投稿元:
レビューを見る
学校と音楽をモチーフに少年少女の揺れ動く心を瑞々しく描いたSchool and Musicシリーズ第二弾.今作は18歳高校生の一哉が難解なメシアンの楽曲と格闘しながら苦い心の傷を克服していく青春物語.読みやすさもあるが,何より文章がとてもキレイ.情景が自然と頭に浮かぶ.守り人シリーズの上橋菜穂子さんに天才と言わしめるだけのことはある.
投稿元:
レビューを見る
半年前に読んだ「第二音楽室」の姉妹編。作者のあとがきによれば、2冊合わせてひとかたまりみたいだけど、尺の関係で2冊になったみたい。
前の本は、音楽をモチーフにしながら、小学生から高校生の女子の心情が描かれていたけど、この本の主人公は高校男子の一哉。
これが敬虔な牧師の父を持ち、しかし母は二人を置いてドイツ人のオルガン教師のもとに走った過去を持ち、彼自身はオルガンの才能を持ち高校のオルガン部で難解なメシアンに挑むって設定。
自分の才能を持て余しながら自分が何をやりたいのか良く分からない焦燥感や訳も分からず作った人との壁の間を行きつ戻りつする浮遊感が、全編通じてぐつぐつと語られる。
これはこれで良いのだけれど、もはや一哉の父の年齢もとうに超えた私にとっては、殆ど語られないけれど、息子との距離をどう保ったらよいのか悩みながら、聖職者の仕事に打ち込まなければならない、父の苦悩のほうが気になる感じ。
最初の設定には少しゾクゾクしたのだけれど、父や母の“罪深さ”がそれほど深刻に語られることはなかったので、その分減点。
投稿元:
レビューを見る
オルガンを弾く高校生の話。
ピアノを弾けるのもすごいと思うけど
オルガンはまたそれも素敵だよね。
パイプオルガンなんてなおさらに。
親の性格、親の有無、育った環境が
人格形成に影響を与えることが身にしみてわかったから
途中はいろいろ思うことがあったですよ。。
投稿元:
レビューを見る
メシアン「神はわれらのうちに」をyoutubeで探して聞いてみた。これを選んで弾く高校生?たしかに、よほど屈折した人格だ。それをしつこく書いていて、今作はあまり楽しめなかった。対になる作品があったとは知らなかった。早く読んでみたい。20131221
登録しようとして、過去の投稿が出てきて驚いた。過去に読んだのか!怖い、気付いてないなんて。そして星5で登録しようとしてた。こんなに印象が変化するとは。20191003
投稿元:
レビューを見る
一哉のイライラ感が痛々しいほど伝わってきます。
刺々しさや、投げやり感…、思春期の頃の息子とかぶってしまいました
親ってなぜか正論しか言えないんですよね。
そんな言葉を求めていないのに…。
イライラ一哉を救う、音楽や仲間、そして親の生の声。
ラストのパイプオルガンの荘厳な響きがグワーッと鳴って
一哉が浄化していくようでした。
投稿元:
レビューを見る
佐藤多佳子の聖夜を読みました。
School and Musicというシリーズで書かれた小説とのこと。
主人公の鳴海は小さい頃からオルガンを弾いていたので、ミッションスクールの高等部でオルガン部に入っています。
鳴海の母は牧師の父を裏切って駆け落ちしてしまったため、彼はトラウマを抱えて高校生活をおくっています。
母親が好きだったメシアンの曲を選んで練習をするのですが、自分のできばえに納得が出来ません。
発表会当日鳴海は演奏をすっぽかしてしまうのでした。
鳴海と彼を取り巻く友人たちとの交流が温かく描かれていました。
投稿元:
レビューを見る
School & Musicシリーズ第二弾。
前作が短編集だったのに対して、本作は一作で一冊。
主人公は、キリスト教系の高校でオルガン奏者を弾く
高校三年生男子。オルガン部の部長も務めている。
牧師一家で育ったり、母親が出て行ってたりと
かなり普通ではない生い立ちのためか、
性格はかなり屈折している。
といっても、物語が主人公の一人称で語られるため
読んでいる我々には分かる訳で、周りの人からは
そこまでひねくれているとは思われていない様子。
その証拠に「隠れファン」が結構いるとか(^ ^
その彼が、文化祭で発表するオルガンの難曲に挑みつつ、
音楽のこと、自分のこと、家族のこと、過去のことなど
様々に思い悩み、時に成長し、時にやけを起こし...
