投稿元:
レビューを見る
かくれんぼのシーンが怖い。
一女に惚れられる四男が狂わされちゃう話
性の話がただそれを目的としていたりレイプ的に表現されていたのが辛かった。
芥川わからん
61/100
投稿元:
レビューを見る
面白かった。
なんにも考えずに外の音に耳を澄ませて歩く時の感覚が同じだと思った。
肉を肉としか見ず、女を女としか見ず、優しくせねばという感覚は父親から染み付いたもの、ただの慣習である、という淡々とした「私」が新鮮であり、こんなふうに見えている男性が多いのかもしれないと思った。
男性だからこう、という決めつけはできないししたくないけども。
誰しも完全悪ではなくて、少し狡く優しく進んだ結果が破滅である。ああこんなもんきっと。
投稿元:
レビューを見る
今の大学生の日常。人間の日常。現実を生きること。自分の人生を考えること。人の人生を主観的に客観視すること。自分の人生を主観的に客観視すること。
一人の人間が寂しさと孤独を紛らわせながら、ただ生きている日常。特に目的もなく、目の前の使命と欲望に流されて生きていく。人間の生なんて目的はない。目的を作りそこに向かうことは、寂しさや孤独を紛らわせることでしかないのかもしれない。そうならば、それが女でも授業でもスポーツでもなんでもいい。紛らわせ続けることができたら、その日は良い1日になる。でも、良い日があったところで、不安がなくなわけでもなく、何か変わるかわからないし、明日が来るかさえわからない。
それでも、生きていく。1日を過ごす。
人それぞれ目的は違う。考え方も違う。それを受け入れる社会。みんな楽しくて達成している社会。誰とも比較なんてせず、みんな正しい社会。そんななか目的を持つことは難しい。だって、そのまま生きてても個性なのだから。褒められるのだから。だらだらしてたって良いよね。犯罪者でも良いよね。その日が良い1日になるのなら。
現代に同じ大学に通う学生として共感できる部分もあれば、できない部分もあった。
結論は、テキトーに過ごしても、だらだらしても、弱い立場の人も生きていられる社会であるべきだし、アイデンティティは人それぞれの社会であるべきだと思う。
でも、俺は普通に頑張る、頑張ろう
投稿元:
レビューを見る
肉と酒、女が好きなストイックなラガーマンが、政治家志望の元カノから、お笑いライブで出会った新入生に乗り換えるも、破局するというお話。
最後に暴力もあります。
自分が慶應生であることや、登場人物の服装・仕草が詳細に描かれているため、状況がイメージしやすかった。
将来安泰の公務員に内定をもらい、彼女や友達もそこそこいる主人公から空虚感が漂う。
政治家志望の元カノが幼少期に男から受けたトラウマにまつわる夢をラガーマンと別れてから頻繁に見るようになったという箇所が個人的にすごく共感できた。
投稿元:
レビューを見る
当方20代後半。主人公の人物像には嫌悪感に近いものを覚えるが、ゆとり~ミレニアル世代に通底するシニカルな価値観やコスパ至上主義をあからさまにしているのはすごい力量だ。
投稿元:
レビューを見る
芥川賞受賞作ということで読む。自分が学生時代、就活で追われた日々を思い出した。今の先行きが不明な社会で、かつ抑圧された世界で一瞬思うささいなこと、理不尽なこと、空気感が淡々と描かれていたので、さらっと読めた。タイトル、表紙に、帯のキャッチコピーにひかれる人は多そう。
投稿元:
レビューを見る
元ラグビー部員としてラグビーをコーチし、同時に公務員試験にきっちり備える、文武両道をいつも突っ走っているような男。
でも、快活さやエネルギッシュとは対極的な、このゾンビ感はなんだろう。
よく肉を食べ、よくセックスをする、若い男。
健康的であるはずなのに実質は不健康。
男の心が見えてこない。
ロールキャベツ男子という言葉があったが、その逆をいくのかな、陽介は。
熱い肉が冷めた心を包んでいる。
灯の手は冷たく感じる。(熱い肉)
一方、性欲の増した灯に辟易する。(冷めた心)
陽介は、ゾンビになることを回避しようとしてか、ラグビーのコーチの後、たくさん肉を食べて、そして日々肉欲に溺れる。
