紙の本
カルネアデスの板
2020/07/08 20:32
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投稿者:キック - この投稿者のレビュー一覧を見る
青山学院大学での法哲学講義をベースに、「法化」「正義」「道徳的義務」「功利主義」「権利」「自由」「国家」等をテーマにした11講。平易に書かれているとは言え、法律の話ですので、理解しようと思って読むと時間を要します。私も一応は法学部生でしたので、「救命ボート」や「カルネアデスの板」といった定番の話は懐かしさを覚えました。そんなに堅苦しい本ではないので、興味のある方はぜひ読んでみてください。ただ、最後の2講あたりで力尽き、飛ばし読みしてしまいましたが・・・。
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こういう新書を手に取る大学生が数多くいればいいな、と思う。既に教養主義は廃れ、すぐに役に立つと感じられない教養涵養にお金を投ずる学生など珍奇な存在であろう。これくらい噛み砕いて楽しい本でも、ある程度の水準以上の法学部生以外では、進んで読むような学生はほとんどいないと感じている。法学部以外の学生さんに、流し読みしてもらって、面白いな、と感じてもらうことが大事だと思うのだがなあ。そうでなきゃ、政治に興味あります、なんて面接で言ったりしても、付け焼き刃以前で問題にならないよ。ベンサムって誰?って、そこらの大学生にサンプリングして訊いてみれば? たぶん愕然とする結果だろうな。
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法哲学って、なんだろう?あまり興味ないのだが、、、、と思っていたのだが、フーコーやデリダが法哲学のセミナーによばれて講演したりしているのがあって、???と思っていた。法が成立するそもそもの根源を批判的に考えるようなのが、法哲学なのかな?
みたいな印象を持っていたところで、「あぶない法哲学」というタイトルになんとなく読んでみる。
著者によると、法哲学には、天使の顔と悪魔の顔があって、天使のほうは、制定法に協力して、それらがよりよく正義を実現するための指針を考えるもので、悪魔のほうは、原稿法体系の起訴自体を疑い、批判していくこととのこと。
なるほど、フーコーやデリダは、こっちの悪魔のほうの法哲学と仲がよかったわけね。
大学の講義をベースとした本で、身近な話題というには著者のややサブカルな好みが強くでた事例というかジョークを交えながら、世の中でおきた奇妙な事件を紹介しながら、法哲学はどう考えるかをわかりやすく説明していく感じ。
語り口は軽い感じではあるが、根源的な問うていて、スリリング。
取り上げられている哲学者は、ロールズ、ノージック、ドゥオーキン、センとか、正義や公正といった概念に取り組んだ比較的、新しい人たち、そして、そうした議論のベースになあるベンサム、ミル、ハイエク、スミスみたいな人々が紹介される。どっちかという英米系の哲学者が多いのかな?ときどき、アーレントやフーコーもでてくるかな?という感じ。
つまり、結構、まっとうな哲学の入門書なんだと思う。
法哲学(悪魔の顔)って、政治哲学とか、道徳哲学とか、とかなり隣接した分野なんだね。だったら、結構、好きな領域かな?
