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余韻が凄い。
世界観が一切壊れないなかでテンポ良く人間のドロドロした醜くて、だからこそ魅力的な部分がこれでもかと詰まってる。人間と化け者の対比が最高。
自分は何者なのか、という話。全部ひっくるめて愛の話。続きが今から楽しみ〜!!最高だった
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時は江戸時代。一介の鳥屋の男が、不思議にも日本随一の『元』女形歌舞伎役者と歌舞伎にまつわる事件を解決していくことになる。
その事件とは、歌舞伎役者の誰かが鬼に殺され、その人物に成り代わっている、その者の正体を暴いてほしいと依頼がきた。
しかし、歌舞伎の世界には人間とも鬼ともつかない有象無象がうじゃうじゃしていた。歌舞伎とは?男とは?女とは?鬼とは?
軽快なタッチで江戸の歌舞伎の闇に切り込んでく二人を中心にした物語。
個人的には江戸の話し言葉とかが読むのが苦手なので少々苦労しましたが、凸凹コンビの相性に徐々に引き込まれていきました。
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江戸随一の芝居小屋<中村座>で、鬼が人を喰らいその者に成り代わるという恐ろしい事件が起こる。事件が起きたのが夜のため、一体誰が鬼に取って代わられたのか分からない。
容疑者は現場にいた五人の役者。
鬼探しを依頼されたのは、両足を失った元スター女形の田村魚之助(ととのすけ)と鳥屋を母と営む藤九郎。
魚之助が高慢ちきで意地悪で、藤九郎が売った金糸雀を虐待して、最悪な第一印象。
当然藤九郎も魚之助と行動を共にするのを何とか避けたいと思うものの、上手くは行かない。
そうこうしているうちに受けた、鬼探しという恐ろしく奇怪な仕事だが、魚之助は芝居を見るばかりで聞き込みなどの捜査はもっぱら藤九郎任せ。
当事者である役者連中は勿論、大部屋の者たちも鬼の存在を怖がるどころか面白がっている者が多い。
藤九郎は更に、彼には理解出来ない役者たちの狂気と業を見せられ戸惑うばかり。
澤村田之助を彷彿とさせる魚之助。かつて『足千両』と呼ばれたほどの美しい脚を、客の男に切られた末に足を切ることになったという。
歩けない魚之助を背負って藤九郎は<中村座>を捜査するが、芝居の世界に全く触れてこなかった藤九郎には芝居のため芝居が上手くなるため役者番付を上げるためなら人を足蹴にしたり追い落としたり傷つけたり、あるいは殺してしまうことすら厭わない役者の業が分からない。
終盤まで鬼探しが脇に追いやられて、鬼よりも鬼のような役者たちの姿を見せられていくうちに、読者である私には鬼探しが狂言なのかとすら思ってしまった。
段々鬼探しよりも魚之助の葛藤や苦しみの方に興味が向いて、田之助のように義足を着けて役者に復帰するのかそれとも別の形で役者に戻るのか、更には役者の道を諦めて別の道を模索するのか、そちらが気になってしまった。
魚之助と、彼の心の傷や葛藤を理解できるようになってきた藤九郎との距離が近くなって良いコンビになってきたのは嬉しいが、今度は藤九郎がやけに自分の価値観だけで魚之助を後押ししようとするのにハラハラする。
魚之助は役者なのか役者ではないのか、男なのか女なのか、歩きたいのか歩きたくないのか。そもそもそんな線引をすることすらナンセンスなのだろうか。
最終的に鬼探しに戻ってくるものの、そこがサラッと流されていたのが残念。もう少し鬼について深堀りして欲しかった。
人にあって鬼にないものもあれば、人にも鬼にもあるものがある。そこは興味深いところではあった。
最終的には藤九郎の考えが柔軟になっていく。これぞ多様性か。結果良いコンビだけでなく良い関係になったということだろうか。
藤九郎の母親は存在だけで全く姿を現さないし、オランダ人の血が流れる蘭方医見習いのめるも姦しい三人娘も鬱陶しいだけで終わってしまった。
続編ありきの作品なのだろうか。
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第11回小説野生時代新人賞受賞、デビュー作。
書評で知り、装丁に惹かれて図書館の順番待ちに並ぶ。
読了して改めて表紙を眺めると、美しいだけでなく、そこに描かれた物語の符牒の巧みさに感心。
「人の中身」に比べれば、鬼のそれの方がはるかに純真なのか。腹を撫でる魚之助は、自分の中に棲む役者としての自分、女性としての自分に迷いつつも愛していたんだろうな。
飛び交う京言葉と江戸言葉が生き生きとしていて、色鮮やか。魚之助と藤九郎のコンビにまた会いたい。
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鬼退治から浮き出てくる複雑な役者の心の奥と、人間模様。そして魚之助と藤九郎の関係。なにが鬼で、なにが人間なのか。現代にも通ずるものもあり、面白かった。
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――
「化けもんに化けもんのことを聞いたらあきまへん」
ねうねう。
恐ろしや、恐ろしや。
これぞ本、これぞ戯作よ。装幀からかぶりついてしまった…
ときは文政、江戸は中村座。小屋に紛れ込んだ鬼探しを依頼されたのは、贔屓に足を切られた女形とその“脚”の鳥屋。
まるっきり怪奇小説の筋立てに、しっかりと構成されたミステリ。けれどその根幹にあるのは芝居、芝居、芝居。それに魅せられたひと、ひと、ひと。その美醜、その虚実。
クライマックスに向かうにつれて、登場人物皆のあらゆる境が曖昧になっていくのにどんどん惹き込まれていく。それも舞台感。
破滅的な想いを、そういうもんだと云ってしまえるのが洒落ているであったりとか、自分はそうだから仕方あるめぇ、みたいのを、
認められるくらいには、重ねてきたものがあると云わせてもらうとして。
それがこんなにも鮮烈に、帯にもあるとおりぴちぴちの筆致で書かれていると、本当になんていうか、勝手に報われる感じがします。
いま出会えて良かった…!
