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『最後のクジラ 横浜大洋ホエールズ 田代富雄の野球人生』からの流れの読書。
盲目の天才スラッガーがプロ野球界に現れた…!というユニークな題材で、しかもそれを盲導犬の視点から描くという構造。とても面白かった。
当時の(これは今も続いているのかな)ジャイアンツを中心とした野球界を批判する内容が作品の軸のひとつになっていて、それもかなりハッキリ書かれており、意外だったが、それゆえにかえって著者の野球愛を感じた。
天才田中一郎がバットを握って、野球界と無理解な政治と戦う姿と、筆を握ってすこしでも世界を変えようとする井上ひさしの姿が重なって映る。
この作品が書かれた1978年からすれば、セ・パの様相はすっかり変わった。巨人一党政権という権力図も昔のことのように思われる。裏側はわからないが。ジャイアンツ対ほか5球団という頃が懐かしい。2023年3月現在、WBCでの日本代表の優勝で盛り上がったばかりだ。
戦後、大下弘のホームランの偉大さを綴った一節が、模写するほど好きで、心に残った。
ホームランがスタンドインするまでの放物線を眺める気分は、時代とともに意味合いは変われど、いまも昔も変わらない。