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精神疾患と言語・方言の関係というユニークな研究。奥様とのやり取りから研究が始まるところがリアルというか、面白いというか、・・・うまく言語化できませんが、親しみが持てる本です。内容も勿論興味深いです。
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発達障害児に関わる仕事をしているので、興味深く読みました。
私は首都圏出身で職場も首都圏なので、「自閉症児は方言を使わない」を肌で感じることはありませんが、なぜ方言を使わないのかについてエビデンスを示しながら書かれており、とても勉強になりました。
ただ、やはり大学の先生の研究結果を書いたものということで内容は難しく読了までにだいぶかかりましたが
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障害児教育に関わる国語科教員免許保有者としては、どの角度から見ても興味深い内容だった。
言葉のもつ役割、そこにある意図、意図のやりとり、その結果としてのコミュニケーション、その表層にある方言…
現場の経験値と研究の見地がいい形で交わった結果の産物。
もし「やっぱ自閉症って津軽弁しゃべんねんじゃね」が妻の発言じゃなかったら、筆者もここまでの(10年も!)研究に至らなかったのではないか?
言葉とコミュニケーションについても自閉スペクトラム症についても理解が深まる一冊。
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著者は教育心理学者。著者の妻は臨床発達心理士として現場で働いている。
2人は弘前に住む。
著者は博多生まれだが、妻は津軽生まれ。津軽弁に関しては妻がネイティブである。
ある日、仕事から帰ってきた妻が、何気なく「自閉症の子どもって津軽弁しゃべんねっきゃ(話さないよねぇ)」という。著者は、「それは津軽弁をしゃべらないのではなく、自閉症児の音声的特徴が方言らしく聞こえないということでは?」と反論する。自閉症の人は一本調子の独特の話し方をするのだ。
そこで収まるかと思うと、妻は気色ばんで、いや、そういうことではない、と言い返す。
お互い、専門家同士の意地もあって、思わぬ口論になってしまう。
一呼吸おいて、著者は考える。
「じゃあ、ちゃんと調べてやる」
そこからこの研究が始まる。
「自閉症児は津軽弁を話さない」は本当なのか。妻によれば、現場では共通認識なのだという。
著者はまず、周囲への聞き取りから始める。どうやらそういう認識はあるらしい。
ではアンケートを取ってみる。まずは青森県で。そして秋田県で。
著者は途中までは、この話を根拠のない噂と捉えていたが、調査を進めていくにつれ、徐々にどうやら本当らしいことが見えてくる。
しかも、当初著者が考えていたような、自閉症者特有のイントネーションのせいではなく、方言特有の語彙も自閉症者では使われないようだ。
ではそれは、津軽あるいは北東北のみで見られることなのか。
調査対象を全国にしてみる。
方言が特徴的である京都・舞鶴・高知・北九州・大分・鹿児島をピックアップする。そして自閉症(自閉スペクトラム症:ASD)の子ども、知的障害(ID)の子ども、地域の子ども一般で、方言使用に差があるかどうかに関して、特別支援学校の先生を対象にアンケートを取る。子どもの発現を直接調査するのではなく、先生の印象調査としたのは、比較のペア形成が困難であることや、方言であるかどうかを判断する評定者の確保が難しいことなど、いくつか理由がある。地元の先生であれば方言の判別は簡単だし、ある程度の傾向は見えてくるはずだ。
結果として、全国各地で、IDの子ども・地域の子どもに比較してASDでは方言使用が少ないことが見えてきた。
この結果を学会発表してみると、反応は大きく2種類だった。
1つは、美しい興味深い結果だというもの。もう1つは、そんなことは当たり前でわかりきったことだというもの。
しかし、著者以前にこうした研究を体系的に行ったものはなかった。
現象がわかっていて、それが「当たり前」で放置しておいてそれでよいものだろうか。
著者はさらに、歩を進める。
ASDが方言を使わない傾向があるとして、その原因は何か。
そこから話は、方言というものの特性、使用されるシチュエーション、そしてASD自体の特徴へと移っていく。
方言が語られる状況というのは、改まった場よりも、家庭の中や近所の気心の知れた人、つまり、親密さを現す場が多い。一方で、ASDの人は他人の感情を推し量るといったことが苦手だ。相手がどう思っているかを感じ取り、それに合わせて自分の態度を変化させることが不得意なのだ。
そうなると、あまり感情が入り込まない公の場で話される言葉の方が、なじみやすく模倣もしやすい。テレビやビデオなどで(特に「繰り返し」)提示されるものを吸収する傾向があるのではないか。
そこから派生して、ではASDでも方言をまったく話さないわけではないがそれはどういうことか、ASDの子ども相手に何かを教示する場合、「~して」や「~しなさい」より「~します」「~です」を使うことが多いがそれはどういうことか、といった話題も盛り込まれる。
結論としては、どうやら、夫婦喧嘩は妻に軍配が上がったようである。
「自閉症は津軽弁を話さない」は本当だった。
だが、そこは著者も専門家、転んでもタダでは起きない。実はこの命題は、当初の印象以上に、ASDへの理解や、方言と標準語の使われ方の違い、ひいては人のコミュニケーションの根底にあるものといった、奥深い洞察へと続くものだったようである。