でも心は鍾乳洞のように虚ろでひんやりしたまま。
心の中で、笑いに手を打つ場面が何度もあった。
芸人志望の膝より、きっと、陽介の着眼点は笑いをとれる。
一般人が、十分滑稽に生きているということなんだろう。
陽介、この男は、ゾンビのように何度も復活するだろう。
こういう人は、きっと自殺なんかしない。
リビングデッドユース。
わりとたくましい。
大団円が近づくにつれ、中村文則の『銃』がチラつく。
不幸へのアクセルがかかり真っ逆さまに堕ちるという共通点。
『銃』は、銃を手にしてから男が主体的な人生を歩み始めたが、どこまでも銃という武器に支配され破滅に向かう物語だった。
かたや『破局』では、男の鎧は、こじんまりとした正義と秩序、そして僅かながらの筋肉である。
男には、この鎧がブカブカである。
心も身体もそれぞれ自分のものとして制御できないからだ。
しかしながらそれを冷徹に認識して、悲観もしない。
突発的に泣きたくなるが、なぜ自分が泣くのかわからないということを、よく理解している。
そのような男の振る舞いは空々しく、
おそらく他者からは演技のようにみえていたことだろう。
だからこそ演技できない局部(=陰茎)に向かって話しかける灯がいる。
男の着眼点は滑稽。
ふいに出現する陰毛にとらわれたり、麻衣子の服が食べ物の色にみえる。
この着眼点は、どんな事象にでも無意味に意味づけしようとする人間らしさの表れ。
この男の着眼点が描かれなければ、肉を食らい肉に溺れるだけのケモノのような生活しか男には残らない。
陽介の生活は、瑣末なことにとらわれ一喜一憂、アップダウンしながらも、全体的にはフラット。
それは近くでみるとさざ波だっているが、遠くでみると一枚の鏡のような海だ。
底になにが潜むやもわからない海。
心も身体もここに在らずで肉のみをひたすら求めるリビングデッドユースはこの海に漂うが、背面泳ぎをしていれば、「もっと早く見るべきだった」空に気づいたであろうに。
不特定多数の現代の若者のひとりを切りとっているのだが、
読後、読み手の中でいいたいことが膨れ上がる、そんな小説だった。
投稿元:
レビューを見る
自意識というものは果たして思考が先行するのか、或いは感情が先行するのか。
丁度先月(というのは2020年の7月)にこの問題に対して友人のアーティストと議論していた。その中で彼(ないしは彼女)はこの問題の答えを「生じた感情を思考が表立って判断している」或いは「潜在的な感情を顕在的な思考が判断している」と話していた。
個人的に今作はこの話に通じるところがあるのではないかと感じた(この話をしていた影響があるということは間違い無いとして)。
『改良』において主人公である語り手は「マナー」や「こうすべき」という思考に囚われ、自分はもちろん他人にもその「あるべき姿」を理性的に求めていた。地の文にあった「?」の象徴的な用い方が、その表れであるように思う。あれは一種、「今この状態の自分はこの感情を得ていなければおかしいのではないか」という語り手自身の疑問ではないか。そう考えた時、この作品が自分には語り手が自分自身を真に獲得していく物語に思えた。
が、もちろん作品はそれだけではなくて、サークル内で浮いた存在だと描かれていた「膝」が段々と周囲に同化していく様と、公務員というある種の「普通の将来」を目指しながらもラストに向けて変化していった語り手の対比。誰かから「何かをしてもらう」ばかりだった語り手が、唯一他者に対して行った「ラグビーの指導」という行為の決着など、多くのテーマ性に富んだ作品であったように思う。
面白い作品だったが妙に肌に合わない感じがしてしまった。そのため星3つ。
投稿元:
レビューを見る
