紙の本
生活の中で思考すること
2021/06/13 13:00
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投稿者:gonta - この投稿者のレビュー一覧を見る
北海道新聞に連載されたエッセイをまとめたもの。
吉田さんの作品はどこか遠くに連れて行ってくれる感覚があるのだが、彼自身はあまり遠くに行かないタイプらしい。頭の中で遠くに行ける、生活の中で思考することの楽しさを教えてくれる一冊。
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現実から3cmくらい浮いているような、
5度くらい見える世界がズレているような世界を物語る人が、
目を向けるところをちょっと教えてくれるようなエッセイ。
「自分にご褒美」→幸福な時限爆弾
台所の時計→ある人にとっての標準時刻
なんて感じ
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小説家、吉田篤弘氏が新聞に連載していたエッセイ集。一遍一遍が短いのですっと読める。
本を開いてまず目に入るのが、緑色の罫線である。
文章の幅に合わせており、まるで原稿用紙に書かれた文章を読んでいるかのようだ。
一遍一遍に味のある手書きイラストと、アルファベットがついている。もしかしたら、26文字が重複することなくついているのかもしれない。
短いエッセイだが、一つの漢字であったり、「時計がずれた」というささやかな日常の事柄から、どんどん想像が膨らんでいく作家の脳の一部を垣間見れるような気がする。
好きな一遍は「幸福な時限爆弾」である。
この中で、筆者は「なぜ小説を書くのか」という問いかけに対し、自分を楽しませるために、いつでも自分が読んでみたい小説を書きたいと答えている。
このように、未来の自分を楽しませるために行う行いを、「幸福な時限爆弾」と呼んでいる。自分もこのように生き、幸福な時限爆弾を作っていきたいものだと思った。
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積読崩すときとか書評書くときは、なんとなく連想ゲームみたいに繋がるものを選んでしまう。何故ならそうしないと選べないほど溜まっているから…。
サイン本エッセイつながりで、こちらはおなじみ吉田さん。でもエッセイ読むのは久しぶりか。吉田さんのエッセイは、なんとなく短編小説と同じリズムなので、気づくとエッセイほど楽に読めてないことが多いのだけど、今回はちゃんとエッセイ的な軽さで読めた。内容というよりは、本文が原稿用紙みたいなデザインの中に書かれていて、その行間の余裕が、少し余裕のなくなっている今の自分にはちょうどよかったのかもしれない。この本のイラストも吉田さんで、これがまた悔しいかないい感じのゆるさでずるい(笑)。
クラフト夫妻の好きなところの1つとして、さぞ自然体でお洒落で満ち足りた暮らしをしているのだろうと思わせつつも、よくある「ふらっと海外に行く」「毎年どこぞの国でリセットする」というようなお洒落海外ネタがないところ(笑)。別にそれが絶対に嫌いだとかではないし、自分も行きたい国はたくさんある。でも東京を敬遠する人も少なくない中「飛行機は苦手。生まれてこの方東京からあまり遠くには行ったことがない」というのが好感度が高い。確かに見知らぬ土地や、ましてや海外に行くだけで視野は広がるのだけど「海外で視野を広げなさい」とか海外に行かないと話にならない的に話されると「まず自分の周りの土地のどれだけのことを見ているのだ」と反発したくなるので(苦笑)。
そんな冒頭からはじまり、ちらほら今後の作品になりうるカケラのようなものも見えながら、日常のごく身近な身の回りで起こったことを、いつも以上に飾ったりオブラートに包んだりせず、比較的そのまま感じたことを書いているような文章は「わかる」「そう思ったことある」といつも以上に共感が強く、ノーストレスでスルスル読めた。
ところで最近『星の王子さま』ネタをよく目にするのは、そろそろちゃんと読み直せってことだろうか。
あとこの本の絶妙なやわらかさ(たぶん表紙本体の紙によるところが大きい)が、とっても開きやすくて読みやすい。
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穏やかな気持ちで読めるほのぼのエッセイ。
私の好きなポイントはなんと言っても装丁。
原稿用紙調なのがとてもいい…!
