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「罪の声」や「騙し絵の牙」で知られる塩田武士さんが、ある一人の人物に焦点を当てた青春恋愛小説です。
その人物は、男性なのに女性の心を持っていて、物語では学生時代のいじめや父親との確執、性転換手術など約25年の物語が赤裸々に描かれています。
とにかく、主人公の心理描写が丁寧に繊細に描かれていて、塩田さんの取材量が半端ないのではとうかがえました。
長期にわたる「ザ・ノンフィクション」を見ているようでした。
最初は「翔太郎」として、学生時代を送ります。そこでのいじめが痛々しかったり、内に秘めた苦悩が描かれたりと読んでいて辛かったです。私も泣き虫で女子みたいということで、いじめにあったことがあるので、リンクする部分もありました。
その中での主人公の姉が良き理解者として描かれていて、良い家族だとじんわりとさせてくれます。でも父親との衝突には、父親としての気持ちも理解できるので、なんともいえませんでした。
途中からは、女として生きると同時に名前も「蘭」として綴られています。そこからも新たな苦悩が描かれています。
「女」として生きるのに戸籍は「男」であるということが様々な弊害を生み、普通の生活がいかに大変なのかを垣間見ることができました。
なかなか主人公の心理描写を全て理解することは難しかったのですが、普段テレビで見る同じ境遇をもった人の笑顔の奥には、色んな人生が凝縮されているんだなと感じました。
途中までは、ドキュメンタリーのような感覚で読んでいたのですが、後半からは小説ならではの展開がありました。今までの伏線が回収されていき、それが感動と同時に驚きもあったので、びっくりしました。
エピローグのシーンは、なんとなく、そうだろうと予想していましたが、実際に綴られていると切ないながらも、優しい温かみがやってきて、良い読後感を味わいました。
周りの人との支えや「人を愛すること」の真髄が詰まったように感じた作品でした。
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翔太郎君はフワフワしたものやひらひらしたものが好きなきゃしゃで可愛い男の子。そんな気持ちをコントロールして隠しておくのがつらくなった時、苦悩が始まる。
理解してくれる人、理解しようとしてくれる人、そんな人たちに出会う時、身を守るために付けていた仮面はその氷を溶かし始めるのだろう。
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以前読んだ「罪の声」は随分骨太な感じだったが、こちらは一転して切ないお話でした。体は男なのに心が女である主人公は、子供のころから生きづらさを感じる。
なんとかまわりに支えられて、自分でも小さな勇気を振り絞って生きていく姿がけなげでした。自分は心と体が同じで、それがあたりまえだと思っていたので、その最初の部分で躓いて生きていかなければならないことに同情した。
ひとつおもったのは、今の日本では、こういう人たちの職業としての受け皿が夜の世界かタレントなど、その特殊な性を売り物にした仕事しか選択肢がないが、ふつうに働ける社会だとそういうハンデがあっても生きやすいのではと思った。
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あんなに初恋の真壁君のこと思うかなーと不思議ですが、それが性同一性障害というものの所以なのか。
段々と女になっていく蘭の変化が、目に見えるようで応援したくなりますね。
後半、お父さんの過去が、え、そうだったの?みたいな感じで、この展開はないだろって感じ。
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初の塩田さん作品。
生物学的な性別と自認している性別と不一致を抱えながら成長していく翔太郎。
やがて“蘭”という名前と共に生きる決断をし、一歩ずつ自分の人生を歩んでいく。
迷いながらも懸命に生きるその姿に心打たれた。
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性同一性障害の方が抱える葛藤や、乗り越えなければならない現実的な問題が丁寧に描かれており、主人公の繊細で淡い恋心が可愛くて愛おしいと思った。
大多数の人が思う「普通」じゃなくても、「当たり前」じゃなくても、誰が誰を好きになってもいいと思う。
それは決して汚らわしいものなんかじゃないはずだ。
私達は、自分の常識を押しつけるのではなく、ただただ理解してあげるだけで良いのだ。
たとえ理解する事が難しくとも、苦しんでいる気持ちに寄り添い、想像してあげるだけなら出来るのではないか。
カミングアウトする、などと大それたものではなく、皆がありのままの姿で胸を張って生きていける世の中になってほしいと願う。
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必ずしも進んで読むようなジャンルではなかったのですが、塩田さんの新刊と言うことで読みました。
読んで良かった。
これは色々な人に勧めたい作品です。
考え方が変わりました。
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初めて読んだ塩田さんの本。何気なく書店で手に取りましたが出会えてよかったです。真壁くんが本当に、本当に最初から最後まで素敵な人だったし、主人公と一緒に何度も心を揺さぶられました。ラストシーンのタイトル回収で思わず私も涙が止まらなくなりました。本文にもあった「人を想うこと」の重みに私も気づかされました。あのラストを見た上でもう一度最初から読み直したい一冊です。
