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チョコレートショップと、書店が店舗を共有していて、
コーヒーがある、エスプレッソもある。
くつろげるソファーやテーブルがある。
なんと危険な店だろう!
〈チョコレート&チャプター〉
近所にあったら大散財するだろうその素晴しい店は、アメリカ、メリーランド州の町ウェストリバーデイルにある。
チョコレート店を経営するのは、ミシェル・セラーノ。
チョコレートアーティザンと呼ばれ、試食用として振る舞われるキャラメルは、ゲートウェイ・ドラッグ(麻薬の第一歩)とあだなされる、腕の良いショコラティエだ。
書店を経営するのは、エリカ・ラッセル。
かつて神童の名をほしいままにし、スタンフォード大学で修士号をとった、司書風眼鏡の才女である。
二人の店〈チョコレート&チャプター〉は、様々な会合、編み物サークル、ブッククラブ、誕生日パーティーなどにも使われ、壁には地元アーティストの絵を展示しているという、地域密着型の人気店である。
リニューアル1周年を記念して、ファッジ・コンテストを企画していたのだが、つつましやかなその企画は、なぜか町を挙げて行う一大イベントへと膨れ上がり、ミシェルとエリカは、かえってイベント準備にかり出される始末だ。
閉店後の店には、日々委員会の面々が集まり、打ち合わせが行われる。
そのおともに出されるのはコーヒーと、それぞれが好むチョコレート、
バルサミック・ドリーム、
マヤン・ウォリアー、
ベーコン・アンド・スモークト・ソルト・トリュフ、
うらやましいことに、アルティザン・チョコレートの数々だ。
そして、お定まりのとおり、事件が起こるのである。
読みながら何度も思ったのは、近頃のコージーミステリーは、しっかりしているなあということだった。
コージーミステリーには、ご存じのとおり、定番というものがある。
そして、残念なことながら、品質にはムラがある。
定番はこうだ。
恋愛に不器用あるいはバツイチの30前後の女性が、特技を生かして、多くの読者が憧れる店――お菓子、お茶、コーヒー、レース、人形、アンティークetc.etc.etc...素敵な専門店を始める。
地域の多くの人に愛され、ライバルがいるにしても、その店はとてもうまくいっている。
そこで、ある日起きた事件を、警察ではなくなぜか店主が見事に解決するのである。
そしてその専門店の扱う「品」が、作者の愛と技量をあからさまにしてしまう。
たとえばお菓子やお茶といったその品に、愛と知識が足りなければ、その描写は弱くなり、店の存在は白々しくなる。
といって、愛に任せて語られまくり、なにについてもそれに絡めて述べ立てられてしまうと、これは正直うっとおしい。
さらには、品についての愛が勝って人物描写が疎かになってしまうと、話として成り立たなくなる。
残念ながら、そのような作品も数々存在している。
コージーは甘っちょろいと思われるだろうが、実はさじ加減の難しい分野なのだ。
『やみつきチョコはアーモンドの香り』は、その点、うまかった。
チョコレートと本という、二つのものがテーマにある。
だから、なにかに対して、一途に語られすぎることがない。
『チョコレートは情熱と愛を表現するものだという人もいるが、わたしにとってチョコレートは食べものであり、家族であり、友だちだ』(33頁)
ミシェルのチョコレートへの愛は、ほどよい。
エリカの本への愛は、幅広い。
店舗ではふつうの本を扱い、ネットでは稀覯本を扱い、店舗の上部にはコミックコーナーをつくり、スーパー・ヒーロー・オタク・チームなるコミックブッククラブまで設立したというのがその証だ。
話の語り手はミシェルである。
快活でわかりやすい中に、
『みんなが自分たちの人生にはもっとチョコレートと本が必要だと思うだろう』(12頁)
などというつっこみが魅力の語り手だ。
しかし、探偵役は、まずミシェルとエリカの二人で行う。
経営のパートナーで、ハウスシェアもしている、親友同士の彼女らが、それぞれの向き不向きを生かして分担するのだ。
そこに、エリカの兄ベンジャミン、ミシェルの憧れの人も加わり、探偵活動は、コージーでは珍しいチーム戦となっている。
ベンジャミンはジャーナリストなので、調べることについてプロである。
ピンチの時の対応も手慣れたものだ。
「菓子屋と本屋で、そんなにうまくいくかなあ?」というふとした疑問を抱かずにすむ。
ミシェルにも兄がいるのだが、このレオとミシェル兄妹の事情は、なかなかハードなものだった。
ミシェルの語り口は重くなく、むしろさらりとしたものだが、レオにまつわるエピソード、とくに最後の場面には胸に迫るものがある。
今時のコージーミステリは、まったく甘っちょろくない。
アメリカでこのシリーズは、2020年現在3巻まで出ているらしい。
ミシェルのつっこみまじりの語りも聞きたい、ミシェル&エリカのコンビと、そのチームの活躍ももっと見たい、チョコレートのレシピもさらに知りたいし、ウェストリバーデイルの町も興味深いので、さらに翻訳が出ると嬉しい。
読みながら、チョコレートが――しかも高級でお値段のするチョコレートが、やたらとほしくなるのには困った!
