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今回も舌鋒鋭いコラムだった。エリザベス女王は安定感のある漬物石のようなキャラ(p88)と言っちゃってるけど、彼女が亡くなったらイギリスはもっと破滅的な国になっちゃいそうな気がする。
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これまでイギリスの社会や政治、文化に馴染みがなかったけれど、未知の話題がどれも面白かった。
この著者の本を読むのは初めてだけれど、ざっくばらんな語り口でユニークな例えが盛り込まれていたから、私でも分かりやすく楽しめたのかも。
UKコメディとコロナ禍の社会における職種の価値観の逆転の話題が特に興味深かった。
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「群像」の連載をまとめたエッセイ集。
ブレグジットから教育から王室から政治からコロナから、労働者階級の地べたからみた英国(イギリスではない。本書参照)が切れ味鋭く、哀愁と哲学をもってつづられる。
文体からしてなで斬りなのだが、独断や上から目線の嫌味を感じないのは、土台としての実体験や社会への愛情や、何より教養があるからだろうか。
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相変わらずクール、でもどこか暖かい語り口で安心のエッセイ。最近の英国英語のカオスっぷりも非常に興味深いな。
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日本と同じく同じ緊縮財政下にある英国の、
ブレグジット前後あたりから最近までの現状を
市井サイドから伝えてくれる一冊。
その状況は所々近かったり、所々遠かったり。
ウィットに富みつつ飄々としている文体が
思考と想像を喚起させてくれます。
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『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』著者の英国に関する時事エッセイ集。日本でニュースを見てる分にはEU離脱とコロナ禍を中心とする情報が断片的に入ってくる程度だが、貧富の格差や政治的イデオロギーの左右、離脱派vs.残留派など今の日本社会にも通じる分断と不信の実情が克明に記されている。もちろん「英国もそういう感じなら日本も大丈夫だ」とは全くならない絶望感(同時に本書もまた著者のフィルターからは逃れられないわけで全部鵜呑みは危険なわけだが)それにしてもキツい時代だ…
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書かれていることは、昨年から今年にかけてものされた作品と同系統。ただ本作は、私的な部分がほとんど抑えられ、公的な視点から描かれている点が特徴。それもあり、馴染みやすさの点では前作に分がある。あと、かの国の時事問題をある程度は知っている前提で話が進むから、その分、やや難解に感じたかも。語り口調はならではで、本作も楽しませてもらいましたが。
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20201217イギリスで何が起きているのか、日本人の視点での解説なので分かりやすい。継続してぶれないところも信用できる。基準になる人なのでこれからも読んでいきたいと思う。
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ブレグジッドからコロナへ.熱く語る歯に絹着せない語り口でロンドンの政情が広がっていく.でも世の中確かに巡るましい変化で,経済も生活もコロナ一色.
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『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』で、筆者の視点、考察に感銘を受け、前作と今作を読んだ。しかし特に今作は結構ヘビーな内容で、時事ネタに明るくない私には楽しめなかった。
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私には、難しかった!国や情勢にだいぶ疎いので、最初の方は特に苦しくありましたが、読み進める内にカタカナに慣れ、なんとか、がんばりました。「人間は、誰かのことを考え、知るようになると、同情するようになる。富と権力を持つ人々が下々の者のことを考えないのは、そうする必要がないからだ。つまり、人の顔色を窺って生きていく必要がない階級は、より無神経になる」これ、なるほどと思ったのですが、けっこう前から目につくようになったお偉方の行動理由は無神経ゆえなのかもしれません。こういった本を素直に楽しめる教養がほしいです。
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「ぼくはイエローでホワイトでちょっとブルー」がとてもよかったので、これも読んでみたら、いやいや期待以上に面白かった!英国社会の「今」が、肌感覚で伝わってくる。と同時に、ここ日本でも当てはまるなあということがいろいろあって、考えさせられた。いくつかをあげてみる。
