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[ 内容 ]
『文明論之概略』は、福沢諭吉の気力と思索力がもっとも充実した時期に書かれた最高傑作の一つであり、時代をこえて今日なお、その思想的衝撃力を失わない。
敢えて「福沢惚れ」を自認する著者が、現代の状況を見きわめつつ、あらためてこの書のメッセージを丹念に読みとり、今に語りつぐ。
読書会での講義をもとにした書下し。
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(2013.04.20読了)(2001.01.12購入)
【4月のテーマ・[福沢諭吉を読む]その③】
この中巻には、第四章「一国人民の智徳を論ず」、第五章「前論の続」、第六章「智徳の弁」、第七章「智徳の行はる可き時代と場所とを論ず」についての講義が収録されています。
「第四と第五の両章で智徳を論じている仕方に、かりに実質的な題をつけるとすれば「社会の法則と文明史の方法を論ず」ということになるでしょうね。つまり、歴史をどうやってつかまえていくかということです。そのあと、こんどは歴史のなかで智と徳とがそれぞれどういう役割を占めているかという問題が、論じられている、こういう構成になっているのです。」(2頁)
「第四、五、六章は、バックルの『イギリス文明史』を大きく下敷きにしてきます」(4頁)
第七章、「開化していないときのものの考え方、思考様式はどうであるか、それが、文明の世になるとどうなるかを述べていく。」(227頁)
第七章後半、「徳義はどういう領域で行われるか、逆に言うと、どういう領域では徳義に依存できないか」
【目次】
第七講 文明史の方法論
第四章「一国人民の智徳を論ず」一
第八講 歴史を動かすもの
第四章「一国人民の智徳を論ず」二
第九講 衆論の構造と衆議の精神
第五章「前論の続」
第十講 知的活動と道徳行為とのちがい
第六章「智徳の弁」一
第十一講 徳育の過信と宗教的狂熱について
第六章「智徳の弁」二
第十二講 畏怖からの自由
第七章「智徳の行はる可き時代と場所とを論ず」一
第十三講 どこで規則(ルール)が必要になるか
第七章「智徳の行はる可き時代と場所とを論ず」二
●イギリス人(122頁)
一人のイギリス人は愚鈍である。二人のイギリス人はスポーツをする。三人のイギリス人は大英帝国を作る
●ドイツ人(122頁)
一人のドイツ人は詩人であり、思想家である。二人のドイツ人は俗物である。三人のドイツ人は戦争する
●合議の習慣(127頁)
福沢は明治七年ごろに『会議弁』という文章をわざわざ著して、そこでは、ディスカッションのルール、つまり議長(会頭)や書記(書役)をどう決めるかとか、修正案を提出したいときはどうするかとか、細かい手続きを書いたのです。
●話す(128頁)
彼(福沢)は、学問の趣意は「第一がはなし、次にはものごとを見たりきいたり、次には道理を考へ、其の次に書を読む」と言っているくらい、学問にとっても「話す」という知的会話の習慣を第一にもってきて、読書は一番最後にくるのです。
●福沢の志(135頁)
自分の志すところは、日本国民のあいだに「理によりて強大に抗するの習慣を養ひ、以て外国交際に平均を得るの一事に在るのみ」と言うのです。
ヨーロッパ列強に対して、理によって対等に交際する。それができるようにするためには、内において権力に対する抵抗の精神を養わなければならない。
●道徳教育(182頁)
福沢は道徳教育万能の考えはいったいどういう結果に陥るか、さらに主観的には真摯な宗教的狂信���いかに恐るべき迫害を生むかということを示そうとした
●狂信の恐ろしさ(215頁)
悪い奴なら、おどかして恐怖を与えるとか、利害で説得するとか、何とかその悪に対する対抗手段がある。しかし、俯仰天地に恥じないものはまったく始末がわるく、その行為をやめるよう説得のしようがない。
☆関連図書(既読)
「福澤諭吉」西部邁著、文芸春秋、1999.12.10
