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今、世界中が新型コロナに怯おびえている。このウイルスは、国や社会のありようを変えるのか?経済、デジタル技術、グローバリズムなど多角的な視点から、コロナ後の世界を見通す書籍。
今回のコロナ禍では、多くの国で「接触追跡システム」のスマホアプリが導入された。
・アプリはプライバシー侵害に配慮し、個人情報が特定されない仕様になっている。だが、その動作条件はグーグルとアップルが定めており、両社が強大な力を持つ恐れがある。
・このアプリのシステムは、取り入れ方次第では、民主主義の脅威になりうる。追跡者を「感染者」ではなく、「反政府活動参加疑惑者」に変更することも可能だからである。
コロナ禍で、ズーム(Zoom)など、多数の人がコミュニケーションをとる「仮想集会プラットホーム」の利用が増えている。
・多くの職場で、社内や取引先との打ち合わせを仮想集会プラットホームで行っている。それは今後、企業と企業、企業と金融機関などの関係を、根底から変えるかもしれない。
・仮想集会プラットホームによる「人のつながり」は、国境を越える。そのため、人々に国家体制への帰属を義務付け、反体制派の監視を行うことで国家を維持している国では、仮想集会プラットホームは不都合なものとなる。
感染症への恐怖は、グローバリズムを一時的に止める。特に季節労働者や貧しい移民の移動が阻まれる。すると、安価な労働力に頼ってきた先進国(北の国)では、単純労働の単価が上がり、製造業などの作業拠点の国外への移動が進む可能性がある。
日本のような「北の国」については、低賃金の労働者たちの間での格差は縮小する可能性がある。海外から流れ込む競争者の減少によって、就労条件が若干の改善を見るだろうからだ。
一方、「割を食う」のは、中間層である。彼らの就労条件には改善する理由はなく、しかも経済停滞の影響を最も手ひどく受けるからだ。
コロナ禍で、世界政治における協調は失われつつある。
感染症対策を巡って世界が分裂する、「感染症対策ブロック」とも言うべき現象が出現するおそれがある。