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多くの人が読むべき本です。
最近若い作家さんの作品を続けて拝読しましたが、特に良かった。他の作品はどちらかというと、本人たちの心の動きや描写にフォーカスしたものが多かったように思う。この作品は過去の事実とリンクさせていたり、方言をしっかり入れ込んでたりと、奥行きやリアリティーを感じさせる作品だったように感じた。
私の母も、「あの時は大変だったけど、大変だったということしか覚えてないよ」って漏らしたことがある。言えない事、言いたく無い事がきっとたくさんあるのだろうと思う。
「親孝行、したい時に親はなし」とはよく言ったもので、誕生日、父の日、母の日、結婚記念日、バレンタイン、ボーナス時、帰省時…イベント以外でも感謝は伝えていきたいと考えさせられる作品でした。2時間ドラマ化してもいいよね。
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二つの時代の五輪をまたいだ家族の物語。認知症を患った母が呟く謎の言葉をきっかけに、全く知らなかった母の過去に思いを馳せる息子。その中でとある自分の特性を知ることで、それまでは周りに不満を抱き自らの不遇をかこつばかりだった彼が、改めて自分や家族と向き合い生まれ変わっていくさまはすがすがしく、読んでいるほうも心強い気分にさせられました。人間はいつだって自分次第で変われるものなのかも。
一方で母・万津子の人生がとにかくつらい……必死に頑張っているのになぜにここまでの試練が襲い掛かるのか。だけど彼女の人生はある程度不幸だったかもしれないけれど、惨めで無意味なものだった、とは思えません。万津子はたぶん、特別な人ではないのですが。苦難に耐え、それでもまっすぐに我が子に愛情を注いだ彼女の強さは称賛されてしかるべき。どんな形であっても、彼女の人生は報われたと言えるのでしょうか。
そして何よりも大切なのは、その人それぞれに何かひとつでも心のよりどころを持っていれば、どれほど苦しくても生きていくことはできる、ということかもしれません。強い希望を感じられる物語です。
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定年間近のサラリーマン・泰介と、認知性を患う彼の母・万津子。東京で開催される2回のオリンピックとバレーボールをキーワードに、子育てに苦労する万津子と、思うに任せない人生に苛立つ泰介の姿を交互に描く。2/3くらいまでひたすらつらい内容で、何度も読むのをやめようと思った。その先は逆に何もかもうまく行き過ぎてシラけた。だが物語は2020年初頭で終わり、ぼくらはその先に何が起きたか知っている。彼ら家族を待ち受ける未来は決して明るくない。
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ただのオリンピックの話じゃなかった。
いまや認知症になり老いてしまった80歳の女性にも
若い頃の夢や青春があったのだと
当たり前だけど改めて気付かされた。
そして、息子には言っていない、ただならない苦労や後悔も。
私も、親の若い頃のすべては知らない。
ましてや祖父母のそれは全くと言っていいほどだ。
子や孫に隠している「秘密」は、きっと誰にもあるだろう。
話は、1964年ごろと、2019年が交互に描かれる。
幼少期の泰介と、定年間近の泰介のことを行き来する。
本の3分の2くらいまではちょっと泰介にいらいらしてしまう内容で、正直途中で読むのをやめようかと思ったくらいだった。
だけど、最後までぜひ読んでほしい。
後半の3分の1はスピーディーで、ぜんぶすっきりとまとめてくれた。
万津子が泰介にずっと隠してきた「秘密」が明らかになる。
…が、正直もっと早くに明らかになっていれば、
人生の終焉を迎えようとしている万津子の人生は、定年間近の泰介の人生は、もう少し違っていただろうに、と悔やまれる。
けれども、泰介が定年間近になって、娘の萌子が高校生になって、バレーボールの才能を開花させようとしている時だからこそ明らかにできたのだ、とも思える。
ぎりぎりとはいえ、「真実」が明らかになってよかったのだ。間に合ってよかった。
1964年のオリンピックの熱気も伝わってきた。
家族が、日本が、一丸となって熱狂した。
その様子が鮮やかに描かれる。
作者は当時など知るはずもない平成生まれであることに感嘆した。
「私は、東洋の魔女」という祖母・万津子の台詞が
読後、違う意味となった。
ちょうど今、まさに、オリンピックに関連する女性蔑視問題が取り沙汰されている。
「私は、東洋の魔女」という言葉の真意を、私も噛みしめたい。
