紙の本
シリアの内側からの視点
2021/06/27 12:43
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:第一楽章 - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本人女性として初めてK2に登頂した著者とラクダと共に伝統的な生き方をしてきたシリアの青年が出会い、そして直面したシリア内戦を内側から見つめたノンフィクション。
文化の違いよる苦労にとどまらず、政治的な理由からシリアの文化やアイデンティティ、生きる意味すら見失いかねない苦難が、飾らない言葉で綴られています。
この本のおかげで、BBCなどのニュースネットワークにも、国際機関の統計にも現れない現実と苦悩を垣間見ることができました。文化とは何か、多様性とは何か、戦争が破壊するものは何か、そうしたことを考えるため、広く読まれて欲しい一冊です。
紙の本
K2登頂を成し遂げた著者の人生のターニングポイント
2021/01/29 23:12
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:sato - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本人女性初のK2登頂を果たした著者が、その土地の山々に暮らす人々に興味を持ち始め、各地を放浪。そこで出会ったシリア人家族の生活に密着。砂漠に暮らすイスラム民族の生活に刺激を受け、その後内戦に翻弄されたシリア人の生活を内側から描く。
まず冒頭のK2登頂の描写が圧巻。フィクションではなく死と隣合わせの極限の体験をしたからこそ出る言葉で山の非情さ、美しさ、神聖さ描かれているのがすごかった。またその後シリア、イスラム、砂漠の民族という全く異なる文化、生活習慣を持った人々と接し、中々日本人には理解しがたい彼らの日常を、日本人目線で分かりやすく分析している。
投稿元:
レビューを見る
NHKラジオ 高橋源一郎の飛ぶ教室 で紹介されていた本(下記URL参照)。ハラハラドキドキ、静かな情熱に突き動かされるように展開する、著者の四半生記。シリアの複雑さも、多層的に住民目線で描かれる。まだ見ぬ世界の新しい景色を、これからも見せて頂きたいと思いました。
https://www.nhk.or.jp/radio/magazine/detail/gentobu20201002.html
投稿元:
レビューを見る
「こうした不条理が、内戦下のシリアなのだ」
「この国では、賄賂によって自由や安全を買うことができた」
事実上、法や秩序のない世界シリア。合法か違法かなんて関係ない。お金が物を言う理不尽な社会は、シリア情勢の一面を物語っている。
安全を求め難民として他国へ逃れても、差別にあったり、文化に馴染むことができなかったりセカンドライフも苦労の多い人生。
投稿元:
レビューを見る
「君はそう書かれていたらそのまま信じるのか?」
「今日は泊っていきなさい」=別れの挨拶
パルミラ遺跡の盗掘
先陣が残したものを見つけて生活の糧にする
シリア、
この国では先に警察を味方につけたほうが正義になる。 真実ではなく利益。
軍隊でも。秘密警察でも。
賄賂で自由と安全を買う。
越境ビジネス 2万円≒シリアの平均月給
ゆとりの時間ラーハが人生の価値
自給自足の放牧業 食費は収入の1/10
税金は払わない、電気水道は自分で引く
医療費教育無料、ガス石油資源豊富、
ハラール
神に許された屠畜か? ≠日本の肉 =すべての魚
IS
無差別空爆を行う政府軍とは異なり解放を説き、
支配、占領していった。
歳をとった木ほど土が違えば生きるのが難しい。
文化はすでにあるものを継承する要素の方がはるかに強い。
投稿元:
レビューを見る
シリア人と結婚した日本人女性の著者が、フォトグラファーとして、またイスラム教に改宗した妻として、シリアの生活や文化、内戦の状況、人々の様子等の体験を記録したノンフィクション作品です。
共生の為には、価値観の異なる相手のことを理解し、認め、尊重することが大切なんだと思いました。
それは、シリアと日本のようなあからさまに違う国同士の話だけではなくて、例えば夫婦の小さな価値観の違いについても同じで、お互いの価値観を尊重することで、より良い家庭になれるような気がしました。
投稿元:
レビューを見る
2021年8月2日読了。
日本人初、世界で7人目?にK2に登頂した登山家。
K2登頂後、漠然と目標を失い訪れたシリアである家族に出会う。
毎年、その家族を訪れ交流を深め、ムスリムとシリアへの理解を深め、ある男性と恋に落ちる。
しかし、シリアは内戦に巻き込まれ家族も内戦の影響を受ける。
ノンフィクション、シリアという国、ムスリムの考え方、アラブ人の気質が理解できる作。
投稿元:
レビューを見る
K2を日本人女性として初めて登頂した小松由佳さんの著作であるが、内容は彼女がシリア人男性と巡り合い、そこからシリア内戦に巻き込まれていく模様が描かれている。
シリア内戦の情勢の複雑性やヒリヒリと感じる絶望感が市民の目線で描かれている。
勉強になった。
タイトルは僕の好きな本、サン=テグジュペリの「人間の土地」から。
投稿元:
レビューを見る
まず著者がすごい人。K2登頂だけでもすごいのに、その後の生き方がまたすごい。というか、たまたまシリアに縁ができ、今の夫、夫の家族との付き合いが始まったところにシリアの内戦が始まり、シリアの人々の苦難に沿うことになった。
どう解決するのか、いつ解決するのか、全く見通しが立たない。
遊牧民の大家族の幸せな暮らしが一変してしまったのがとても辛い。