・ネット上では「左翼」や「リベラル」がどんどん侮蔑や嘲笑の対象になっていて、しかもそういう意見を表明する人というのは、従来の枠組みで言えば反体制側に与するのが自然なように思える立場にあることが多いように思う。これには様々な要因があるだろうが、なるほどこういうこともその一つだろうと思えるところが次々出てくる。
<つまり、主流派の考え方に疑問を投げかけ、体制に反逆するアウトサイダーだったはずのレフトが、いまや主流派そのものというか、ふつうに学校で教えていることを主張するのにいまだパンク気取りで奇抜な方法を用いているから「クール」どころか「むかつく」と言われてしまうのである。>
<女性差別的な絵を美術館の壁から撤去するというゲリラ的な行為>も<エリート校の壁からヌード絵画を外す厳格な校長先生みたいに見えて人々の怒りを買うのだ>と。
また、あるコメディアンの発言が引用されている。
<左派には、高みからモラルを振りかざして尊大になりがちな人がいると思う。多くの左翼の人々は、自分は左派だからという理由だけで自動的に偏見がなくて、寛容な人間なんだと思い込む。それは本当に幼稚で嘘くさい政治的価値観の解釈だ。左派の人の中にも、レイシストやホモフォビックな人はたくさんいるよ> 本当にそうだ。胸に手を当ててよーく考えよう。
<ひと昔前までは、「抵抗」や「叛逆」が左翼やリベラルのテーマだったが、現代ではそれが「道徳」にスライドしていると言われて久しい。多様性や包摂などのリベラルな概念がメインストリームになるにつれ、「こんなことを言うのは危うい」「こんなことをするのはダメ」と他者の過ちを指摘し、正しさを説くことがその存在意義に変わってきたからだ。> 私は、倫理的であることがリベラルの本質的な美質だと思っているが、「常に自分たちは正しい」とか言いがちであることも確かで、そりゃ反感を買うよね。
そう!そうだよと膝を叩いたのが「緊縮の時代のフェミニズム」の章。
<ある種の懲罰性を持つフェミニズムは、緊縮の時代の女性たちをさらに生きにくくしているのではないか。元セックスワーカーだったという職員の言葉が印象に残っている。「いま必要なのは、イデオロギーじゃなくて、シスターフッドだよね」>
私は自分をフェミニストだと思っているが、筋金入りのお姉様方の前ではなんとなく「スミマセン。中途半端で」とうなだれるような気持ちになる。「そんな生き方ではダメよ」と言われそうだもの。「懲罰性」という言葉に納得。
・EU離脱をめぐる混沌とした状況が繰り返し述べられている。「物事をよくわかっていない単純な愛国者が、愚かにも離脱に投票した」という文脈の論を結構見かけたが、筆者は(当然ながら)そうした見方には立たない。
<EU離脱は文化闘争などではない。重要なのは労働者階級の価値観ではなく、生活水準なのだ。こういう考え方はあまりロマンティックではないかもしれない。が、食えないところにまず必要なのはロマンではない。>
・英国では、フードバンクにそのまま寄付できるようにパッケージされた商品が、スーパーの棚に普通に並べられているそうだ。一見すごくいいことのようだけど、よく考えればやっぱりおかしい。貧困を扱った映画を作ったケン・ローチ監督が、その映画をきっかけに貧困者支援団体を助成する基金が立ち上げられたときに出した声明に曰く。
<ひとつだけ付け加えたいのは、ともかくチャリティーは一時的であるべきだということ。ともすると、チャリティーというものは不公正を隠してしまいがちだが、むしろ不公正の是正こそが最終目的であることを忘れてはならない> その通りだ。
・身近な話として面白かったのが「エモジ」の話題。日本の絵文字が英国でもエモジとして定着しているとは知らなかった。イギリス人ってそういうことはしなさそうなイメージがある。著者の友人が「エモジ入りのテキストを受け取ると、エモジなしで返事できなくなる」と言っているが、私もまったく同じだ。反対に絵文字を使わない人には「幼稚だなあ」と思われそうで使えない。「エモジという忖度カルチャー」という言葉には大いに心当たりがあるなあ。
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・『わたしは、ダニエル・ブレイク』
・メーガン妃のエッセイ。「インドだけでも、1億1300万人の12歳から14歳までの少女たちが、整理を取り巻くスティグマのために学校をやめるリスクに晒されています」、「私が現場にいた間、多くの少女たちが生理中に学校に行くのは恥ずかしいと感じていると話してくれました。彼女たちはナプキンではなく不適切なボロ布を使い、スポーツに参加することも出来ませんし、自分のみを整えるためのトイレもありません。だから、学校そのものをきっぱりやめることを選択することも往々にしてあります。」
・生理用品のCM;ナプキンの上にこぼされるのが赤い液体ではなく、青い液体であることからスティグマあることがわかるし、根深い問題。
・生理を表す絵柄を含むべき。
・ブレグジット:『Flowers』、『Damned』シットコム。
・エモジには文法の複雑さや本物の言語が持つ豊潤で重厚な意味もない。だが、人類が共通言語を作り出すことがあるとすれば、今のところ最も近いものだ。
・エモジというのは、むき出しの感情をぶつけて他者を困惑させないように、感情のエッジを除去するものとして使われているのだろうか。エモジという忖度カルチャー。
・シェイクスピア・イン・エモジ;ユニバーサル
外国語を教えるときにエモジは有効。外国語→母語→認識の母国語パートを削ることができる。