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あんま、あわんな。チョコレートは美味そうやけと!なんか、かつたるい! 犯人は思い切った構成やけどね。面白いちゃあ、面白かったけれど、まあ、次は読まないな。
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シリーズの続きを読みたい!
チョコレートショップと書店が一緒になったお店が舞台というだけでワクワクするんだけど、ショコラティエのミシェルと書店主エリカの、タイプの違う2人のコンビの掛け合いもよかった。
ミシェルとエリカのそれぞれの兄のレオとビーンも魅力的。主人公達が、それぞれ得意分野を生かして助けあったり、人に助けを求めながら問題を解決していくのが意外と新鮮だった。
1人で突っ走るタイプの主人公も嫌いな訳じゃないけど、これからは女同士の連携という表現が増えて行く時代なのかも、なんて思ったりしました。
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チョコ職人と書店主の事件簿 第一弾。
親友同士のミシェルとエリカが営む、書店併設のチョコレートショップ・「チョコレート&チャプター」。
ある朝、ミシェルが出勤してきたら店内で、写真スタジオを営むデニースという女性の死体を発見してしまい・・。
まず、舞台となる「チョコレート&チャプター」というチョコショップ&書店という設定にそそられてしまいます。
ショコラティエのミシェルは自分の仕事に誇りを持ち、何よりチョコレートを愛してやまない職人気質の女性で、親友で書店主のエリカは頭脳派でなんでもテキパキと冷静にこなす才女タイプ。この二人のバランスが良いですね。
二人でこの夢のような素敵なお店を経営し、週末の町おこし(?)イベントに向けて動いていた矢先の惨事です。
特にミシェルは自分の作った商品のチョコレートを殺人の道具に利用されて、店は閉鎖、チョコレートは回収されたあげく、学生時代からの因縁でミシェルを目の敵にしている、レポーターのリースにあることないことを書かれて拡散されるという、もう“踏んだり蹴ったり”状態でお気の毒なのですが、彼女と周りの登場人物達との会話がやたらポップなせいか、いい感じに軽くてそれが救いです。
ミステリ部分は緩めで、町のイベントの話と並行して進むので軸がブレがちかもです。動機や真相も意外性はないので、ここは登場人物達のやり取りや、ミシェルの作るチョコレートの味を妄想して楽しむ私でした(巻末にレシピが載っています♪)。
それにしても、この作品はかなりスラングが多用されていたとお見受けしたのですが、訳者の方は大変だったろうな・・と勝手にお察しした次第です。
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図書館で。
タイトルに惹かれて借りてみたんですが、なんだかコミカルにしようとして失敗している、みたいな感じでした。バチェロレッテパーティーという言葉はこれで知りました。バチュラーパーティの女性版、と言う事ですよねぇ。個人的にはやりたくないことはガンとしてはねのければ良いのに、バカみたいだなという感想でした。
それにしてもベーコン味のチョコとか色々とチャレンジャーだなぁと思いました。
それにしても自分の菓子が犯罪の道具に使われたってイヤだなぁ、本当に。そこが一番ダメだったのかもしれません。お話しの世界にしても。