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感染症は駆逐し撲滅されるのが本当にいいことなのかを、感染症の歴史を紐解くことで検証している。ある一定数まで感染が広まると、集団免疫ができること。人と感染症が共生することで、新しい感染症への抵抗力となるという主張は興味深い。また、この本は著者の問いを抜きにして歴史として読んでも非常に面白い。感染症がいかに当時の政治戦略と支配に大きな要素になっていたことがうかがえ、大航海時代以降の歴史が立体的に浮き上がってきて興味深かった。歴史を読み解くためには、感染症という視点を組み入れないといけないのではないかと思うぐらいだった。ただ、全体のまとめ方が非常に読みづらい。
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中々考えさせられる内容であった。結局イタチごっこに近い面があり、本当の意味での感染症に人類が勝利することはないのかもしれない。
ただ、多くの地域で寿命が延びているのも事実だし、根絶された感染症もある。本書を読むまで、なんとなく人類は病に対して勝利を収めつつあるのかと思っていたが、そんなに単純なものでもないのを初めて知った。
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「共生とは、理想的な適応ではなく、決して心地よいとはいえない妥協の産物なのかもしれない」
感染症は、被感染者の母数が少数では感染を維持できない。文明(農耕牧畜、定住社会)は、感染症のゆりかご。天然痘は牛から、麻疹は犬から、インフルエンザは水禽から、百日咳は豚もしくは犬から人に感染した。(なお、人から他の動物への感染も当然ある)
感染症の存在は歴史に大きな影響を残す。例えば、アフリカ・トリパノソーマ症の存在により、人が住めない土地が存在し、逆に、大型獣の楽園のようになっている。揚子江流域が黄河流域より農耕には適していたにもかかわらず開発が遅れたのは、風土病が存在したからかもしれない。アフリカが白人を寄せ付けない暗黒大陸と呼ばれたのは、マラリアなどの風土病の存在も大きい。キニーネがマラリアを予防することがわかったことも、白人のアフリカ支配に寄与した。社会的集団として特定の感染症に免疫があるのは、生物学的な障壁となった。例えば、白人が北南米をいとも簡単に征服できたのは、北南米の原住民が、白人の持つ感染症に耐性が全くなかったことが大きくかかわっていたとかんがえられる。戦争でも、第2次世界大戦までは感染死が最も大きな死因だった。米西戦争では、米兵の実に3分の1が黄熱で死んだ。
戦争や交通インフラ整備による人口移動は大きく感染症の動態に影響を与えた。例えば、5000万から1億人の被害を及ぼした1919年頃のスペイン風邪流行には、第一次世界大戦による人口移動が大きく寄与した。
結核菌の発見、ペニシリンの実用化などが結核の死亡率を低下させたと考えがちだが、近代医学導入前から死亡率は低下しており、その理由はまだよくわかっていない。
集団免疫。集団の中に免疫者が増えることで、感染症が増えにくくなり、免疫を持たない人が感染する機会も減る。
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子の病気から感染症についての基本知識を得ようと、中公新書「感染症」「細菌の逆襲」と続いて3冊目に読んだ。歴史と経緯が流れるように簡潔に書かれており、物語のようにも感じられるが決して幼稚ではなく、スイスイと一気に読んでしまった。文明という題がついてはいるが、感染症というものがどういうものかをまず知りたいという方におすすめする。
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「疫病と世界史」の副読本第二弾として読んだが、
わかりやすかった。
「疫病と…」と同じく歴史の流れに沿った章立てであること、
具体例が丁度良い数とボリュームなことが、
その理由と思われる。
もちろん、
大著である「疫病と…」に比べると物足りない感はあるが、
副読本としては最適。
一番印象的だったのは、
1875年のフィジー諸島での麻疹の流行。
オーストラリア公式訪問で感染したにもかかわらず、フィジーの王と王子は各地の族長と帰国を祝い、
その族長たちが10日間の祝いの席から帰郷したことにより、
フィジー諸島全体に全域に麻疹が広がることになった。
その致死率25%、太平洋最大の悲劇だそうだ。
しかし、この種の本をあまりに立て続けに読んだせいか、
血を吸って赤く光るノミが、
無数に部屋にいる夢を見たのには閉口した。
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感染症の歴史と、文明に与える影響について記述した一冊。
これまでの歴史書の中で、感染症について細かく記述したものはなかったので、非常に勉強になった。
そして最後の「共生とは、理想的な適応ではなく、決して心地よいとはいえない妥協の産物なのかもしれない」という一文が、とても印象に残った。
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新書だから、と軽く読み始めたら思いがけず内容が濃くて、読むのに時間がかかってしまった。古代から現代までの感染症の歴史と、今後人類は感染症とともにどう生きるべきか、という壮大なテーマ。
狩猟採集から農耕へという暮らし方の転換から始まり、領土拡大や戦争、交易、そして開発といったような「人が大量に移動すること(しなくなること)と」感染症の関係の深さ、ウィルスの「適応」機能が高度でかつ洗練されていることが印象に残る。
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普段読むのとは全く違った畑の新書でしたが、わかりやすくて面白かったです!