シリア人の一族を通して、シリアの人々のことを考えさせてもらったことに感謝する。今後の家族のこともとても気になる。ものすごく逞しく生きていらっしゃるが、逞しくならなければ生きていけないということでもあるだろう。
何かできることがあるはずだが、とりあえず今はシリア内戦について、シリア難民について関心を持ち続けよう。
コロナ禍で、どの国も自分の国のことを考えるのが精一杯という中で、難民でいるということはどれほどの絶望だろう。
投稿元:
レビューを見る
p242 それぞれの視点、価値観があることがわかる。自分の文化にとって相手を判断しようとするから、相手の本質を見誤ってしまうのだ
特に日本人は、多様な文化を受け入れることに比較的寛容である一方で、他者が文化的、宗教的なこだわりを持っているということを、理解しにくい傾向があると感じる。”郷に入れば郷に従え”という言葉も私達の価値観にすぎない。世界には郷に入っても郷に従わないことを好しとする人々もいるのだ。
ラドワンと結婚し、子どもを育てながら悟ったのは、人間に深く根付いた文化を変えることは容易ではないということだ。文化というものは、新しく創造する以上にすでにあるものを継承する要素のほうが遥かに強い。
投稿元:
レビューを見る
TRANSIT VOICE~旅するポッドキャストの#7
を聞いて、小松さんの人生の話に魅了されて購入しました。
全体を通して思ったのは、小松由佳さんの生命力の強さ。ポッドキャストを聞いていても思ったけれど、文章を介して、より彼女のパワーが伝わってくる。
_____
わたしには同じに思えても、生命に溢れ四季もある砂漠の美しさや、ラクダとの戯れ。お茶や食事をゆっくり時間をかけて囲み、家族や友達とゆっくり休息をとること、「ラーハ」の時間を多くもつ人生を幸福だと捉える、人々の暮らしの様子が鮮やかに描かれていた。
前半の彼らの暮らしが鮮やかだった分、シリア内戦勃発後が余計に辛い。「難民」とひとつに括られる存在だけれども、彼らにも、それまでの人生で紡いできた文化や価値観があるから、新しい土地に適応するのは本当に大変だと思うし、そもそも、難民キャンプでこの先の希望が見えずに自国に戻っていく人も沢山いることを初めて知ったのだけど、その選択をする人々の気持ちは分かるかもしれない。
あと、シリアの市民が、どういう動機でISに参加するのか昔は、不思議に思っていたけれど、そこも描かれていた。
_____
また時間を空けて読みたい。
投稿元:
レビューを見る
砂漠といえば、同じ景色が果てしなく続き、どちらかというと「死」のイメージが強かったけど、砂漠と共にある人々の営みや、砂漠が場所によって砂の特性などが違うことを知り感動した。
その豊かな日常が、悪化する圧政、ISの台頭に寄ってどんどん壊されていく様子は、生々しく恐ろしい。
すみ慣れた土地、築いてきた生活を奪われ、コミュニティを壊され、人々はその地を追われ、いつ終わるかわからない移民生活を強いられることとなった。
肉体的な負担はもちろん、精神的なダメージは想像するだけでも耐えがたい。
故郷を思う気持ち強ければ強いほど、その傷も深く、喪失感は計り知れないだろう。そういった点で、原発事故で家族ばらばらになったり、仕事を失ったり、生活、土地、故郷を奪われた福島の人たちと重なった。
シリアの人たちも今なお国を追われ、新たな生活の地を求めている。
これを他人事していてはいけない。日本に住む私たちができること、すべきことを考えなければ。この世界のアンバランスさを平行にするために。
投稿元:
レビューを見る
あっちからの善意とこっちからの善意。
文化が違えばそれは悪意に変わるんだと痛感する。文化の違いやしきたりの違いで…。
よく知りもしないでメディアの言うことを鵜呑みにして…。
最悪の場合には、
真実の裏付けもない噂話や、見た目だけで判断して…。
なんだか、人類とは本当に小心者で臆病な生き物だと思い知らされる。
作中で語られる事実には、悲しいことも嬉しいことも、全てがありのまま書かれている。
筆者の小松由香さんの壮絶な経験と感受性豊かな心がおもいっきり伝わる本です。
投稿元:
レビューを見る
手島という香川の島に著者の小松さんがいらして写真を撮っていかれたようです。
台風だったこともあり、手島でおいてある本書を読みきりました。
K2登頂はプロローグのようなもので、シリアで知り合った現夫とシリアの内戦に翻弄される人生についての記述が大部分を占めます。
内戦による生活の変化。文化や宗教、考えの違いからの精神的な壁の困難。それらについて率直な意見が素直に綴れている本です。
シリアの現状について知らないこともたくさんありました。他者の考えに触れることができ、考えるきっかけにもなりました。読んでよかったなと思う本でした。
タイトルはサン・テグジュペリの『人間の土地』のオマージュです。そちらも面白いです。
投稿元:
レビューを見る
すばらしい本だった。
おそらく泣き喚きたくなったであろうことも含め、感情的になりすぎず、ただそこに居合わせた観察者としてまっすぐにシリアを綴っている。作者が何かを分析したり価値づけたりすることがなく、自分の存在の小ささを知る者の謙虚さがにじみ出ている気がした。一方で、その小さな人間一人ひとりが悠久から脈々と受け継いできた大きなものの存在についても語られる。
シリアの砂漠を愛する人たちの姿が目に浮かび、会ったこともない人たちを愛おしく思った。またISISが地元の人たちにとってどんな存在であったかなど、よく伝わってきた。そして、動乱が内戦ではなく革命と呼ばれることなどを、今ミャンマーで同じ言葉を耳にする者として、衝撃をもって読んだ。