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イギリス的な食べ物を、貧乏作家の悲哀を、酔うことを、自然や動物を、失われゆく庶民的なことごとへの愛着を記し、作家の意外な素顔を映す上質の随筆集。
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前半の、主に「トリビューン」などに書いた時評がとても興味深い。1940年代、彼は30代後半~40代だ。昔を懐かしんでみたり、暖炉の効用を説いてみたり、スポーツとその観戦が内包するナショナリズムを批判したりといっぱしの年寄りみたいな調子なのがおもしろい。当時のイギリス文化が垣間見える。娯楽は「大部分が意識を破壊する努力にすぎない」と言うのには思わずうなってしまった。なるほどと思いたくはないが、なるほどである。
戦争の影響が色濃くにじむ部分も多かった。
「春はよく「奇跡」だと言われるけれど、この陳腐な表現にも、ここ五、六年はまた命がよみがえってきた。ここ数年つづいた辛い冬のあとでは、また春が来るとは思えなくなるばかりだっただけに、まさに奇跡という気がするのである。」
後半は知人への手紙、そして最後はエッセイ。書評の仕事について書いたのや、ものを書く動機を分析したのがおもしろかった。
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オーウェルといえば1984や動物農場などの作品のイメージが強いけれど、このエッセイを読んで彼に対する印象が大きく変わった。特に1章の食事や日常生活に関する内容がとても面白い。電車の中で笑いをこらえてしまうようなところさえあった。筆者が言うには、おいしい紅茶を入れるには11点もの譲れない条件があるらしいし、理想のパブの条件をすべて満たすパブは実在しないらしい。
私がこの本をこれだけ面白く読めたのは、日本語訳がまた実に良いものだったからというのもあると思う。たいていの翻訳ものは、読んでいて何を言っているかわからなかったり、ジョークが通じなくなっていたり、「本当に原文でこんなこと言ってるのか?」と思えるようなところがあったりするものだけれど、この本についてはそういう点が全くなく、終始とてもリズム良く楽しく読むことができた。一見とても真面目そうな雰囲気の文体なのに、実はものすごく面白いことを言っていたりして、そのギャップで余計に笑わされた。翻訳されることによって作品がより良いものになるという好例!
個人的には「クリスマスの食事」がとても面白くて、笑いたい気分のときに何度も読み返している。
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1984の作者ってこういう人だったのか、という驚き、安心。最後の「なぜ書くか」があって1984の見方が変わった。
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ジョージ・オーウェルの随筆集。「Ⅰ食事・住まい・スポーツ・自然」完璧な紅茶の淹れ方についての議論はつきなさそう。ガラクタ屋の雰囲気やスクラップスクリーンに妙な魅力を感じる。「Ⅱジュラ島便り」この章は個人に宛てた書簡が中心なので、当時の生活風景や人となりが伝わってきて好き。「Ⅲユーモア・書物・書くこと」書物対タバコ……現代の貨幣価値で日本円に換算してみたい。自然や庶民への愛情を感じる一冊だった。
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『1984年』のジョージ・オーウェルの随筆および書簡集とあったので読んでみた。
これを読むと、ごくありふれた生活感情の持ち主だったことがわかる。紅茶の淹れ方のこだわりや、ビール大好きなところなど、何だか微笑ましくさえ感じられる。だからこそ、『1984年』や『動物農場』がこの人によって書かれたのだということに意味を感じる。当たり前の生活感情を持った一個人だからこそ、当たり前でない「何か」が生活の中に忍び込んでくることにアンテナを立てられたのかもしれないということ。そして、当たり前の生活感情と非凡な表現能力は乖離しないものなのだということ。当たり前に暮らしながら、当たり前でない何かを残せることに、ますます畏敬の念が深まった。
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タイトルになっている紅茶の淹れ方(ミルクが先か紅茶が先か)から始まるエッセイ。
冬に故障する水道管や終わらない皿洗いに文句を言っていたりはわかるぞ、となる。
手紙に丁寧に自分の住む田舎への行き方の記載(何時の船に乗って、ここからはハイヤーで、この町で宿をとった方が、等)が細かく丁寧。
しかしよくよく読んでいくと戦争や国家の体制への考えなどは『1984』の著者なんだなあ、と感じさせるものがある。
巻末の「ウクライナ版への序文」は今のロシアとウクライナの戦争状態を想起する。
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オーウェルの本が好きなので(まだそれほどたくさん読んだわけではないけれど)随筆も面白いんじゃないかと思い購入。イギリスの歴史や文化を知っていれば面白さが倍増すると思う。
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津村紀久子さんの「苦手から始める作文教室」の中で、紹介されていたので、すぐ本屋で買って読みました。「動物農場」「1984年」など、全体主義に対する反体制の強い作品のイメージがある著者の柔らかな目線で、綴られる随筆集です。紅茶の淹れ方や、クリケットのことなど、日常で思うことをありのままエッセイとして描いているので、とても読みやすかったです。著者のイメージが180度変わりました。
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言わずと知れた『動物農場』『1984年』の著者、ジョージ・オーウェルのエッセイ!どんな人なのかと思ったら、回顧主義者のちょっとメンドクサイおっさんで、食器洗いに苦心している庶民的なところもあり、全文通して真面目な文体なのにめっちゃ面白い人だった(interestingというよりfunny)!
