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罪を犯した者に、被害者が体験した記憶を追体験させることができる機械「0号」。
死刑に代わる新しい刑罰システムとして開発されるが、なかなか成果が上がらない。
そんな最中、開発者の佐田洋介教授が私的な目的で「0号」を使用したことが発覚し、研究所を放逐される事態に。
研究中止と思われたが、密かに部下の江波はるかが引き継いでいた……。
被害者の記憶を加害者に追体験させるシステムをめぐる、ヒューマンドラマ・SF小説です。
ライトノベルのような表紙の雰囲気から、若者向けに死刑の是非を問いかける軽めの社会派SFみたいなのをイメージしていたのですが、被害者・加害者意識から刑罰、宗教、原爆・テロリズムなど、様々なテーマが詰められた壮大な話で驚きました。
作中で、死刑廃止国と継続国の違いを話すシーン、日本では「仇討ちを是とする考えが根強い」という話が出て、確かにと納得してしまいました。
仇討ち・敵討ち・仕返し・復讐ものって人気あるんですよね。古くは忠臣蔵から落語の題材、かちかち山などの昔話。最近だと復讐がテーマの漫画も色々出てますし、いわゆる小説投稿サイトの「ざまぁ系」とかも。
犯罪だとしても、どこかに「あっちがもっと悪いのだから、これは正当な行為だ」という気持ちがあるからかもしれません。
肝心の「0号」の話。被害者の記憶を加害者に追体験させることが、本当に死刑に代わる贖罪として機能するかと考えると、私はちょっと難しいのではないかと思ってしまいます。
加害者の精神状態によっては、加害者が逆に被害者意識をもってしまう事に繋がらない? とか。というか、シンプルに身内が被害者なら加害者に記憶見せたくないなとか。日本の刑罰システムに全面的に賛成も反対もしているというわけではないですが、どういったシステムでも必ずどこかからは反発が出ると思うので難しい話ですよね。