デビュー作ということで☆4.5
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本の雑誌・年間ベストから。本作の世界観に親和性がないから、取っ掛かりがしんどかった。危うく止めそうになったんだけど、同雑誌の評価を再読して、どうやらミステリ指向が凝らされているらしいことを知り、続けて読む気力を回復した次第。事件の概要が書かれてからは、普通の聞き取り調査→謎解きという流れが展開され、推理小説として楽しむことが出来た。
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こちらがデビュー作ということで、こんなの初めて読むわと感心するような渾身の比喩表現がビカビカに光っていて、次はどんな比喩が出てくるんやろと読むのがとても楽しかったです。
その巧みな比喩表現は話が進むにつれて頻度が少なくなるのですが、そこはやはり新人作家さんだなぁと微笑ましく感じつつも、話の展開や人物描写、情景描写はどんどん上達していっているように思いました。どっちにしても新人離れしているのですが!
少しずつ明らかになっていく謎にワクワクして、人間の愛や欲や妬み嫉みの艶っぽさにドキドキして、最後までとても楽しく読めました。
このお話の登場人物たちのその後がぜひ読みたいと思いました。
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6人の中に鬼はいないんじゃないかと思っていた、、。江戸の町や役者の描写が多く、鬼自体はあんまり出てこなかったな。
やっぱり枕とかもあるのね。
「〜わいな」ってかわいい。
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江戸時代の歌舞伎役者の芸に生きる凄まじさが感じられた。鳥屋と言う稼業があるとは知らなかったがそこそこに名作へのリスペクトが感じられて面白かった。
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単行本で読了。
帯に書かれている文言で興味を持ち読んでみましたが、冒頭からなかなか苦労しました。
登場人物がなかなか頭に入らず混乱しながらも読み進めていましたが中盤からはスリリングな展開と役者の世界観などにのめり込み楽しめました。
普段は武士や武将の小説ばかりですが、少し思い切って読んでみて良かったと思える作品でした。
特に役者さんの役者魂に少し震える程のものもあり、芝居ファン達の当時を彩る時代背景など読み応えがありました。
2021/10
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江戸時代の梨園が舞台とあって、あえてなのかもしれませんが、小説の語り口が噺家さんの興行を文字にしているようで、「山椒がピリリ」ぐらいまではよかったのですが、読むにつれて「もういっそ噺家さんのをそのまま聞きたい」というようなもどかしさを感じました。
少し私には合わなかったようです。
実際の鬼も登場人物紹介ぐらいで「この人だな」という人から変わりなく、全体の印象も少し散漫に感じて、読み終えて記憶に残ったのは、ちょうど福岡市の猫公務員の記事を読んだからか、「ネズミ捕りのうまい猫は馬の数倍の価値で取引されていた」でした。
ただ江戸の梨園が舞台なのは興味深かったです。
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常に読む本が控えているので、読了したら次の本を開く。ただ、物語にのまれてしまって、次がなかなか進まないことがある。この本は久しぶりにその状態だった。
トランスジェンダー、人間の業、今では簡単にラベリングができるけれども、うまく小説に落とし込むとこんなにも引き込まれることになるのか、と驚く。
特に魚之助の剃毛シーンには、胸が締め付けられる。
人間と鬼の境目。男と女の境目。
見えていたつもりのものが、読み進めるほど、どんどん薄くなり、やがて見えなくなってしまう。
決して説教臭いわけではなく、ミステリ要素もサスペンス要素もあるし、もっと広く読まれることを願う。
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トントントーンとテンポよく。着物の彩りも美しい。アニメにしたら綺麗だろうなあ。化け者の心中とは暗喩かと思ったら、そうでもなかった。化け物ではなく化け者であることも意味があった( ´艸`)
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ちょこちょこ読みにくい文章があったりしたけど、聞けばデビュー作品みたいだし、それでこれなら充分に及第。
贔屓に脚を刺された元・名女形が出入りの鳥屋と探偵コンビを組んで中村座の鬼探し…って設定は面白いし、魚様のキャラクター造形も、事故後の半端な境遇に女形特有の性的アイデンティティーの不安定さを絡めた歪み具合が魅力的だった。
でも謎解きとして、このオチはキレに欠ける。うーむ。次作に期待。