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万津子が紡績工場で働いた愛知県一宮市は、私の故郷です。集団就職があったことも本書で知り、万津子の時代とは違うため、当時のことは想像するしかできないけれど、これがどのようにオリンピックと繋がるかと期待したのですが、予想外の展開でした。
日本が高度成長と言われる中で、夢を捨てざるを得なかった人、夢を捨ててしまった人、夢を諦めざるを得なかった人、夢すら持てなかった人、誰もが貧しく、苦しくて、そんな時代に精いっぱい生きていく姿に、目頭を熱くしながら、声にならない声援を送っていました。登場人物の一人ひとりに誰にも言えない事、言いたく無い事がきっと沢山あったんだと気づきながら。苦労するためだけに生まれてきたかのようなこの人の人生に。そして、「東洋の魔女」という魔法の言葉は、あの時代を生きた人たちをどれだけ救うことができたのだろうか、と。
ADHDの話題で、『この世の中には、普通の人もいないし、異常な人もいない。どんな特性も、必要。だからDNAが残ってる』は、心に沁みる。障害ではなくても、誰もが、「普通じゃない一面」に悩んでいる今日、このメッセージに胸がいっぱいになりました。
印象的なフレーズは:
★だいたいの人たちは、何かしらの危機感を持って有意義な時間を過ごそうとしているように見えた。
★最近映画を見ましたか。ご主人との生活は楽しいですか--。女工時代のほうが楽しかった、とは思いたくなかった。…。自分は「もっとよか未来」に向かって進んでいかなくてはいけないのだ。
★ある日の親友の言葉を思い出し、胸がツンと痛くなった。到底手の届かん夢だったよ、
★人には、得意不得意が必ずあるから。打ち消しあってゼロくらいになっていれば、それでいいの
★魔法の言葉だ。口に出すだけで、何でもできる気がしてくる。どんな苦しい努力も、どんな高い夢への邁進も、この言葉の前では否定されない。女性だからということにもとらわれず、まだ見ぬ場所へと羽ばたく勇気をもらうことができる
★地下鉄やモノレールが通り、幅の広い道路が整備され、豪華なホテルが次々と建ち、東海道新幹線という世界初の高速鉄道まで開通する予定の、大都市・東京。
いったいどんな場所だろう---と、目をつむって創造する。
人々は、もっと自由に暮らしているのだろうか。
街は活気に満ちているのだろうか
誰しもが夢や希望を持っているのだろうか。
炭鉱で栄えてきた大牟田や、紡績工場の集まる一宮でさえも、東京から見れば田舎なのだろう。
だとすれば、ここは何なのだ。
地の果てだろうか。
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現代と60年前を交互に描きながら、真実が明らかになる。60を前にしたおじさんも変わることができる。後味のいい物語だった。
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今と昔を行ったり来たりしながらも、いろんな謎がとけたり、葛藤と戦ったり。わからないまま、教えないままという強さも感じられる作品。やはり、母は強い。
2021/1/22読了
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いくら何でもこんなヒドイオヤジは、いないだろうと最初シラケたが、「発達障害」あたりから、引き込まれた。ただ娘があまりに出来過ぎな上、オヤジの変身振りに戸惑いも。高度成長期のニッポンの空気感、20代で、ここまで描ききるとは。予定通り開催されていれば、2020東京五輪の金字塔的作品になっていただろうに…
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随分と落ち着かない人だと思ったらそういうことだつたのか。
病院行ってからうまく行き過ぎだが、万津子さんに伝わったなら良かった。
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万津子の若い頃の話は辛い。でも昔は普通の出来事だったんたろうな。集団就職の場面は私の父も集団就職だったので家族との別れは辛かったと思い、泣けた。
泰介の言動行動からADHDとは気づいていた。昔はそんな病名もないし万津子の苦労が伝わる。
大人になって気づいて言ってくれたのが娘。一番言われたくないけど一番素直にならざるを得ない相手からの言葉はこたえる。
作家さんの頭の中はすごい。子育ての話も戦後の話も経験していないのに書ける。
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戦後の時代背景からくる今とは違う日本の(特に地方の)家族のあり方、現在の介護や病気の難しさ、職場や夫婦関係における相手を敬う心の大切さ。様々なことが詰まった人間ドラマあふれる作品でした。
親から子へ、そしてそのまた子へ、1964年の東京オリンピックから2020年の東京オリンピックという長い年月を重ねてようやく成し遂げられた想いが綴られてます。
