紙の本
イスラームと世界史
2003/04/02 23:43
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投稿者:五十棲達彦 - この投稿者のレビュー一覧を見る
文明の衝突という視点で中東問題への分析が盛んであるなか異論を憶える著者のこの本に興味がある。歴史の転換点として中東紛争への関心がこの本の原点となっている。米国のイラク攻撃の正当化とイラクの聖戦思想の対立は石油利権に絡む経済対立なのか、文明の対立なのか。そもそも文明とはなんであるのか。そのような疑問にも応えてくれている。中東もイラクもイスラームも一筋縄ではいかない。それぞれの発展段階と矛盾が内包している。われわれ日本人からもっとも解りにくい地政学である。この本を読めばそれが解きほぐされる。
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[ 内容 ]
民族宗教紛争の多発により世界は新たな対立と緊張に直面している。
中東和平や中央アジアの動向は今後どのような展開をみせるのだろうか?
世界史への登場以来、先進的な文化を誇ってきたイスラームは、けっして異質で非寛容な文明なのではない。
日本人にとっては、日本という独自の枠組にこだわることで、かれらとの協調と理解の地平はおのずと見えてくるにちがいない。
では、イスラームという入射角から光を照射すれば、世界史はどのように現れてくるのか?
世界史と日本史をつなぐ歴史的な視点を軸に、21世紀に向かう現代世界とイスラームがかかえる課題を問いなおす現代人のための一冊。
[ 目次 ]
序章 20世紀―戦争と革命の世界像
第1章 世界史の十字路―中央ユーラシア
第2章 現代史のなかのイスラーム
第3章 中東の運命
第4章 歴史家の眼
第5章 国際社会のなかの日本
終章にかえて イスラエルのバラク政権と中東和平
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[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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本年6冊目。タイトルからイメージした内容とは異なるものだった。本書は過去の雑誌に掲載されたエッセイを編集したもの。なので、一見、各章が関連無いように思えたが、根底にあるものは「歴史をどう理解して、何を学ぶのか」ということ。
私自身にイスラム諸国に関しての知識が無いため、チンプンカンプンで読み始めたが、後半は面白く読めた。
特に福沢諭吉に触れられた章は、自分の理解の浅はかさを思い知らされる思いに。
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[多様な入射角から]二十世紀の終わりを目前にして、日本人のイスラーム研究の第一人者である筆者が、歴史について様々な思考を試みたエッセイ集。 タイトルにあるイスラームを始め、中央アジアやロシア、日本史や歴史観など、多様な角度から歴史の本質に迫る言及がなされています。著者は、『イスラームと国際政治』、『ラディカル・ヒストリー』など多数の著作を有する山内昌之。
(本書のタイトルが少し内容に鑑みてミス・リーディングな気はしますが)歴史の面白さ、そしてそれに深い洞察を有することにより見えてくる異なる地平の有意義さがひしひしと感じられる作品でした。エッセイが書かれた時期は今から15年ほど遡るのですが、今顧みてもまったく古さを感じさせない内容になっています。これも目先のことばかりでなく、一つ遠くを思いやる著者の時間感覚がある故のことなのでしょうか......。
〜「文明の衝突」とは、存在するものではなく、つくられるものなのである。そして、その神話をつくりだすのは、欧米だけとは限らない。欧米とくにアメリカの実力を無視したイスラーム主義者による挑発も、「文明の衝突」を現実化する要因であることを忘れてはならない。〜
知識量とそれを活かす鷹揚さがスゴい☆5つ