狩猟採集民の頃の方が感染症が少なかったと思われるのは本当に驚き。
今の方が人間生きにくいのかも知れないですね。
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感染症との闘いは人類に勝利をもたらすのだろうか。防疫対策による封じ込めは、大きな悲劇の準備にすぎないのかもしれない。共生の道はあるのか。感染症と人類の関係を文明発祥にさかのぼって考察し、社会が作り上げてきた流行の諸相を描き出す。
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勉強用。
共生とは理想的な適応ではなく、決して心地よいとはいえない妥協の産物なのかもしれない
心地よくない妥協の産物だとしても、共生なくして、私達人類の未来はないと信じている。
基本再生指数=
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感染症の歴史について、詳細な調査を基に書かれた本。感染症の流行が、社会に極めて大きな影響を与え、歴史を動かしてきたことがよくわかった。ただし、後半は短く単発的な文章で構成され、根拠やデータも不足しており説得性に欠けていたことが残念。印象的な表現を記す。
「食糧増産と定住が人口増加をもたらし、これが新たな感染症の流行に格好の土壌を提供した。同時に、本来野生動物を宿主としていた病原体は、ヒトという新たな宿主を得て、多様性を一気に増加させた」p37
「アステカやインカは、感染症により文明が滅亡した」p85
「(ロナルド・ロス)パナマ運河は、顕微鏡とともに掘り進められた」p93
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感染症は突然あらわれたり、劇症化したり、死亡率を低下させたり、消滅したりする。ウイルスそのものが変質したり、また開発によって影響を受けたり。それらは歴史の中で十分検討されているとはいいがたい。
感染症を引き起こす原因菌が、さまざまな環境の中でその時その時のバランスの中で生息していることを考え合わせると、感染症の根絶が果たして人類にとって都合のよいことなのかという問題を指摘。
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新型コロナウイルスの流行が止まらない。収束の日は来るだろうか。ネットでは色々な情報が出回り世の中は困惑している。
本書は世界で起きた過去から現在につながる様々な感染症についての歴史を、その原因や特徴に仮説を交える等しながら読み進めていく。
ウイルスによっていくつかの国が滅びたこと、感染症撲滅をうたった植民地の正当化、土地開発による病の発症等読んでいると知らない事が多く、現在流行している新型コロナウイルスについても歴史の一大事として見ていなければと感じた。
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<目次>
プロローグ 島の流行が語ること
第1章 文明は感染症の「ゆりかご」であった
第2章 歴史の中の感染症
第3章 近代世界システムと感染症~旧世界と新世界の遭遇
第4章 生態学から見た近代医学
第5章 「開発」と感染症
第6章 姿を消した感染症
エピローグ 共生への道
<内容>
歴史をひも解きながら、人類と感染症との関係を述べたもの。コロナの流行の中、麻疹やポリオ、スペイン風邪などの流行とその時の状況、その後の動きなどを簡潔にまとめてある。世界史的な第3章の話(欧州から南北アメリカに侵略があった時、多くの感染症がインカやネイティブ・アメリカンの滅亡や衰退に関与した話)も含めて、面白かった。2011年の本だが、現状の中、こうした事例からデマやパニックを避けるためにも教養となる。
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人類が栄華を極める(人口が増える)ところに感染症あり、人類の歴史と感染症の関係を古代文明から現代に到るまでを紐解きます。黒死病として恐れられ歴史上もっとも有名な感染症であるペストも中国が起源だったことや、インドがカースト制を敷いて異なった階層の接触を禁じたのは感染症対策だったことなどもとても興味深く読みました。