・中上流階級の人々はケア労働をしない。「互いの面倒を見る」という人種の最も大事な大部分を担っているのは労働者階級。(労働者は思いやりを持っている);これを日本に置き換えれば、教育や福祉、医療に投資が必要だとなった途端に、日本の多くの人々が、「でも財源はどこから持ってくるんだ」とすぐ経営者脳(閣僚脳)になってしまうのも、一介の労働者は雇用主の事情を考えてしまうからなのかもしれない。支配者はこちらのことを考える修正など全く身につけていないのに、下々の人間は妙な思いやりを発揮して、「お植えには財源がなくて大変なんだからみんなで残酷な政策に耐えよう」と、しちゃいけない団結をしてしまうのである。
・ワーキングクラスの暮らし:『Sorry, we missed you』、『アマゾンの倉庫で絶望し、ウーバーの車で発狂した』、『This is England』、『The Virtures』
・LGBT:『Mommy, Mama, and Me』、『Challenging Homophobia inPrimary Schools』、『King & King』『タンタンタンゴはパパ二人』
・どん底の貧困:『It's No-Money Day』、『わたしは、ダニエル・ブレイク』の貧困で売春にまで追い込まれたシングルマザーがフードバンクを訪れるシーン。何日もまともに食事していなかった母親は、フードバンクで棚にあった缶詰を鷲掴みにして、われを失ったようにその場で貪り始めてしまう。本当の貧困は、本当に食べられないということは、あのシーンだ。「お母さんはお腹が空いていないから。あなたがべなさい。」と最後のパンの一枚を子供に食べさせる母親の裏には、ひとかけらの尊厳すら奪い去るような、あの凄惨なシーンがある。
・『ジョーカー』陰惨な生い立ちを苦境と恥辱にまみれた日常の末に、それでもダークサイドに落ちなかったジョーカーの話→『ポバティー・サファリ』
・『プリズンサークル』:誰かの靴を履いてみること(加害者が被害者の気持ちを体験すること)。はじめに言があった(In the beginning the Word already existed. The Word - ギリシャ語でロゴスのことであり、道理、法、理性、尺度、根拠などいろいろないみがあるが、キリスト教の世界では世界を構築する論理、すなわち神の言葉であり、イエス・キリストそのものとされている。ロゴスの動詞形は、レゲイン(言う)。レゲインの名詞形とロゴスを髪という超自然的存在と一致させたくなったぐらい、人間が空気を振動させて他者に何かを伝えようとする「言う」という行為には、なにかマジカルな力がある。前述のシーン(プリズンサークル内)はまさに「レゲイン」が人間に与える深遠なパワーを見せてくれる。「言う」行為は、自分を「出す」ことだが、同時に、自分自身として誰かと対峙し、自分の声と耳と表情と存在で誰かと「関わる」ことでもある。
・Anywheres:リベラルで高学歴で地域コミュニティのつながりが薄い人
v.s.
・Somewheres:保守的で地域コミュニティにしっかりと根を張っている人々
ではなく、Anywheresほど実は地域コミュニティと関わりが強いのでは?e.g.)リベラルで高額rフェ期の人々は地域コミュニティでも有力であることが多いし、草の根のチャリティーや社会活動が盛んな英国では、こうした運動を支えているのも圧倒的にオープンでリベラルな考え方を持つ人々である。
・『Bullshit Jobs: A Theory』 byデイビッド・クレバー
ブルシットジョブ:世の中からなくなっても誰も困らない仕事=ホワイトカラーの事務・管理職
キー/エッセンシャル・ワーカー=ケア階級:医療関係者、介護士、教員、保育士、ごみ収集員、スーパー店員、バス運転手、消防士、警察官
→クレバー提唱の新たな階級論は、マルクスではなくクロポトキンの思想の延長上にある。人間には他者をケアしたい本能が備わっていて、人はそれをしながら生きる方向に転換せねばならないという彼の持論は、平時には「お花畑」でも、緊急時にはすこぶるリアルに聞こえる。
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英国社会の現状が語られているが、まるで日本の話に聞こえる。ここまで世界がボーダレスになると、ある程度強弱や背景が異なったとしても、社会課題はほぼ共通なんだと思った。
キリスト教徒とムスリムが共闘して、LGBT教育に反対するなど、今まで敵対していると言われていた集団が、ある面では協力するなど、今までのカテゴリが通用しない多様性戦国時代。
多様性は、あちらを立てればこちらが立たずで、理想論を思考している場合でなく、なんとか折り合いをつけないといけないハードな実戦フェーズになっている
労働者階級が世の中を支えているのに賃金が低い。20世紀に生まれた雇用のほとんどは存在しなくても誰も困らない。余裕ある暮らしを続けていると、周りがわからないお花畑になる
ハイパー分裂時代
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EU離脱、広がる格差と分断、そしてコロナ禍-。政治、経済、思想、テレビ、映画、英語、パブなど、英国社会のさまざまな断片から、激動と混沌の現在を描いた時事エッセイ集。『群像』連載を書籍化。
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