わたしは、哲学は好きだけど、あんまり純粋なやつ(?)形而上学というか、認識論みたいな議論より、現実社会というか、実際の生活にリンクしているようなものが好きだからな〜。
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青山学院大学法学部の法哲学の授業をベースにした新書本。法哲学なのでもちろん答えは無く、あくまで考える材料や、考える道筋が示されているだけである。
非常に平易な文章で、自虐や具体例を交えながら進んでいくので、法哲学の入門としては分かりやすい。他方で、あっさりと読めてしまうので、あとになにも残らない危険もある。
巻末の読書リストと合わせ、しっかり勉強するならば繰り返し読むべき本であり、繰り返し読みやすい本である。
ドゥオーキンのアファーマティブアクションへの考え方などはちょっと予想外で、そういう意味でも頭の体操にはもってこいであった。
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社会の常識や現行法体系の基礎原理などを徹底的に疑い批判する法哲学について軽妙に語る。所々で挟んでくるドライなユーモアも結構好き。アニメやマンガが好きなのが伝わってくる。ロールズやノージック、ドゥオーキン、ロック、ミルなどの、大学時代に取った西洋政治哲学のクラスで出てきた思想が懐かしかった。
法の起源は暴力で正しさは期待できない、法化の問題、法実証主義と自然法論、思考停止した遵法は罪、市民的不服従、功利主義、動物の法的権力、アナーキズムが可能になる要件、厚生の平等でいいのか、愚行権と自由についてなどといったテーマについて論じてて、めちゃくちゃ面白い。
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日常の惰性の中で磨耗した脳にヨイ刺激になりました(^^)疑い、思考する訓練と素材をくれたように思います。
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著者が「はじめに」で書いている様に、講義のシラバスが元になっているな、と感じた。
法学部の一年生向けの講義の様な内容なので、自分の様な法律のシロウトでも気楽に読み進める事が出来た。
所々に出てくるマンガやアニメのネタが分かる人には、より楽しめる(星プラス0.5位か?)だろうが(講義でも話しているのかも知れないが)、自分には殆ど分からなかった。
「法哲学」という言葉が気になった人にオススメ。
MARUZEN&ジュンク堂書店梅田店にて購入。
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「法哲学は、法律に対してその思考を向ける。つまり、人間社会のさまざまなルールの中で、なぜ法律だけが国家権力による強制力を持つことができるのか、そのような法律を成立させ存在させるものは何なのかを問う。また、はたして議会で制定される法律だけが法なのか、制定法を凌ぐより高次の
法があるのではないか、あるいは制定法よりも人間社会の多様な営みの中で自生する法こそ重要なのではないか、などと考えたりもする。古代ギリシアに起源を持ちヨーロッパで発展した、歴史のある学問なのだ」(本書「はじめに」より)
ちなみに、「その思考」とは、同じく「はじめに」に記されているが、「既成の知を疑い、<存在すること>の根拠はなんであるのかを探求し続ける思考」のこと。
そして著者は、法哲学には具体的な法学がよりよく正義を実現できるようにするための指針を示す「天使の顔」と、人間社会の習俗とか常識それ自体を徹底的に疑い、容赦なく批判してゆく「悪魔の顔」の二つの顔があると主張する。
本書では、その二つの主張に基づき各章で「カジノは合法なのに賭け麻雀が違法なのはなぜ?」、「自発的な売春、是か非か」、「自分で飲む酒を自分で造って何が悪い?」等々、言われてみれば何でだろう?と思う様々な問いを多数立て、法哲学の観点から考証している。
なお、それぞれの問いには当然のことながらこれが正解という答えはなく、著者の提示した様々な考え方をもとに読者自身が自分で考えて答えを出す形になっており、良い思考のトレーニングにもなる。
非常に乱暴にまとめてしまえば、本書の言いたいことは、常識を徹底的に疑い、闇の部分は白日の下にさらし、まっさらの頭でそれらにつき考えてみよう!ということだと思う。
ところで「まえがき」によれば、著者はセックス・ピストルズの大ファンとのことなので、ピストルズ好きの私と趣味が合うことも本書に好感を持ったところであります。