心理学の調査・研究というのはこのように組み立てられていくのか、というのも興味深い。
ちょっと疑問なのは、標準語という概念がないような昔、よその地域との交流も稀だったころ、そしてテレビやビデオなどなかったころでも、ASDの人というのはいたのだろうし、そうした人はどうだったのだろうかという点だ。そしてまた、標準語というのは、元は関東の一地方の「方言」であるわけで、そうした地域ではどうなのかということ。明確ではなくても、何らかの「差」は出るのか。
この研究はさらに続いていくのだろうし、今後の展開が発表されることがあるのであれば、楽しみにしたい。
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自閉スペクトラム症(ASD)の子が方言を話さないというのは、自身の息子の印象とも合っており興味深く読んだ。
息子は小1で三語文程度の発語はあるが、本書に書かれているようにビデオや本からその場に応じたセリフを抽出したような話し方をする。
そのような現象が、ASDが持つ意図理解の困難さに起因するという説が述べられていて、なるほどと思った。
本書の段階ではまだ仮説の段階のようだが、言語能力障害の原因の検証が進むことを願っている。そして、息子とのコミュニケーションがもっと取れるような日がくればうれしい。
次は本書の続編の「リターンズ」を読んでみる。
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保健師や特別支援教育関係者の間で暗黙の了解として知られていた「自閉症児は方言を話さない」現象。
これを研究テーマとして全国調査した結果をまとめた本書。
タイトルに惹かれて読み始めたが、アンケート結果の羅列が続くので読み物としては面白くなかった。
斜め読みとなってしまったが、ASDは相手の意図を理解する力が弱く、そのコミュニケーションの問題から相手に合わせた言葉遣いをするのが難しい。
ことばの学習も周囲からではなく、テレビやビデオなどから学習するため結果的に共通語になる傾向にある、ということなのだと思う。間違っていたらすみません。
全体を振り返って最後に結論をまとめた章がたぶん「おわりに」なのだと思うが、これも筆者が何を言いたいのかがいまいち伝わってこず、ただ実施した調査を時系列で並べたのみという印象を受けた。
どの調査でどういう結果が出て、こういうことが考えられるということを明記して欲しいなと感じた。
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内容としてはとても勉強になり、なるほど〜と思うことも多かった。しかし、重複する文章が多くてちょっと斜め読みしてしまった…
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書店で最初の"発端"を読んでその文のおもしろさに惹かれ、購入して読み終わったあともいい本に出会ったなぁとしみじみ感じました。
自閉症の子どもがどうして方言を使用しない(覚えない?)のかという疑問を、地元の身近なところからもっと広い範囲へ、内容へと突き詰めていく過程がとてもおもしろかったです。
また要所要所で出てくるたとえ話が的確でわかりやすいのもよかった。
何気なく使っている日常の言葉にもいろいろなルールや特色があること、コミュニケーションをとる上で細やかな気遣いや心の機微で言葉が成り立ってることがよくわかる一冊でした。
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「パターン・シーカー」にあるように自閉症のシステム化マインドも人類にとって大事なものだったわけだが、一方で共感性や社会性を苦手とする為に彼らは方言を話さない
大なり小なり誰にでも自閉症マインドはあるのかも
スペクトラムなんだし
面白かった!
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途中から少し方向性に迷いを感じたが、さまざまな調査の方法は勉強になった。方言を話すというコミュニケーションが困難なのだと思う。言語習得は自然言語と学習言語のふた通りある。
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ASD者は社会性のある交流に難があり、地元での交流という用途の方言が獲得できないってのは腑に落ちたかな。
ただ逆に、一般動詞として共通語の語彙は獲得できるのも不思議に思った。
一部の共通語にない語彙すら習得できないってのは不思議だなあ。
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図書館で借りた。
タイトルを見て興味を引いて、借りてみた。著者が大学教授も勤めたセンセイで、その奥さんも教育現場に勤めている人で、奥さんが「自閉症の子って津軽弁を話さないよねぇ」と雑談でぽろっと言った一言がセンセイの研究テーマになり、深く調査していく…というストーリー。教授センセイの本なだけあって、アンケート調査結果や、方言とはそもそも…など綺麗に整理されているが、かと言ってお固く難しい文章でもない。読みやすいので、気軽に読めて、かつ深く学べる本だ。
私自身は身近に自閉症の人は居ないが、東北出身ということで方言を覚えるあたりの話は気になったところ。
具体的な「かず君の場合」は非常に興味を引いた。家族の話には興味を持たないがアニメなどの話で語彙を覚えていく感じは、(子育ても経験していない私だからか、)非常に新鮮に見えた。