「福沢諭吉「学問のすすめ」」福沢諭吉著・佐藤きむ訳、角川ソフィア文庫、2006.02.25
「日本の思想」丸山真男著、岩波新書、1961.11.20
「翻訳と日本の近代」丸山真男・加藤周一著、岩波新書、1998.10.20
「「文明論之概略」を読む(上)」丸山真男著、岩波新書、1986.01.20
(2013年5月29日・記)
内容紹介 amazon
『文明論之概略』は、福沢諭吉の気力と思索力がもっとも充実した時期に書かれた最高傑作の一つであり、時代をこえて今日なお、その思想的衝撃力を失わない。敢えて「福沢惚れ」を自認する著者が、現代の状況を見きわめつつ、あらためてこの書のメッセージを丹念に読みとり、今に語りつぐ。読書会での講義をもとにした書下し。(全3冊)
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【「文明論之概略」を読む 中】
丸山真男著、岩波書店、1986年
福沢諭吉の「文明論之概略」を丸山真男と共に読む岩波新書の第2巻。
「文明は人の智徳の進歩なり」から始まる本巻では、儒教的精神の「徳」よりも、近代的精神の「智」こそが大切なのだ、と論じている。
中でも注目したいのは、丸山が福沢の述べる「智恵」について補足している224頁ではないだろうか。
知の建築上の構造として、下記の4階層の三角形で説明している。
Information (情報):真偽がイエス・ノーで答えられるもの
I
Knowledge(知識):学問(「物事の互いに関わりあう縁を知る」by福沢)
I
Intelligence(知性):理性的な知の働き
I
Wisdom(叡智):庶民の智恵、生活の智恵など
特に「情報」と「知識」の違いを
・第二次大戦はいつ勃発したか? (情報)
・第二次大戦の原因は何か? (知識)
と具体例をもって説明し
ーー
知識とは無数の情報(史料)を組み合わせねばならないので、イエス・ノーで答えが出せないのです。(中略)解答としてあきらかな誤謬は指摘できますが、「正解」というものはありません。
ーー
と言い切っている。
学校の教育とはどうあるべきなのか、根本的な問いかけがあるように読めた。
また、この知識の三角形構造が、「情報優位」の逆三角形になった情報最大・叡智最小の人を「秀才バカ」として「クイズには向いているが、複雑な事態に対する判断力は最低だ」とこき下ろしている。
太平洋戦争へ至る判断を下した政治家、軍部、官僚、学者への丸山の厳しい言葉であると同時に、現在はますますそうなっていないかと自らにも刺さってくる言葉だ。
#優読書
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丸山真男「 文明論之概略 を読む 」
中巻は 命題「文明の進歩は 智徳の進歩である」に基づき 智徳論を展開
西洋の近代文明をどう受け入れるべきか を説いた啓蒙的な国家論。明治維新により 混乱した社会を落ち着かせ、方向づけようとしている。
学者に行動を促した 福沢諭吉 のメッセージは印象に残る
*学者の使命は 衆論を変革することである
*異端であることを恐れるな〜昨日の異端は今日の正統である
*少数者の意見が勢いを増して衆論を形成し、衆論になれば 天下の勢いとなる(幕府すら倒せる)
智力の組み合わせに関する論考は 現代にも通ずる
*人の議論は集まりて趣を変ずることあり〜智力の組み合わせにより、アウトプットは違ってくる
*人の智力議論は 化学の定則に従う物品の如し
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とにかく丁寧に福澤の議論を読み解いている。人情と規則の区別などは今の世の中の渡り歩き方としても非常に参考になる。
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こういういわゆる精読みたいなのがあると古典へのアクセスもずいぶん楽になるだろうと思う。福沢もかなり興味出た。アジアの思想家というよりほんとに西洋人みたいに考えてるのね。