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まずは文庫化してくれた角川に感謝。
読み始める前に多少の覚悟をしておかなければならないが、やはり標題の「いのちの初夜」は心を打つ。人間として一度滅び、そして再生する。
標題作は勿論だが、同じく収録されている「吹雪の産声」も傑作。「いのちの初夜」で打ちひしがれた心もこの作品に一縷の望みを感じる。
ハンセン病(癩病)が不治の病でなくなった今、この病を身近に感じた事のない全ての人々に読んで欲しい一冊。
田村書店天下茶屋店にて購入。
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自らハンセン病を患い、収容施設にて隔離され、その体験を元に書かれた短編集。
・いのちの初夜
・眼帯記
・癩院受胎
・癩院記録
・続癩院記録
・癩家族
・望郷歌
・吹雪の産声
・あとがき … 川端康成
・北条民雄の人と生活 …光岡良二
・解説 …髙山文彦
とにかく壮絶です。
『いのち』とは?『生』とは?『死』とは?
今までの概念を覆されます。
この本を世に出してくれた全ての人に感謝。
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自らもハンセン病と戦った著者が、その病院を舞台にした小説を書いたものです。
どこまで人間でいられるのか、どこまで生きていなければならないのか考えさせられます。
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表題作をTwitterのフォロワーさんからのお勧めで青空文庫で読み、衝撃を受けて文庫本を買いました。表題作他、「眼帯記」「癩院受胎」「癩院記録」「続癩院記録」「癩家族」「望郷歌」「吹雪の歌声」収録。ハンセン病の凄まじい記録がここにある。迫り来る病魔の恐怖、死への渇望、深い絶望、しかしそれでも生きようとする強い、生命の意志。北條民雄が書いた文学を読むと自分が抱えている悩みなど、取るに足らない、とてもちっぽけなものに思えて恥ずかしくなります。こんなにも生きようとした、生命の生々しい姿を文学で触れたのは初めてかもしれません。読んでいると涙が出そうになります。また「癩院記録」「続癩院記録」はタイトル通り、療養所の内の生活記録であり、この小品はハンセン病の歴史的価値のある作品だと思います。繰り返し読みたい壮絶な文学です。
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御涙頂戴みたいな綺麗な文章ではなく全て剥き出しという表現が合ってる気がする。
作者自身が癩病患者やから一つ一つの言葉が持つ重みが違うし絶望の中で生まれるエネルギーは正に人間を超えている。
『吹雪の産声』がめちゃくちゃ良かった。
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NA図書館本
ハンセン病を発病し、23歳で夭折。ハンセン病ではなく腸結核と。
いのちの初夜 は、最初の一夜を川端康成が改題。川端康成のあとがきも良かった。この原稿を、川端康成が読んだのだなと、感慨深い。
いのちの初夜、眼帯記、癩院受胎など8篇の短編。
いのちの初夜の佐柄木の存在感が線の細い男の人だけど芯のある人間のイメージ。
目を覆いたくなるような癩病の人たちの記述。あの人たちは、もう人間じゃあないんですよ。決して人間しゃありません。生命です。生命そのもの、いのちそのものなんです。あの人たちの『人間』はもう死んで亡びてしまったんです。ただ、生命だけがびくびくと生きているんです。略
癩になった刹那に、その人間は亡びるのです。略だけど僕らは不死鳥です。新しい思想、新しい目を持つとき、全癩病者の生活を獲得するとき、再び人間として生きかえるのです。復活です。
びくびくと生きている生命が肉体を獲得するのです。略
あなたの苦悩や絶望は、略 ひとたび死んだ過去の人間を探し求めているからではないでしょうか。
めっちゃ迫力。
ハンセン病の方々及びご家族のこれまでとこれからに。
さまざまにフラットな世に、そしてそんな自分であることができるように。
しっかり心に刻みたい一冊。
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この本に出会わなければ一生ハンセン病というものをきちんと理解できていなかったと思う。
療養所での生活があまりに壮絶で、この敷地内だけで世界が完結している……いや、せざるを得ないほど忌避されることが当然だったのかと思うと暗澹たる気持ちになった。
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ハンセン病を煩い隔離施設に入った著者、北條民雄。
隔離施設に入り絶望し死のうとしたが果たせず…。夜が明けて「一瞬だけ生きてみよう」。文学に一条の光を見つけた著者。どんなに悲惨な状況でも書くことはできた。最期まで希望はあると。
病を得て「いらないもの。忌避される自分」しかし、「食べて寝る、ただ生きる、ということへの敬意」「自分が生きているという事実は誰にも否定されない」というメッセージは、とても力強い。
「100分de名著」の中江有里さんの解説では、
隔離施設から川端康成へ手紙を出し、川端康成から作品を認められた著者。自分の存在を肯定してもらい、どんなにうれしかったことでしょう!
川端康成からの手紙には、「文壇の評価は高いけれどもそのことは気にせず、古今東西の名著に親しみ、今のあなたの世界を見つめるがよろしい」「お金は足りてますか?原稿用紙ありますか?」という内容の手紙が残っているようで、これも、作品を通じて、いる場所は違ってもお互いに尊敬しあっている…よい師弟関係だなぁ…と…じんわりしました。
23歳で亡くなった北條民雄さん。作品は復刻され、今 読める。北條民雄さんとの対話ができる。どん底にいる人も勇気がもらえる作品です!
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人間として死んでいて、生命だけがある状態。
この言葉に当時のハンセン病に対する理解や
本人たちの感じ方など、様々なものが含まれていて、どろどろと渦巻いている気がした。
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これほど心を揺さぶる本はなかなかないのでは。
ハンセン病を患った人々の生命の力強さがひしひしと伝わってくる。徐々に肉体を冒していく病の恐ろしさ、それに立ち向かい、なんとか生きる意味を見出そうとする精神の尊さ。
たんにハンセン病を主題にした作品ではなく、人間とは、いのちとは、生きるとはという根源的な問いを投げかけているように感じた。
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★4.6
苦しく、辛い小説でした。
高校生の時に、破戒に出会った時と同じだ。あの時も丑松さんあなたはなにも、悪くない。と悔し泪を流したものですが、いのちの初夜も同じ感覚でした。
私の故郷にも、ハンセン病の療養所があり、今まで手を出すのが正直怖かったのかもしれない。
子供の頃にそれに罹患された方にあったこともあるので小さな頃だったので、ただただ、怖かった。驚き怖かった。それが、凄まじい差別を伴っていることを知ったのは、だいぶ後になってからだったが、その差別を知った上で、この作品に触れると、苦しく、辛い、ものかたりでした。
常に自死と隣り合わせ、死を見つめて生きる、辛く悲しいものかたり。
ちゃんと向き合わないといけい、そんなものかたり。