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よかったー。
主人公の女の子になりたいって気持ちが痛くて切なくてね。
いじめのシーンは読んでて辛かった。
主人公の気持ちを理解してくれる人が周りにいてほんとによかった。
好きになった真壁くん、ステキすぎる。
見た目だけじゃなく中身も素敵。
みんな惚れるわー。
小学4年で同性に好かれてる気持ち知ったら一人じゃ抱えきれないと思う。
それでも今までと変わらず接してくれるのはすごい。
最後、お父さんの手紙は感動だけど
まさかのお父さん…
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最後は号泣しながら読みました。
性同一性障害の方が自分の性に対する違和感をもち、別の性として生活し、戸籍を変え、どう生きていくか。色々な葛藤や困難を抱えながらも生きていかなければならない。
自分では、性同一性障害について少しは理解しているつもりでしたが、それが浅いものだったと感じました。家族愛についても考えさせられました。
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読書中は、いくらなんでも翔太郎は性にまつわる出来事に巻き込まれすぎだ。表紙から受ける印象と合っていないと安直な考え方をしていた。しかし、読了後は全く印象が違った。翔太郎が蘭に変わるまでのグラデーションを夕暮れの空で表していると考えると、合点がいく。
行間をどう読むかを多分に読者に委ねているのだと思った。だが、151からの展開が突飛な印象で最後まで脳にこびりついてしまったのが残念。
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嬉しい時も幸せな時も、辛い時も苦しい時も悲しい時も、ずっと心の中に居たのは真壁君の存在だったことが作品全体を通して痛いぐらいに伝わってくる。
好きな人がいる。それだけでどんなことも乗り越える勇気が湧いてくる。報われなくても、報われないから、微かな希望に手を伸ばして強く生きていける。
なんでこんなに泣いてるんだってぐらい泣いた。
エピローグを3回ほど読み直して最後にプロローグを読み返した。そうして本を閉じた。
書店で一目惚れして買って読むことが出来て本当に良かった。
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最近よく映画化されている塩田武士氏の小説初読。
性同一性障害の「女性」を慈愛を持って描く感動作でした。
子供の頃からの思い、演じなければならないこと、いじめ、姉の存在、そして母親、父親、ママ、仲間との関係、その中での決断、最後に知る事実。
1人の女性の小学生期から大人になるまでのブレない強さ、綺麗な想いを描いた作品。
目を背けたくなる描写もあったが、性同一性障害の理解や普及のためにも勧めたい作品。
本人たちしか苦労、苦悩はわからないが、本作の蘭のような人たちに出逢ったら少しでも寄り添えるようにしたい。
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初めて性同一性障害を知ったのは有名な学園ドラマだ。
「性同一性障害ってなに?」
その質問に母が「身体は女の子だけど、心は男の子なんだよ」と言ったのを覚えている。
テレビを点ければLGBTのタレント、芸人が当たり前に映る。
そんな彼らが語る、周囲と自らの認識のズレと、幼心にこびり付く悔恨を、彼らの親族が語る「当時は驚きましたが今は受け入れてます」というその言葉を見て、聴いて。
このご時世に私がLGBTを《理解したつもりでいた》のだということをまざまざと思い知らされた。
今尚、理解の深まらない問題を
《頭の固いやつらがいたもんだ》と
好きになった人が同性だっただけじゃないか。
心と体が違っただけだろう。
他人を思い遣れて、他人を愛せるんだから良いじゃないか。
先進的な考えをしてるのだと思っていた。
まさしく《理解したつもり》だった。
同じように悩む人達の指標になればとエンターテイメントで活躍する彼らの言う《肩の力を抜いただけ》の生き方は、悩み、踠き苦しんだ果てに掴むものなのだ。
生きていく上で踠き苦しむのはつきもので、
ただ、息がしやすいようにはできるのではないだろうか
まざまざと思い知らされた今、未来に何ができるだろう。
この小説は1999年〜2000年代の話で、ネットも普及してない。今よりずっと理解もない時代の話なのだけれど、
きっとこの先ずっと《理解したつもり》にはなれても完全に《理解》はできない。思い知らされたからこそ、
゛性別を理由に行動を決める必要はない。゛ということを
もっと、私達の世代がジェンダーノンコンフィングに生きて良いのだと示して行かなければと思った。
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とても綺麗な小説だった。悶えるくらい切なくなる。人を思う気持ちに、性別なんて関係ない。ただ好きなだけ、ただその人のことを思うと胸が苦しくなるだけ、手を伸ばしたい、触れたいだけ。そんな気持ちがしんどいくらい伝わってきて涙が出た。結ばれなくてもどんな時も心の中に居て支えてくれた人がいることだけで、真壁くんとの出逢いは、人生の中で意味のある出逢いだと思う。真壁くんもまた優しくて、人間味のある青年でとても魅力的だった。