芥川賞受賞作品ということで手に取りました。物凄く淡々とした文章で書かれていて、描写される肉体、恋や性的な部分に至るまで、全く熱情を感じさせない。奇妙なくらいに淡白なのですが、でもそれが却って人との距離が近いようで遠い現代を感じさせます。物語の中で唯一、人間らしいような温度があるのはお笑い芸人を目指している膝で、彼と主人公の対比によって物語のコントラストが強調されているように思いました。膝が語る「誰にだって欠点はあるはずなのに、そういうところには一切触れず、長所ばかり並べ立てないといけないんだよ。そういうの、気持ち悪くないか?」この言葉は実は主人公(の視点)も指しているのではないかなと。善良であるべきだと主人公は度々考えていますが、それは確かに間違いではないし、正しいけれど、でも見方を変えると膝が語るような「気持ち悪さ」が浮かび上がってくるように感じました。同著者の「改良」も読んでみたいです。
投稿元:
レビューを見る
ラストはんーという感じはしましたが、読んでいる間はなかなか面白い。クスッとさせたり、ほーとさせたり、なるほどと思わせたりする。
主人公の感情とそれを客観的に見るメタ認知が2人で語っているような、確かにそんなふうに考えるよね、というのが多かった。
投稿元:
レビューを見る
ハードポイルド調の文体、しかも小泉進次郎構文のような文章、これは新しい表現のチャレンジなのか。しかし文体にはどうも明確な嫌悪感を感じる。
途中からちょっとした出来事の積み重ねから主人公の立ち位置が反転する。(タイトルからして予測はつくが)前半の流れとの対照で描かれてる感じでまぁ鮮やかと言えばそうなのかもしれないが、あくまでも主人公の主観から見ての対照であり外からは変わりのない状態と思われるので、大きなインパクトがあるわけでもない。
主人公は「こうあるべきが強い」「融通が極端に効かない」というタイプで、そういう人は最近多い気はするが、そういう世代を象徴した文学という感じでもない。また、いくつかのエピソードが出てくるが本筋との関係をどう考えればいいのかもよく分からない。
というわけで、この作品の魅力をどこに感じればいいのかよく分からない。ここ数年の芥川賞はほぼ読んでると思うが、本当に初めて何故これで受賞作なのかが全くわからないと思った作品。選評をまだ読んでいないので今から文藝春秋買いに行こうと思う。
まぁそういう意味ではインパクトはあったのか…新しいものを受け止めきれない自分がいるのかも知れない。
(追記)
文藝春秋で選評読んだ。大好きな小川洋子さんが絶賛だった…選評読んでるとなるほど、とも。読書力アップしなければ。そもそもハードポイルド文体が苦手なのでその時点で内容が読めてなかったかな。
投稿元:
レビューを見る
「破局」 遠野遥(著)
2020 7/3初版発行 (株)河出書房新社
2020 8/15 8刷発行
2020 8/8 読了
自意識過剰な人が
ナルシストを主人公の小説を書いたんだろう。
でもきっとこの自意識過剰な作者は
「破局」もいくつか経験したんだろう。
大きな帯に自身の写真を載せたのは
さすがに不本意だと思っていると信じたい。
芥川龍之介賞を受賞するに相応しい作者
作品でした。
まあそもそも
作家なんてみんな自意識過剰だろうしねー。
投稿元:
レビューを見る
中学生でも理解できる平易な言葉遣いだし、内容もこんなのが文学なの?って感じくらいあんま中身ないんだけど、現代の奇書と考えれば納得。収束の仕方は緻密なんだけど後味は薄気味悪い・・やっぱり奇書。早く選評が読みたい。
投稿元:
レビューを見る
芥川賞受賞作、という事と、友人が読んでいたので気になって手に取りました。
体を鍛え、ラグビーのコーチをしながら、公務員試験の勉強をしている、普通にその辺にいそうな慶應生、という印象の主人公の日常でした。タイトルにある破局も、まあ予想できる展開という感じの運びでした。
文体は読みやすく、さらっと一気に読み切れます。
「悲しむ理由がなかった。悲しむ理由がないということはつまり、悲しくなどないということだ。」
投稿元:
レビューを見る
装丁のインパクトに惹かれて購入しました。
陽介が抱いてる虚無みたいなものは私自身日常の中で感じることがあったので通ずるものがあり、理解することができました。ただ陽介の自分の考えを全て肯定して、弱みに向き合っていない姿が印象に残りました。作者さんはこの本を通して何を言いたかったのか、私にはまだ見えていません。多分人によって解釈が違うのであえて答えを提示してないのかなとも思いました。もう少し時間をあけて読み直したいです。