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ツイッター見ていて、本の紹介があって、おもしろそう、と思って、アマゾンでポチって、読みました。その紹介では、P.226からの1節が引用されていた。そして、見事にそこが今まさに自分が知りたいことで、この先どう議論は展開するのかと期待して読み始めた。なかなか知りたいことが出て来ないなあと思いながら迎えた最終章一歩手前、よしこれだと思って読んでいたら、節が変わったとたんに話が変わった。なに?肩すかし。この1年ほどずっと考えていることはこうだ。教育格差が騒がれているが、そこに見え隠れするのは、大学卒というのが幸福への道であるというような風潮。両親が大卒だと子どもも大卒になるケースが多い。それはそうだろう。けれど、大卒なら必ず幸せになれるのか。あるいは幸せと感じられるのか。高卒でも、中卒でも幸せに暮らしている人も多いのではないのか。缶酎ハイ1杯で幸せにひたれる人と、1本5万円もするようなドンペリがないと満足しない人、どちらが幸せなのか。そもそも、幸せって誰がどうやって決めるのか。本人の思いだけではだめなのか。人が財の消費から受ける満足のことを「厚生」というそうだが、この厚生がすべての人において実現されているだけでは平等とは言えないのか。酎ハイで満足できる人にドンペリなんてもったいない。それなら代わりに現金ください。それでいいではないか。そう、だから、大卒だから幸せ、中卒は不幸せとかではなく、同じ仕事をしていたら同じだけの給与が支払われればそれでいいのではないか。そうなっていないことが問題なのではないか。(今朝の新聞で、苅谷さんが格差でなく不平等と書いてたなあ。)でもな、もらえる現金が少なくても、それでも幸せに生活できている人もいるしな。極端に少ないのは困るけど。だから、ベーシックインカムなのではないのか。まあ、本書全般的にはおもしろかったです。しかし「性器を食す世紀のイベント」は知らんかったなあ。すごいこと考えるなあ。というか、そんなん食べてみたい人もいるんやな。幸せというのは人それぞれやなあ。まあ、他人に迷惑かけないかぎりはいいとするか。
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法哲学の導入部を扱った広く浅い書のようである。アナーキーでくだけた表現が法哲学という何やらむつかしい分野でも楽しく読ませる。
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読みやすい。具体的な話から原理的な思考に入っていくパターンは、哲学の入門書によくあるが、大抵は突っ込み不足になるか、消化不良になるかのどちらかだ。その点、この本は下世話にグイグイと掘り下げていくので、ついていける。著者の講義を受けてみたいなと思う。
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なんだこの屁理屈…と懐疑的に読み進めていくうちに、法哲学にはまってしまった。当たり前、社会の常識、と考えていたことに説明がつかなくなる。特に平等論にはやけに納得してしまった。なんで年上というだけで金持ちの後輩にランチをおごっているんだろう…と日頃思っていたから。世の中にはこんなに人の心理や状態を分解して色々と考えている人がいたんだなぁと知った。でもそれで法律が改正されたりするのだから、とても重要な分野だと思う。
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ほとんど倫理学、というか法学部で倫理学を教えるには法哲学を名乗るのだろう。うまい入門になってると思う。それにしても法学系統の人は話の進みが速い。てか、倫理学の人がもたもたしてるのね。全体に自由と自己所有の話が多いような。表現の自由や死刑みたいな話がない(ような気がする)のが意外だが、新書の入門書だからしょうがない。
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法律に規制される世間の常識を疑問に思う姿勢を奨励する本。名前を聞き齧っていただけのロールズやフーコーその他の哲学者たちが論ずるところを簡単に紹介してくれている。(巻末に索引があればなお良し。)お堅い内容だから敷居を低くしようとしているのか、安っぽい自虐ネタで各論を締めくくっているのがザンネン。
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常識という池の水、全部抜いてみよう!
普段当たり前に思っている常識、公理を取り去って人間社会を考察する。知的好奇心は大満足、「法哲学」の魅力を十二分に伝える良著。
ただでさえ難しそうな法学と哲学を合わせたような法哲学。
正義や自由、道徳についての考察から、具体例を駆使して法哲学の魅力に迫る。副題にあるとおり楽しい思考レッスン。
例えば功利主義の”最大多数の最大幸福”は諸刃の剣。”社会全体の不利益をを最小限”にする発想から選民思想につながる。
安楽死やLGBTからゴミ屋敷などホットなトピックも豊富。テーマが具体的であり分かりやすい。
法哲学の第一歩として魅力ある一冊。