使われている色もイラストもとても好みだし、可愛らしいカバーを外すとシックなブラウンの装丁になっているのも素敵。
個人的にはインテリア感覚で、所有欲を満たしてくれる本。
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この方のモノの見方(見え方?)、表現力、ほんとに面白いです。『天国の探偵』が読める日を楽しみにしています(^^)
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吉田さんのエッセイはこれが初めて。
吉田さんの経験された実体験よりも妄想話が面白かった。
吉田さんの描く物語そのもののようで、その発想がいかにも吉田さんらしい。
自分を「いまの自分」と「未来の自分」に分けて二人の自分を演じる話、「天国」は自分の記憶によって創られた世界で「天国」に到着したら探偵を雇って再会したい人(故人)を捜索する話、持ち運べる「夜の鞄」の話、体の中の状態を瞬時に読み取って病気等の警告をしてくれる「ミラー」の話等々、本当にあったら面白いだろうと思わせる、ちょっと不思議でユニークな吉田ワールドに惹き込まれた。
いつかこれらの妄想話から新たな物語を創ってほしい。
『あとがき』に新型コロナのことについて書かれていた。
「見えないもの」に対峙し、共存を余儀なくされている今、「見えるもの」をしっかり把握し注意深く凝視する必要がある、とあった。
肝に銘じよう。
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"地球" という奇妙な星の、"東京" というおかしな街で、「よく考えてみると、何か変だぞ」という26のお話。
毎晩眠る前に一話ずつ読むために、枕元にさり気なく置いているのが似合いそうな、オシャレな感じの本です。
最初のエッセイ「遠いところ」から、吉田篤弘さんの世界にスッと引き込まれます。
普段は気にもとめていないけど、「よ~く考えてみると」なるほどそうだな(そうかもね)と共感することばかり。
毎日代り映えなく同じ作業を黙々と繰り返しているような日常では考えないことを「よく考えてみる」ことができました。
(ネタバレになりますが)吉田篤弘さんに導かれながら考えたり共感したことの一部を紹介しておきます。
自分へのご褒美という考え方は、自分が常日頃実践していることに近いかもしれない。自分が2人いて自分Bが自分Aを励まし優しく見守っている。
なつかしさとは、どれくらいの時間がたったときに芽生えるのか。時間の隔たりのほかに距離の隔たりも加味されているのか。
「猫の手も借りたい」という言葉は300年ほど前に登場するが、300年経っても猫の手を借りて忙しさを解消する方法は確立されていない。
鳥は鳴き、犬は吠える、口編に人の㕥という字は使われていない。人は泣くが鳥は泣かない。
「騙されたと思って」は変な言葉だ。過去形を仮定している。
失敗を恐れず、あまり期待をせずに、ダメで元々、イチかバチか、私を信じて、のような意味をもっている。
旅先で読む本は自分の部屋で読むのとは明らかに違う、同じ本でも自分が日常の外に出ていることが大きい。
外で読むとゆっくり読める。ゆっくり読むと同じ本でも別の本のように読める。
本をゆっくり読むために旅をするとは、なんと贅沢なことかと思う。
星の王子さまが「本当に大切なものは目に見えない」と教えてくれた。
例えば、愛情、友情、信頼、誠実といったもの。
「心」は「見えないもの」の象徴で、真がついた「真心」はひときわ尊い。
では「見えないもの」の頂点に立つのは「真心」なのかと問われれば、やはり誰もが認めるのは「命」なのではと思い至る。
「本当に大切なものは目に見えない」というセリフは王子のものと思い込んでいたが、星の王子さまを読み直してみたらそうではなかった。
「見えるもの」を把握せずに「見えないもの」を探求するのはおこがましいことだと反省する。
そこで今思うこと。
未知のウイルスという「(本質が)見えないもの」と共存していくためには「(観測データという)見えるもの」をより注意深く凝視する必要がある。
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毎日1話ずつ読んだ。全篇滋味深く心に沁みわたるようなエッセイだった。一番最後の「見えないもの」は2020年1月に書かれており、「見えない敵をどれだけ可視化できるかが、人間の営みの重要な課題で、敵を可視化することで、命という曖昧なものに輪郭を与えてきた。」という一文にうなった。
あとがきの、見えないものと共存するためには、見えるものをより注意深く凝視する必要があるという言葉も現状を的確に射抜いていて心に残った。
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久々にエッセイ読んだ。
日々の、何気なく見過ごしていたり思い過ごしていることに気づき、言葉で表現している。
まさしく“見えない”ものを言葉にしてくれている。
なんとなく、あぁ私もそんなこと思ったことあるな、と改めて感じること部分も割とあった。
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高温多湿の梅雨の末期に
ようやく家に戻ってきて
風呂場に飛び込んでシャワーで
ひと汗流す
それから
冷蔵庫の氷をコップに入れて
とにかく冷たい飲み物をこさえて
一口飲んで
ほっ と している
冬だったら、
寒風の吹きすさぶ中
ようやく家に帰ってきて、
とりあえず外套とマフラーをはずす前に
ストーブの火を入れて
やかんにお湯を沸かし
熱々のココアをつくって
ほっ と している
そんな 感じの
こころがゆったりする瞬間の
エッセイ集
何気ない 普段の景色が
なんだか 愛おしく感じてしまう
お話しも素敵ですが
緑罫線の原稿用紙風も
いつものクラフトエヴィング社さんの装幀も
いかにも 素敵です
「幸福な時限爆弾」
「旅先で読む本」
の章が秀逸でした
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日々の中に隠れてしまう出来事を、色々な方向から考えるきっかけになりました。寝る前にゆったり読みたい一冊に出会いました。
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落ち着いた夜に読むといい本。エッセイ。 デザインとかが素敵な本。言葉を慎重に選んでいるかただなと感じました。
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こころがちぢこまっている。
時勢は回復に向かい、様々なものが雌伏の時を終えて飛び上がろうとしているのに、私には何もない。
帯電するような微かな恐れが身を包んでいる。
自室で読書することもできず、一冊片手に外に出る。
記憶にあったすてきなのみものは時を経て好みでない味に変化している。
それでも何か、枷がすこし軽くなったような思いがする。
奇妙な星のおかしな街で、もう少し生きてみる。
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吉田篤弘さんの書かれる世界観が大好きなのだけど、エッセイを読んで、その世界が生まれる理由を知れた気がする。
図書館で借りたけど、あとで購入して手元に置いておきたい。
◾️以下印象に残った文
-傷っていうのは、そこに人が生きていた証ですから。
-人生の楽しみは、この「幸福な時限爆弾」をいくつ仕掛けられるかにかかっている。
※幸福な時限爆弾=自分へのご褒美
-旅先で読んだ本は、ときに香ばしい山椒のようである。
◾️素敵だと感じた発想
「夜の箱」を持ち歩きたい