第2部の『ジュラ島便り』はジョージ・オーウェルが知人にあてた書簡をとりまとめたものなのだけど、この時に、あの『1984年』を書いていたんだなぁ、と思うと不思議な感じです。この手紙を書いた2、3年後には亡くなってるんですよね。人生は短い。
もし、ジョージ・オーウェルが現代に蘇ったら、私なら間違いなく、いの一番に彼に食洗機を見せる!!
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2023.2.14市立図書館
図書館の「紅茶とコーヒーに関する本」の特設コーナーでふと手にとった。何年か前に新聞の読書面でみつけた紹介記事を切り抜いて読んだことがある気がする。しかも文庫化に当たり「『動物農場』ウクライナ版への序文」が収録されているとある。2020年夏といえば、クリミアですでに揉めてはいたが、まだロシアが攻め入る前だけれど、どうして1947年に書かれたその文章が文庫化するときにあえて収められたのだろう? それで気になって借りた。
「動物農場」と「1984年」で名高いオーウェルのB面、エッセイを集めた本。そのオーウェルが第二次大戦後まもなく50年も生きないうちに亡くなっていたとは。
それはともかく、エッセイは創作とはうってかわって、個人のこだわりをユーモラスに開陳して気楽に読ませる文章でおもしろい。後半の文学に関する文章も、よみながらあれこれ考えさせられた。
最後に収録されたウクライナ版「動物農場」への序文は、手際よい自己紹介とこの物語を書いた経緯が説明されており、当時ソ連邦下にあったウクライナの人々は「動物農場」を読みながらなにを思ったのだろうと考えるよすがになった。
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紅茶へのこだわり、未来予想、作家志望の人へのメッセージまで、盛りだくさんのエッセイ36編。
『動物農場』の著者の少しプライベートな(?)一面も知れて、面白かったです。
また、私も物事に対してもっと真剣に向き合い、意見を持とうと思いました。
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津村記久子『苦手からはじめる作文教室』でおすすめの本として紹介されていたので購入したもの。読んだばかりの荒川洋治『文庫の読書』でもとりあげられていて期待が高まる。
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J.オーウェルというと1984年と動物農場のイメージしかなく、生活のために書評や短文エッセイを書いていたとは知らなかった。
文化や自然に関してあくまで保守的な態度である点、産業主義的な娯楽や全体主義に関しては批判的である点、洞察力に優れている点はイメージ通りだが、あの理知的な文章で食器洗いに毒付いているのには笑った。先進的技術憎しではなく、あくまでそれによって社会に齎される負の影響に懸念を抱いていたのだということがよく分かる。
また、オーウェルの書物・文章への美学と拘りを知ることができた。
彼が風刺した未来の只中であっても、「一杯のおいしい紅茶」を楽しむ心の余裕は持ちたいものだと思う。
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良かった!イギリス人だね~。笑 と思わず言ってしまうような皮肉っぽさが面白い。紅茶のこととかスポーツをバカにするのとか文筆業のこととか。
動物農場読んでない気がする、読まないと。