのかな」とちょっと笑っちゃいもしました。
ただこれは、「大丈夫。この世界はあなたに対して、ちゃんと開かれているからね」というメッセージを含んでいると思うのです。表面的には軽いノリのコメントなのだけれど、小説を応募するくらいの人たちならば、たぶんそのような意味をくみ取っているのではないでしょうか。小説を書く人には、言葉にしていかないとこの世界で溺れ死んでしまうタイプの人もたくさんいると思います。言葉にしていくことが、浮力なのです。言葉にしないと、社会の海に沈んでいって溺死してしまう。そういった人たちに向けて、「何でもいいよ! 小説書けたら送ってみて!」は、あなたが生きていくのに向いているのかもしれない世界への門戸は大きく開かれている、と伝えるメッセージ。そりゃ、腕っぷしで生きていく世界、人生丸ごとぶつけるような世界ですから、めちゃくちゃ厳しい世界ではあるけれども、<開かれている>。それはとても大切なことなんだと思います。
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人間の内面の全ての部分をさらけ出す金原作品が好きだ。
全てが自分の人生とは全く相まみえないし生きてる世界が全く別物なのに何故か嫌な感情を持たず読んでしまう。
作者の持つ世界観、人生観を全否定出来ない自分に気付かされる。
最後はよく理解出来ないが、読み応えはあった。
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登場人物が皆病んでる
なあと嘆息した後から、
ちょっと待て、彼らと
比べて私はどうなんだ
と・・・
コタツに足突っ込んで
育ったようなボンヤリ
した顔。
顔のつくりというより
生気の問題。
現在の私はそんな顔に
なってしまってるかも。
人は逡巡と躊躇いの中
で生きてると言うけど、
うーーーん、どうかな。
私は惰性と卑屈の中で
生きてる気がします。
いろんなことを諦めて
人の目ばかり気にして
・・・
もっとイキイキとして
スッキリしたいい顔で
生きていきたい。
物語とまるで関係ない
けどそんなことを思い
ました。
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私達は巨大なデータベースで生きていて何を引き出して何を採用しているかで人生が決まっていく、みたいなフレーズがある。自分もあの時違う選択をしていたら、全く違う人生だったのかなーと考えさせられる。子供は母親の影響を大きく受ける。気をつけねば!!
濃いなーと思う内容だけど、読んでいくと止まらない感じ。