短い期間にいろいろな人と出会い、経験をする中で
少しずつ成長を見せて行く、というお話。
それほど大きな事件が起きる訳でもなければ、
感動の涙にむせぶエンディングが用意されてもいない。
むしろ「大舞台の前日」で物語が終わっており、
ハッピーエンドかどうかすら分からない(^ ^;
それでも、当人が自覚しているかどうかは別にして、
主人公の中で何かが変わり、確かに成長が見られる。
後輩と交わす視線一つでも、それが感じられるほど
作者は主人公の心象を丁寧に描き出している。
抑えに抑えた静かな文体で、大きな事件もないのに、
何もないはずの空間から魔法のように「物語」を紡ぐ
この作者の力量はハンパない(^ ^;
中山七里さんの岬洋介シリーズと同じく、
本作でも印象的な「演奏シーン」が数多く出てくる。
中山氏とはまた違うアプローチの「高校生なりの感性」で
描かれる演奏シーンは、これまた説得力がある。
また楽器に向かっている以外のシーン、たとえば
歩道橋の上から車や人を眺めている場面などでも
「音楽」を感じられる描き方をしているのも見事。
いやはや本当に「ハズレのない作家」である(^ ^
投稿元:
レビューを見る
【この心の震えは、祈りに似ている】“俺は記憶のないころから鍵盤に触れてきた”。聖書に噛みつき、ロックに心奪われ、メシアンの難曲と格闘する眩しい少年期の終わり。
投稿元:
レビューを見る
『東京ピーターパン』小路幸也に続き、音楽を題材にした作品です。
『ピーターパン』の星矢も、『聖夜』の主人公の一哉も高校生です。しかし、面白い位「似て非なるもの」です。
引き篭りの星矢の音楽はロック、一哉は聖歌やクラシックを弾く高校オルガン部です。星矢の母親は病死、一哉の母親は不倫の果ての離婚です。そして父親は僧侶と牧師。
『ピーターパン』が事件中心に軽快に進むのに対し、『聖夜』は心象を中心に重厚にじっくりと進行します。
佐藤さんの上手さを感じさせる作品です
投稿元:
レビューを見る
きれいなお話だった。
要約するなら「辛い過去を抱えた多感な17歳の少年(一哉)の夏休みから聖夜にかけての成長物語」だけど、その過程の彼の心の動きを丁寧に描いている。
母を求めて求めてもがいている彼の辛さがたまらなくて、ぎゅっと抱きしめてあげたくなる。
天野さんの音楽に対するまっすぐな気持ち、祈りのような音が彼を変えていく。だけど、安易な恋物語にもっていかなかったことが好印象。
母親からの手紙が読みたかったなぁ~
投稿元:
レビューを見る
School and Music第二弾。第一弾が短編と中編が四つの「第二音楽室」第二弾は長編が一つの「聖夜」前作のさわやかな感じもよかったけど、重たくても主人公の気持ちが丁寧に描かれている「聖夜」の方が好きでした。正しくて神様みたいな父親が、らしくない普通の父親としての思いを、感情をさらけ出した会話が一番印象に残っています。音楽やキリスト教などわからないところもあったけど楽しめました。上橋菜穂子さんの解説もすごくよかったです。
投稿元:
レビューを見る
読んでいくうちにどんどん引き込まれていった。
私にはすんでのところでの勇気がなくて彼のように冒険(?)できなかったことがとても悔やまれる。
投稿元:
レビューを見る
主人公は、真面目な牧師の父、鍵盤楽器奏者の母の間に生まれた鳴海一哉という。
オルガンやピアノについては、高い技術を持った少年。
母はだいぶ前に家を去り、母のこと、母が好んで弾いたメシアンのオルガン曲のことがずっと心にわだかまって、どこか斜に構えた風になっている。
学校のオルガン部の部員やコーチとの関わり、同級生の影響で、少しずつ音楽と率直に向き合うことができるようになっていく。
そうした彼の成長の過程が美しい。
ただ、文体のせいなのか―ちょっと違和感があって、すっと物語に入り込めなかった。
なぜなんだろう?
最初の2ページくらいを読み進めて、語り手でもある主人公が男子高校生だとわかったときは、結構衝撃的だった。
時代も、現在の二、三十年前あたりか?
作者が佐藤さんとわかっているからか、大人の女性が語っているようにしか思えなくて…。
投稿元:
レビューを見る
私はこの作品に郷愁を感じました。
カトリックの初等部から大学まである一貫校の高等部に通う、主人公鳴海一哉は、父は牧師、母は元ピアニストです。父と母はドイツでバッハを通して知り合いましたが、母は一哉が10歳の時にドイツ人のオルガン教師と出会い、離婚してドイツに渡ってしまい、祖母と三人で暮らしています。
一哉はキリスト教を全く信仰していませんが、聖書研究会とオルガン部に所属しています。
メインの話はオルガン部の五人の活動なのですが、母が元ピアニストの一哉は、皆に一目置かれている存在です。
しかし、一哉はオルガン奏者として最も、素質のあるのは、五人の中では、天野真弓だと見抜いています。
俺は天野のデカい目をしっかり見て言った。
「あんたは演奏者だと思うね」
「昔、ピアノのコンクールで課題曲にバッハのインベンションがあったんです。全国コンクールの東京予選でした。私の二つ後くらいの順番の男の子が、ものすごくいい演奏をしたんです」
「何のコンクール?いくつの時?」
「俺も出てたかもね」
「その男の子、鳴海さんだと思います」
天野は迷いなく言い切った。
オルガンとバッハと礼拝と聖書。
私も、高校の三年間はカトリックの学校でした。
毎日、聖歌を歌っていました。
オルガンではなくピアノをやはり13年間習っていましたが、バッハは特に好きな作曲家で、先生に発表会でバッハを薦められて弾いたこともあります。
読んでいるだけで、泣きたくなるような、懐かしいものばかりの文章でした。
作者の、佐藤多佳子さんはあとがきで「作品のモチーフに合った時代を自分なりに探しました。キリスト教の信仰を持つことはなかった私ですが、中学高校の六年間、毎日、講堂の礼拝で聴いたオルガンの音と讃美歌の歌声は忘れがたく、思い出という以上に大切なものに思えます」とおっしゃっておられますが、ここにも佐藤さんの作品をこんなに懐かしく読んでいる者がいます。と叫びたくなる物語でした。
最後は、タイトル通り、クリスマス・コンサートの終わりとともに終了します。
投稿元:
レビューを見る
パイプオルガンの音が響いてくる。
難曲に挑む主人公がオルガンと対話し、母のこと、父のこと、宗教のこと、自分のこと…様々なものに向き合っていく。
クリスマス・コンサートまで書かれていなかったけど、自分なりに想像できるからこれはこれでいいな。