現代の場面に出てくる定年間近の泰介は、思ったことをすぐに口に出し、相手の気持ちを考えることなくいつも自分を肯定し主張するサラリーマンで「こんな男になりたくないわ」と思いながら読んでいたけど「もしかしたら自分も…」とちょっと自らの行動を振り返ってしまうことも(^^;
この作品は雑誌で紹介されていたので図書館で予約して借りたのですが、期待のさらに上をいく中身の濃い作品でとても満足できました。
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私は東京五輪は大反対で、反対の署名までしました。
でも、この物語を読むと、オリンピックが開催されることにより、こんなにも生きる気持ちを明るく持てるようになる人も存在するのだと思いました。
今回の東京五輪・パラリンピックも開催まであと3週間をきりました。ここまできたら、とにかく本当に安心・安全にどこの国の選手も国民も楽しめるよい大会になりますようにと願うのみです。
以下、最後まで全部ネタバレで書いていますので、これから読まれる方はお気をつけください。
物語はオリンピックを9カ月後に控えた2019年10月から始まります。
佐藤泰介は1964年の東京オリンピックの時、3歳でした。1940年生まれの母の万津子は当時24歳。
今はくも膜下出血による認知症を患っています。
大学のバレーボール部で出会った妻の由佳子。
高校二年でやはりバレー部の娘の萌子がいます。
そして物語は1958年9月の万津子が結婚前一色紡績という会社で女工をしながらバレーボールをやっていたパートと交互に進みます。
万津子は19歳で見初められ見合い結婚をします。
ところが夫となった佐藤満は酒乱で暴力をふるう男性でした。
泰介と弟の徹平が生まれますが夫は息子たちにも手を挙げる毎日。しかし満は三井鉱山の爆発事故で1963年に亡くなります。
万津子は実家に帰りますが、泰介が情緒不安定で毎日、暴れて実家の家族に嫌われます。満に似たのだろうかと万津子は悩みます。
そして泰介は川に溺れてしまい、一緒に溺れた少年が亡くなり、万津子は実家にもいられなくなり、東京へ飛び出していき、東京で泰介にバレーボールを教え始めます。
2020年。泰介は気が荒くスポーツ用品会社で仕事は降格され、うまくいっていませんが萌子に「お父さんはADHD(発達障害)じゃない?」と受診を勧められます。
果たして受診すると萌子の言った通り泰介は発達障害だったのです。
泰介は素直に病気に対応する術をみつけていき、運も手伝って昇進することができます。
萌子の高校は春高バレーで決勝に進みます。
そして、エースの萌子の活躍により見事優勝。
万津子は病院で萌子の試合を観戦後、泰介に「もうバレーはやらなくていい」と言い残し息をひきとります。
萌子は高校卒業後、実業団に入りオリンピックへの道を目指します。
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母の若い頃のことと母が痴呆症になってからにことが交互に出てくる
そこに息子の人生が絡んでくる。
どうしてこんな人とぶつかるのかどうしてうまく生きられないのか
色々なことがあり
そしてやっとわかったことがあり
そこを境に変わっていく。
人生はどこからでもやり直せる
そして母の愛に感動した
ぜひ読んでもらいたい一冊
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評価が高いので読んでみるもどうしてか?私には全く響かず。。
・コロナ禍でのアンチオリンピック派?
・スポ根に近い内容?
・ADHD、痴呆症と言った病を強引に結びつけるストーリー展開?
何が原因かは?だが。。
2021年へ!時代を貫く親子三代の物語 スミダスポーツで働く泰介は、認知症を患う80歳の母・万津子を自宅で介護しながら、妻と、バレーボール部でエースとして活躍する高校2年生の娘とともに暮らしている。あるとき、万津子がテレビのオリンピック特集を見て「私は・・・・・・東洋の魔女」「泰介には、秘密」と呟いた。
2つのオリンピックを背景に泰介の母親万津子、高校バレーの花形選手の娘、それを支える妻の現代と幼少時苦労を重ね泰介を九州から東京で育てた時代を交互に繋ぐストーリー。
最後は、泰介がADHDを自覚して仕事に向き合って公私共に立ち直る姿、娘の春高バレーの優勝、母万津子の死が重なる展開で終えて色々な社会問題を結びつけHappyEndで終えるストーリーの強引性がイマイチだった。
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認知症の母の過去と東京オリンピックとを重ねた秀作。
大人のADHDの存在を知って、確かにと肯いた。
昔は発達障害なんて言葉も無かったけど、現代に比べれば割合は少なかっただろうが、いたんだろうね。